アクセルとリナは、ソフィアを見て驚いている。
ソフィアもまた、二人を見て驚いていた。
「知り合い?」
「はい、そうですが……それよりも、まずは後始末を優先しましょう」
「あ、そうだね」
ソフィアに言われて、魔物の死体をそのままにしておいたことを思い出した。
焼却処分などをしておかないと、他の魔物を誘い出してしまうし……
最悪、アンデッドになって復活してしまう。
そうならないように、きっちりと処分しておかないと。
「あたしも手伝うわ」
「ありがとう、リコリス」
魔物の死体を一箇所に集めて……
そして、リコリスが魔法を使い燃やしてくれる。
威力は抜群。
周囲の気温がいくらか上がるくらい盛大に燃えた。
これならアンデッドとして蘇ることは絶対にないだろう。
その後は、怪我人の治療。
それと、念の為に周囲の探索。
それらを一通りこなした後……
僕達は、トンネルの途中に設けられている休憩所へ移動した。
そこで改めて自己紹介をした後、ソフィアとアクセル達の関係を問う。
「お嬢さまは、お嬢さまだな。あと、俺の恩人でもあるぜ」
「すごく強くて、ホントに同じ人間なのかしら? って疑う時があったわね」
と言う二人の説明に、
「あのですね……そのような説明では、なに一つ、理解できませんよ」
ソフィアが呆れていた。
うん。
二人には悪いのだけど、関係性がさっぱりわからない。
「ソフィア、どういうことなの?」
「まったく、私が説明するのが一番ですね……えっと、私が使う剣の流派は覚えていますか?」
「神王竜剣術、だよね?」
「はい。神王竜は各地に継承されていて、我が家、アスカルト家もその一つです。お父さまが免許皆伝となり、『剣王』を名乗ることを許されました」
『剣王』といえば、確か、『剣聖』の一つ下の称号だ。
単独でドラゴンを討伐できるほどの実力がなければ、与えられることはない。
「そして、お父さまはリーフランドで神王竜の道場を開いて、剣を教えることにしたのです」
「なるほど」
「娘の私も自然と剣を習うようになり、色々な方々と肩を並べて競い合い、切磋琢磨してきました。その中で、共に剣を学んだのが……
「俺と」
「私、っていうわけ」
「なるほど」
同じ言葉を繰り返して、ようやくソフィアと二人の関係性を理解することができた。
同じ道場で同じ剣を学んだ。
門下生。
ただし、師匠はソフィアのお父さん。
だから、お嬢さま、って呼んで敬っているわけか。
まあ、ソフィアのことを敬うのは、ただ単に師匠の娘だから、っていう理由だけじゃないだろう。
彼女が剣の道をほぼほぼ極めて、『剣聖』の称号を得るに至ったからだろう。
剣の道に触れて間もない僕だけど、ソフィアが成し遂げた偉業のすごさは理解できる。
「まさか、こんなところでお嬢さまと再会できるなんてなあ」
「うんうん、思ってもいなかったわね」
「私もです。てっきり、アクセルとリナは、まだリーフランドにいると思っていたのですが……免許皆伝に至ったのですか?」
「まさか。俺らは、お嬢さまみたいな天才じゃないからな。まだまだ修行の途中さ」
「師範から、各地を旅して武者修行をしてくるように言われたの。それで、不本意だけどアクセルと組んで旅をしていた、っていうわけ」
「おい、なんで俺と組むのが不本意なんだよ?」
「不本意に決まってるでしょ。ガサツで気遣いゼロ。猪突猛進で考えなし。何度、私が苦労させられたか」
「ぐっ……」
あからさまなため息をこぼすリナ。
しかし、アクセルは反論できない。
きっと、それなりに心当たりがあるのだろう。
「ケンカはダメ……だよ?」
アクセルとリナを見て、おろおろとした様子でアイシャがそう言う。
実際には軽口の応酬なのだけど、アイシャはケンカしているように見えたらしい。
出会ったばかりの二人のことを気にするアイシャ。
うん。
僕達の娘はすごく優しいな。
「親ばか」
僕の考えていることを見抜いた様子で、リコリスがため息をこぼした。
「おぉ……安心してくれ。俺らは、別にケンカしてるわけじゃないんだよ」
「そうそう、これはいつものことっていうか……とにかく、お嬢ちゃんが気にするようなことじゃないわ」
