「フェイト! アイシャ!」
部屋を出て少ししたところで、ソフィアと合流することができた。
僕とアイシャが手を繋いでいるところを見て、彼女はホッとしたような顔に。
「アイシャ、よかった、無事だったのですね……!」
「わぷっ」
ぎゅうっと抱きつかれて、アイシャがあたふたと慌てる。
ただ、イヤがっているという感じじゃなくて、どうしていいかわからなくて、照れているみたいだ。
「ごめんなさい、アイシャ……」
「どうして……謝るの?」
「怖い思いをさせてしまいました。不安にさせてしまいました。寂しがらせてしまいました。全部、私の責任です」
「僕達の、だよ」
「そうですね……はい。ごめんなさい、アイシャ」
「……ソフィアのせいじゃ、ないよ?」
恐る恐るという感じで、アイシャがソフィアを抱き返した。
小さな手が彼女の体に触れる。
「ん……ソフィアも温かいね」
「ふふ、私は基礎体温が高いので」
「えっと、その……」
「どうしたのですか?」
「……もっと、ぎゅうってしても……いい?」
「はい、もちろん」
「んっ」
甘えるような感じで、アイシャがソフィアに抱きついた。
アイシャは女の子だから、相手が女性だと、遠慮なく甘えることができるのかもしれない。
猫耳がぴょこぴょこ。
尻尾がフリフリと、うれしそうに揺れていた。
これだけで、アイシャの心の負担を全部取り除けたなんて思わない。
でも、多少は軽くすることができたはずだ。
この調子で、いつか、アイシャの心からの笑顔を見ることができるように、がんばりたいと思う。
「アイシャ、抱っこしてもいいですか?」
「うん」
「では、失礼しますね」
アイシャを抱っこするソフィア。
その顔は、とてもうれしそうだ。
ソフィア、かわいいものが大好きだからなあ。
「ところでソフィア、会場にいたドクトルの私兵は?」
「全員、斬ってきました。あ、殺してはいませんよ? ただ、今後の人生は、色々と諦めてもらわないといけませんが」
恐ろしい……
でも、こんなことをするドクトルに加担するような連中だ。
後遺症が残ったとしても、同情する気にはなれない。
「ただ、地下の敵を一掃しただけです。地上からの援軍はあると思いますし、今のうちに逃げましょう」
「そうだね。アイシャは任せてもいいかな?」
「はい、任せてください。指一本、触れさせません」
ソフィアがそう言うのなら、アイシャは絶対に安全だ。
彼女が剣聖だからとか、そういうところは信頼するポイントじゃない。
ソフィアは、世界で一番信頼できる幼馴染だ。
その彼女が言うのだから、なにも問題はない。
「いきましょう」
「うん」
僕は剣を抜いて、先頭に立つ。
その後ろを、アイシャを抱っこしたソフィアが進む。
会場へ戻った。
すでに客は逃げた後らしく、誰もいない。
いや。
会場の端などに私兵が倒れていて、うめき声をこぼしていた。
全員、ソフィアにやられたのだろう。
見た感じ、敵はいない。
ただ、どこかに隠れていないとも限らないし、地上からの増援と鉢合わせないとも限らない。
ソフィアとアイシャを危険に晒すわけにはいかない。
油断することなく、注意して進もう。
「……フェイト」
「うん、わかっているよ」
もう少しで会場の外に出る……というところで、僕とソフィアは足を止めた。
ピリピリと刺すような殺気がぶつけられている。
「そこにいるのは誰? 隠れているのはわかっているんだけど」
「……ちっ、勘の鋭いガキだ」
姿を見せたのは、ファルツだ。
それともう一人、黒尽くめの男がいる。
「ここまで好き勝手しておいて、そのまま逃げられると思っていたのか?」
「……それ、僕の台詞なんだけど」
たくさんの人に酷いことをして。
アイシャに酷いことをして。
その悪事の片棒を担いだファルツを見逃すつもりなんてない。
アイシャの安全が第一で、捕まっていた人達の安全が第二。
それらを達成した今、心置きなく戦うことができる。
ただ……
「……むう」
黒尽くめの男から、イヤな気配しかしない。
例えるなら、死神と対峙したような感じ。
濃厚な死の気配をまとっている。
「あのガキを捕らえろ、下手に傷をつけるな。男と女は殺せ」
「わかった」
用心棒、というところかな?
