「おい! お前なに紗枝様のお腕に触れようとしてるんだよ! 身分をわきまえろ!」

 さっきまで私を追うため連携していた生徒会の生徒たちが喧嘩をし始める。
 これが人を恋に落とす銃の力。あれで私も撃たれれば、植村さんの言いなりになってしまうのだろう。

「あなたも持っているんでしょ、拳銃を。さっき私の腕時計を見たとき、左腕を隠していたもんね」
「それは……」
「どうした? なんの騒ぎだ!」

 そこへ騒ぎを聞きつけた柔道部が入ってくる。屈強な柔道部たちだ。銃弾の雨にも負けずに植村さんを取り押さえてくれるかはず!

 ダダダダダダダッ!

 柔道部員はもれなく全員撃たれてしまった。

「快感……なんちゃって」

 どうすればいいんだ。私のコルトパイソンと植村さんのMP7では弾数も威力も段違い。

 いや、待てよ。

 弾数にも限界はあるはず。

「なにやってんの?」

 そこへ騒ぎを聞きつけたテニス部がやってくる。コートを自由に動き回るテニス部員たちだ。銃弾を交わして無事に……。

 ダダダダダダダッ!

 テニス部員たちは銃弾に沈んでいく。

「でもこれで、銃弾を使い切ればあのサブマシンガンも消えるはず」

 そして、テニス部員はもれなく全員撃たれてしまった。

「あれ、弾が切れちゃった」

 いまだ!

 廊下に伏す死屍累々を超え、走り出すがすぐに地面に銃弾を受け、思わず立ち止まる。

「ちょっとどこ行くの? 私の質問にまだ答えてないでしょ?」

 振り返ると、サブマシンガンを構える植村さんの手には四角い部品のようなものが握られていた。

「これはマガジンって言って、弾が入っている」

 植村さんは地面のギターケースを持ち上げ振るうと中からマガジンが大量に転がり落ちてきた。

「私の残弾は言うなれば、無制限」
「そんな、どうして」
「言ったでしょ。私はみーんなに、愛されたいって」

 植村さんはサブマシンガンを下ろし、笑顔で首をかしげる。

「で、誰を狙っているの?」

 ここは正直に答えるしかない。

「……三年の、木原寛也先輩」
「あー、かっこいいよね、木原先輩。私応援してるよ」
「あ、ありがとう」
「でも私、木原先輩からも愛されたいなぁ」
「え」
「みんな、あの子を捕まえて」

 銃弾を受け倒れていた生徒会、柔道部、テニス部の生徒たちが立ち上がる。

「紗枝様の仰せのままに」