「千里くんと一緒にいられることが楽しくて、千里くんがいない時間を寂しく思うようになった。千里くんに幸せになってもらいたいけど、私から離れていくくらいなら、千里くんの呪いなんて一生解けなければいいと思う。千里くんの声でほかの女の人の名前なんか聞きたくないし、私以外の人に心を砕いてほしくない。独りよがりで、最低で、でもそれくらい、私は千里くんのことが好きなのっ……!」
わき上がる感情のままに言葉が溢れていく。
ずっと堰き止めていたはずの涙も一緒に流れて、私は身も世もないくらいに泣きじゃくった。
初めて恋を知った子供と同じ、稚拙な本音だ。
こんなみっともない姿で縋りつく幼い人間なんて、見放されて当然だろう。
けれどもう、どうしたってこの気持ちを抑えることはできなかったのだ。
好きだ、好きだ、どうしようもないくらい好きだ。
もうそれしか心に抱けないくらい、千里くんのことが好きなのだ。
「…………」
まぁ、ここまで爆発するつもりもなかったけれど。
ひとしきり泣いて落ち着いたころ、ようやく自分のしでかしたことに気づいて我に返った私は、あまりの羞恥心から伏せていた顔を上げることができなかった。
しかしずっと私の手を握っていた千里くんも、私と同じように体を固まらせている。
どうしたのだろうかと意を決して彼の顔を見上げると、千里くんは私の不審そうな目を見て、声にならない声を出しながら狼狽えた。
「あ、えと、ごめん。まさかそんなことを言われるとは思わなくて、頭が真っ白になってた。てっきり別れ話をされるものだと覚悟してたから」
「へ……?」
「聖ちゃん、俺と付き合い始めてから目に見えて口数が減ったし、元気もないし、きっと後悔してると思ってたんだ」
「後悔なんて、一度もしたことないよ」
「だって紗英との仲を取り持つようなこともするし」
「それは、千里くんにも倉嶋さんにも後悔してほしくなかったからで……」
むしろ口数が減ったのは千里くんを意識してしまうからで、元気がないように見えたのはたぶん、毎日千里くんを好きになっていくことが怖かったからなのだ。
それに倉嶋さんに対してはずっと嫉妬をしていて、できることなら引き合わせたくなどなかった。
それほどまでに私は千里くんに恋をしているのに、私の方から別れ話を持ちかけるはずがない。
どうやらお互いにすれ違ったことを考えていたらしく拍子抜けしていると、千里くんも自嘲するように後ろ髪を掻いた。
「聖ちゃんが俺を好きだと言ってくれるのは、同情を恋と履き違えているからだと思ってた。俺は悪いやつだから、君がそばにいてくれるならなんだってよかったけど、君がその誤解に気づいて苦しむのは本意じゃなかったんだ」
「なっ、違うよ! 私は本気で千里くんのことが好きなの! さっきので分かったでしょう!?」
今さら隠すこともないため、臆面もなく好きだと告げると、千里くんの耳が真っ赤に染まった。
こんなふうに喜んでくれるなら、もっと早く伝えられていればよかったのに。
それに自分の恋心を疑われるというのは、けっこう切ないものだ。
呪いだなんだと言って、彼の好意を無下にしていたことを反省し、私たちは顔を見合わせて笑った。
「ふふ。きちんと話し合わないと、人の気持ちなんて分からないものだね」
「うん。だけど、千里くんは本当にいいの? 私こんなだし、弱音も吐けないくらい頼りないでしょう?」
「ああもう、病院ではごめん。あれはかっこ悪い姿ばかり見せて、これ以上幻滅されたくなかっただけなんだ」
本当に、話をしなくても分かり合えるなんてことはないらしい。
頼りにされていなかったわけではないと知り安堵の息を吐くと、千里くんがその指先で私の頬をくすぐった。
わき上がる感情のままに言葉が溢れていく。
ずっと堰き止めていたはずの涙も一緒に流れて、私は身も世もないくらいに泣きじゃくった。
初めて恋を知った子供と同じ、稚拙な本音だ。
こんなみっともない姿で縋りつく幼い人間なんて、見放されて当然だろう。
けれどもう、どうしたってこの気持ちを抑えることはできなかったのだ。
好きだ、好きだ、どうしようもないくらい好きだ。
もうそれしか心に抱けないくらい、千里くんのことが好きなのだ。
「…………」
まぁ、ここまで爆発するつもりもなかったけれど。
ひとしきり泣いて落ち着いたころ、ようやく自分のしでかしたことに気づいて我に返った私は、あまりの羞恥心から伏せていた顔を上げることができなかった。
しかしずっと私の手を握っていた千里くんも、私と同じように体を固まらせている。
どうしたのだろうかと意を決して彼の顔を見上げると、千里くんは私の不審そうな目を見て、声にならない声を出しながら狼狽えた。
「あ、えと、ごめん。まさかそんなことを言われるとは思わなくて、頭が真っ白になってた。てっきり別れ話をされるものだと覚悟してたから」
「へ……?」
「聖ちゃん、俺と付き合い始めてから目に見えて口数が減ったし、元気もないし、きっと後悔してると思ってたんだ」
「後悔なんて、一度もしたことないよ」
「だって紗英との仲を取り持つようなこともするし」
「それは、千里くんにも倉嶋さんにも後悔してほしくなかったからで……」
むしろ口数が減ったのは千里くんを意識してしまうからで、元気がないように見えたのはたぶん、毎日千里くんを好きになっていくことが怖かったからなのだ。
それに倉嶋さんに対してはずっと嫉妬をしていて、できることなら引き合わせたくなどなかった。
それほどまでに私は千里くんに恋をしているのに、私の方から別れ話を持ちかけるはずがない。
どうやらお互いにすれ違ったことを考えていたらしく拍子抜けしていると、千里くんも自嘲するように後ろ髪を掻いた。
「聖ちゃんが俺を好きだと言ってくれるのは、同情を恋と履き違えているからだと思ってた。俺は悪いやつだから、君がそばにいてくれるならなんだってよかったけど、君がその誤解に気づいて苦しむのは本意じゃなかったんだ」
「なっ、違うよ! 私は本気で千里くんのことが好きなの! さっきので分かったでしょう!?」
今さら隠すこともないため、臆面もなく好きだと告げると、千里くんの耳が真っ赤に染まった。
こんなふうに喜んでくれるなら、もっと早く伝えられていればよかったのに。
それに自分の恋心を疑われるというのは、けっこう切ないものだ。
呪いだなんだと言って、彼の好意を無下にしていたことを反省し、私たちは顔を見合わせて笑った。
「ふふ。きちんと話し合わないと、人の気持ちなんて分からないものだね」
「うん。だけど、千里くんは本当にいいの? 私こんなだし、弱音も吐けないくらい頼りないでしょう?」
「ああもう、病院ではごめん。あれはかっこ悪い姿ばかり見せて、これ以上幻滅されたくなかっただけなんだ」
本当に、話をしなくても分かり合えるなんてことはないらしい。
頼りにされていなかったわけではないと知り安堵の息を吐くと、千里くんがその指先で私の頬をくすぐった。