「私こういうの詳しいんです。コルトパイソン。狙いやすく、扱いやすい。先輩が相手を思う純粋な気持ちが感じられます」

 純粋な気持ち。そう言われ、私はなんだか安心した。植村さんのように弾数多くなければ威力もない。
 私の木原先輩への想いはこの程度なのか? と思っていたから。

「智恵子ちゃんのそれは」
「私のこれは、見ての通りロケットランチャーです」

 あ、バズーカじゃないんだ。

「正式名称はAT4ロケットランチャー。まぁ派手に相手をぶっ飛ばす、私のクソデカ感情の表れですね」

 智恵子ちゃんの独特の言葉選びに笑ってしまう。とても感じのいい子だ。

「智恵子ちゃんの好きな人って?」
「恥ずかしいので名前は伏せますが」

 そこまでいうと智恵子ちゃんの顔がみるみる紅潮していく。きっと今頭の中でその想い人のことを想像しているのだろう。

「頭よし、顔良し、性格良し。おまけに高身長、好印象、孝行者です」

 ……それって。

「田中先輩のターゲットは?」
「……私も恥ずかしいから伏せとくよ」

 そうだ。だってあの木原先輩だもん。他に好きな子がいたってなにも不思議じゃない。智恵子ちゃんはいい子だ。だけど、私だって木原先輩のことが好きなんだ。

 好き。
 そう、好きなんだ。
 好き、だよね。
 
「ではご武運を!」

 重そうなロケットランチャーを軽々持ち上げる智恵子ちゃんはそのままロケットランチャーをお腹に隠してしまう。
 すると不思議なことにロケットランチャーはすっぽりと収まってしまい、はたから見るとなにも持っていないように見える。
 そう言えばぶつかった時にはなにも持っていなかったようにも見えた。
 なんだこれ、幻覚か? でもそんなこと、もう些細なことに思えてくる。

 手を振りながら走る智恵子ちゃんに「そっちも頑張って!」と手を振り返す。

 のんきにしている場合ではない。この拳銃を手にした時から感じていた疑問が大きくなっていることに気づかないふりをして、私は三年生の教室がある教室棟の三階を目指す。