『昇降口で田中まどかを見つけました』

 このメッセージを最後に他の生徒会メンバーからの連絡が途絶えている。以前追いかけている最中か、見失ったとみて間違いないだろう。

 そして、田中まどかは以前、この校内のどこかにいるはずだ。

 東側に各学年の教室が連なる教室棟と西側に理科室や音楽室などがある特別教室棟。三階建のそれらを渡り廊下が北側と南側、各階に繋がっており、校舎外の敷地、主にグラウンド、部室棟は高梨会長が見回っているが連絡はない。
 認めたくはないが他の生徒会のメンバーではなく高梨会長に見つかって逃げ切れることはないだろう。

 つまり、田中まどかは未だ校舎内のどこかに潜んでいる。

 ならばここ、北側二階の渡り廊下で待ち伏せするのが最善だ。ここからなら南側の渡り廊下を動く人影はすぐに見つかり、かつ迅速に駆けつけることができる。

 もう拳銃に恐れおののく僕ではない。
 たとえ本物であっても、実際に人間に撃つには相応の覚悟や理由が必要なはず。田中まどかにそんなものはない。

 それに比べて僕にはある。覚悟も、理由も。

 高梨マーガレットを蹴落とし、僕が生徒会長になる。

 そうすればみんなが気付くだろう。僕がどれほど優秀な人間か。今まで学校という社会に適応するため、一般の生徒たちにも優しくしてきたがそんなことももうしなくて済む。僕がトップに立ち、全てを変えてやる。
 運動能力や見た目の美醜による人望や格差なんて無くしてやる。

 僕が社会になる。

「いた!」

 柵の隙間から覗いていた南側三階の渡り廊下を走る人影。立ち上がり確認するとそれは田中まどか本人だった。
 僕は急いで教室棟へと走り、階段を駆け上がる。