それなりの実力者であることは間違いない。
僕の力が通じるかどうか……
なんて迷いを抱いていたら、ソフィアがアイシャをこちらに渡してきた。
「フェイト、アイシャを頼みます。あの男は、私が相手をします」
「……うん、了解」
ソフィアがそういう判断をしたのなら、下手に出しゃばらない方がいい。
アイシャを代わりにおんぶして、後は彼女に全部任せることにした。
「ソフィア、気をつけてね?」
「大丈夫です。私は、剣聖ですから」
「それでも、僕にとっては大事な女の子だから」
「……」
「ソフィアの顔、赤いね」
「し、仕方ないじゃないですか。フェイトからそんなことを言われたら、その、どうしても照れてしまいます」
アイシャのツッコミに、ソフィアは照れ照れで答えた。
かわいい。
「じゃあ、また後で」
「はい、また後で」
再会の約束を交わして、その場を後にした。
部屋を出て少ししたところで、ソフィアと合流することができた。
僕とアイシャが手を繋いでいるところを見て、彼女はホッとしたような顔に。
「アイシャ、よかった、無事だったのですね……!」
「わぷっ」
ぎゅうっと抱きつかれて、アイシャがあたふたと慌てる。
ただ、イヤがっているという感じじゃなくて、どうしていいかわからなくて、照れているみたいだ。
「ごめんなさい、アイシャ……」
「どうして……謝るの?」
「怖い思いをさせてしまいました。不安にさせてしまいました。寂しがらせてしまいました。全部、私の責任です」
「僕達の、だよ」
「そうですね……はい。ごめんなさい、アイシャ」
「……ソフィアのせいじゃ、ないよ?」
恐る恐るという感じで、アイシャがソフィアを抱き返した。
小さな手が彼女の体に触れる。
「ん……ソフィアも温かいね」
「ふふ、私は基礎体温が高いので」
「えっと、その……」
「どうしたのですか?」
「……もっと、ぎゅうってしても……いい?」
「はい、もちろん」
「んっ」
甘えるような感じで、アイシャがソフィアに抱きついた。
アイシャは女の子だから、相手が女性だと、遠慮なく甘えることができるのかもしれない。
猫耳がぴょこぴょこ。
尻尾がフリフリと、うれしそうに揺れていた。
これだけで、アイシャの心の負担を全部取り除けたなんて思わない。
でも、多少は軽くすることができたはずだ。
この調子で、いつか、アイシャの心からの笑顔を見ることができるように、がんばりたいと思う。
「アイシャ、抱っこしてもいいですか?」
「うん」
「では、失礼しますね」
アイシャを抱っこするソフィア。
その顔は、とてもうれしそうだ。
ソフィア、かわいいものが大好きだからなあ。
「ところでソフィア、会場にいたドクトルの私兵は?」
「全員、斬ってきました。あ、殺してはいませんよ? ただ、今後の人生は、色々と諦めてもらわないといけませんが」
恐ろしい……
でも、こんなことをするドクトルに加担するような連中だ。
後遺症が残ったとしても、同情する気にはなれない。
「ただ、地下の敵を一掃しただけです。地上からの援軍はあると思いますし、今のうちに逃げましょう」
「そうだね。アイシャは任せてもいいかな?」
「はい、任せてください。指一本、触れさせません」
ソフィアがそう言うのなら、アイシャは絶対に安全だ。
彼女が剣聖だからとか、そういうところは信頼するポイントじゃない。
ソフィアは、世界で一番信頼できる幼馴染だ。
その彼女が言うのだから、なにも問題はない。
「いきましょう」
「うん」
僕は剣を抜いて、先頭に立つ。
その後ろを、アイシャを抱っこしたソフィアが進む。
会場へ戻った。
すでに客は逃げた後らしく、誰もいない。
いや。
会場の端などに私兵が倒れていて、うめき声をこぼしていた。
全員、ソフィアにやられたのだろう。
見た感じ、敵はいない。
ただ、どこかに隠れていないとも限らないし、地上からの増援と鉢合わせないとも限らない。
ソフィアとアイシャを危険に晒すわけにはいかない。
油断することなく、注意して進もう。
「……フェイト」
「うん、わかっているよ」
もう少しで会場の外に出る……というところで、僕とソフィアは足を止めた。
ピリピリと刺すような殺気がぶつけられている。
「そこにいるのは誰? 隠れているのはわかっているんだけど」
「……ちっ、勘の鋭いガキだ」
姿を見せたのは、ファルツだ。
それともう一人、黒尽くめの男がいる。
「ここまで好き勝手しておいて、そのまま逃げられると思っていたのか?」
「……それ、僕の台詞なんだけど」
たくさんの人に酷いことをして。
アイシャに酷いことをして。
その悪事の片棒を担いだファルツを見逃すつもりなんてない。
アイシャの安全が第一で、捕まっていた人達の安全が第二。
それらを達成した今、心置きなく戦うことができる。
ただ……
「……むう」
黒尽くめの男から、イヤな気配しかしない。
例えるなら、死神と対峙したような感じ。
濃厚な死の気配をまとっている。
「あのガキを捕らえろ、下手に傷をつけるな。男と女は殺せ」
「わかった」
用心棒、というところかな?
それなりの実力者であることは間違いない。
僕の力が通じるかどうか……
なんて迷いを抱いていたら、ソフィアがアイシャをこちらに渡してきた。
「フェイト、アイシャを頼みます。あの男は、私が相手をします」
「……うん、了解」
ソフィアがそういう判断をしたのなら、下手に出しゃばらない方がいい。
アイシャを代わりにおんぶして、後は彼女に全部任せることにした。
「ソフィア、気をつけてね?」
「大丈夫です。私は、剣聖ですから」
「それでも、僕にとっては大事な女の子だから」
「……」
「ソフィアの顔、赤いね」
「し、仕方ないじゃないですか。フェイトからそんなことを言われたら、その、どうしても照れてしまいます」
アイシャのツッコミに、ソフィアは照れ照れで答えた。
かわいい。
「じゃあ、また後で」
「はい、また後で」
再会の約束を交わして、その場を後にした。