「そっか……よかった」
安心したらしく、アイシャがにっこりと笑う。
その笑顔に癒やされた様子で、アクセルとリナもほっこりとした笑顔に。
次いで、はたと気がついた様子で問いかけてくる。
「ところで……その子は?」
「もしかして、お嬢さまの娘さん?」
「ははっ、まさか。そんなわけないだろ」
「そうよね、そんなことあるわけないわね」
「「あはははっ」」
二人は笑い、
「アイシャは、私の自慢の娘ですよ」
「「……」」
ピシリ、と二人は石化した。
そのまま固まること五分。
「「娘ぇ!!!?」」
同時に我に返り、二人は大きな声で叫んだ。
驚いたらしく、アイシャがビクリと震える。
そんな娘を見て、ウチのアイシャを驚かせないでくれますか? と、ソフィアが殺気混じりに睨みつける。
「す、すんません……いや、でも、まさかお嬢さまに娘ができていたなんて……」
「思いもよらなかったから、さすがに驚いて……えっ、もしかして、相手は毎日のようにのろけていた幼馴染?」
「フェイトが相手……なのか?」
「うん、僕が父親かな。でも、僕とソフィアの血を引いているわけじゃないんだ」
簡単に話せるようなことじゃないので、詳細は省くものの……
アイシャを義理の娘として引き取ったことを説明した。
「なるほど、そういうことか……驚いた。めっちゃ驚いたわ」
「よくよく見れば、その子、獣人ね。お嬢さまもフェイトも普通の人間だから、二人が産んだ子供じゃないのは明白か」
「確かに、アイシャは私が産んだ子ではありませんが……でも、そんなことは関係ありません。出会ってからの時間も関係ありません。アイシャは、大事な大事な私の娘です」
「んっ」
ソフィアがアイシャを抱きしめる。
それをうれしそうに、アイシャが微笑む。
そんな二人は、紛れもない親子だと断言できた。
微笑ましい光景に、アクセルとリナは笑顔になり……
しかし、すぐに顔を曇らせる。
「どうしたのですか?」
「いや、お嬢さまに娘ができたことはうれしいんだけどさ……」
「師匠に知られると、かなり厄介なことになりそうだな、って……」
ソフィアもまた、二人を見て驚いていた。
「知り合い?」
「はい、そうですが……それよりも、まずは後始末を優先しましょう」
「あ、そうだね」
ソフィアに言われて、魔物の死体をそのままにしておいたことを思い出した。
焼却処分などをしておかないと、他の魔物を誘い出してしまうし……
最悪、アンデッドになって復活してしまう。
そうならないように、きっちりと処分しておかないと。
「あたしも手伝うわ」
「ありがとう、リコリス」
魔物の死体を一箇所に集めて……
そして、リコリスが魔法を使い燃やしてくれる。
威力は抜群。
周囲の気温がいくらか上がるくらい盛大に燃えた。
これならアンデッドとして蘇ることは絶対にないだろう。
その後は、怪我人の治療。
それと、念の為に周囲の探索。
それらを一通りこなした後……
僕達は、トンネルの途中に設けられている休憩所へ移動した。
そこで改めて自己紹介をした後、ソフィアとアクセル達の関係を問う。
「お嬢さまは、お嬢さまだな。あと、俺の恩人でもあるぜ」
「すごく強くて、ホントに同じ人間なのかしら? って疑う時があったわね」
と言う二人の説明に、
「あのですね……そのような説明では、なに一つ、理解できませんよ」
ソフィアが呆れていた。
うん。
二人には悪いのだけど、関係性がさっぱりわからない。
「ソフィア、どういうことなの?」
「まったく、私が説明するのが一番ですね……えっと、私が使う剣の流派は覚えていますか?」
「神王竜剣術、だよね?」
「はい。神王竜は各地に継承されていて、我が家、アスカルト家もその一つです。お父さまが免許皆伝となり、『剣王』を名乗ることを許されました」
『剣王』といえば、確か、『剣聖』の一つ下の称号だ。
単独でドラゴンを討伐できるほどの実力がなければ、与えられることはない。
「そして、お父さまはリーフランドで神王竜の道場を開いて、剣を教えることにしたのです」
「なるほど」
「娘の私も自然と剣を習うようになり、色々な方々と肩を並べて競い合い、切磋琢磨してきました。その中で、共に剣を学んだのが……
「俺と」
「私、っていうわけ」
「なるほど」
同じ言葉を繰り返して、ようやくソフィアと二人の関係性を理解することができた。
同じ道場で同じ剣を学んだ。
門下生。
ただし、師匠はソフィアのお父さん。
だから、お嬢さま、って呼んで敬っているわけか。
まあ、ソフィアのことを敬うのは、ただ単に師匠の娘だから、っていう理由だけじゃないだろう。
彼女が剣の道をほぼほぼ極めて、『剣聖』の称号を得るに至ったからだろう。
剣の道に触れて間もない僕だけど、ソフィアが成し遂げた偉業のすごさは理解できる。
「まさか、こんなところでお嬢さまと再会できるなんてなあ」
「うんうん、思ってもいなかったわね」
「私もです。てっきり、アクセルとリナは、まだリーフランドにいると思っていたのですが……免許皆伝に至ったのですか?」
「まさか。俺らは、お嬢さまみたいな天才じゃないからな。まだまだ修行の途中さ」
「師範から、各地を旅して武者修行をしてくるように言われたの。それで、不本意だけどアクセルと組んで旅をしていた、っていうわけ」
「おい、なんで俺と組むのが不本意なんだよ?」
「不本意に決まってるでしょ。ガサツで気遣いゼロ。猪突猛進で考えなし。何度、私が苦労させられたか」
「ぐっ……」
あからさまなため息をこぼすリナ。
しかし、アクセルは反論できない。
きっと、それなりに心当たりがあるのだろう。
「ケンカはダメ……だよ?」
アクセルとリナを見て、おろおろとした様子でアイシャがそう言う。
実際には軽口の応酬なのだけど、アイシャはケンカしているように見えたらしい。
出会ったばかりの二人のことを気にするアイシャ。
うん。
僕達の娘はすごく優しいな。
「親ばか」
僕の考えていることを見抜いた様子で、リコリスがため息をこぼした。
「おぉ……安心してくれ。俺らは、別にケンカしてるわけじゃないんだよ」
「そうそう、これはいつものことっていうか……とにかく、お嬢ちゃんが気にするようなことじゃないわ」
「そっか……よかった」
安心したらしく、アイシャがにっこりと笑う。
その笑顔に癒やされた様子で、アクセルとリナもほっこりとした笑顔に。
次いで、はたと気がついた様子で問いかけてくる。
「ところで……その子は?」
「もしかして、お嬢さまの娘さん?」
「ははっ、まさか。そんなわけないだろ」
「そうよね、そんなことあるわけないわね」
「「あはははっ」」
二人は笑い、
「アイシャは、私の自慢の娘ですよ」
「「……」」
ピシリ、と二人は石化した。
そのまま固まること五分。
「「娘ぇ!!!?」」
同時に我に返り、二人は大きな声で叫んだ。
驚いたらしく、アイシャがビクリと震える。
そんな娘を見て、ウチのアイシャを驚かせないでくれますか? と、ソフィアが殺気混じりに睨みつける。
「す、すんません……いや、でも、まさかお嬢さまに娘ができていたなんて……」
「思いもよらなかったから、さすがに驚いて……えっ、もしかして、相手は毎日のようにのろけていた幼馴染?」
「フェイトが相手……なのか?」
「うん、僕が父親かな。でも、僕とソフィアの血を引いているわけじゃないんだ」
簡単に話せるようなことじゃないので、詳細は省くものの……
アイシャを義理の娘として引き取ったことを説明した。
「なるほど、そういうことか……驚いた。めっちゃ驚いたわ」
「よくよく見れば、その子、獣人ね。お嬢さまもフェイトも普通の人間だから、二人が産んだ子供じゃないのは明白か」
「確かに、アイシャは私が産んだ子ではありませんが……でも、そんなことは関係ありません。出会ってからの時間も関係ありません。アイシャは、大事な大事な私の娘です」
「んっ」
ソフィアがアイシャを抱きしめる。
それをうれしそうに、アイシャが微笑む。
そんな二人は、紛れもない親子だと断言できた。
微笑ましい光景に、アクセルとリナは笑顔になり……
しかし、すぐに顔を曇らせる。
「どうしたのですか?」
「いや、お嬢さまに娘ができたことはうれしいんだけどさ……」
「師匠に知られると、かなり厄介なことになりそうだな、って……」