「おや? あなたは……」
司会者が僕に気づいて、不思議そうな顔に。
たぶん、ドクトルから話は聞いているのだろう。
味方だと思っているらしく、不思議そうにしてはいるものの、慌ててはいない。
好都合。
隙だらけなので、遠慮なくやらせてもらうよ。
「ぐぁ!? な、なにが……」
足を斬りつけて、ついでに腕も斬る。
切断したわけじゃないから、ひどい出血じゃないし、死ぬことはないだろう。
でも、すぐに動くことはできないはずだ。
「あ……うわあああああっ!?」
「きゃあああっ、な、なに!? なにが起きているの!?」
突然の事件に、客達が騒ぎ始めた。
中には、判断が早い者もいて、出口に向かい逃げ出そうとしている。
しかし、無駄。
一人も逃さないように、出口はリコリスの魔法で施錠しておいた。
なにも能力を持たない一般人なら、逃げることは不可能だ。
今のうちに、やるべきことをやる。
「あ、あなたは……」
「助けに来ました。じっとしててください」
捕まっていた人達も驚いて、怯えていた。
敵じゃないことを証明するために、なるべく優しい声でそう語りかけて、それぞれを縛る枷を切り落としていく。
奴隷の首輪だとしたら、僕じゃあ切ることはできないんだけど……
まだ奴隷として売られる前なので、契約は完了していない。
彼女達を縛るものは普通の鉄製のものなので、順次、切断して自由にしていく。
「あ……ほ、本当に、私達を助けてくれるんですか……?」
「わたし、おうちに帰れるの……?」
「はい。もう大丈夫です」
「あ、あああぁ……! ありがとうございますっ、ありがとうございますっ」
女性は涙を流して喜び、子供達もつられて泣き出してしまう。
それだけ怯え、苦しみ、傷ついていたのだろう。
改めて、こんなことを企むドクトルとファルツに強い怒りを覚える。
「リコリス、この人達を」
「りょーかい、任せておきなさい!」
リコリスはふわりと飛び上がると、ぶつぶつとなにかつぶやいた。
すると、捕まっていた人達を包み込むかのように、光のカーテンが現れる。
これが結界なのだろう。
軽く触れてみると、強い抵抗力を感じた。
水の中にいるかのように、思うように手を進めることができない。
しまいにはぴたりと止まり、それ以上は進めなくなる。
「この結界、すごいね。前に進むことができないよ」
「ふふーん、でしょ? そうでしょ? すごいでしょ? まっ、天才美少女キューティービューティー妖精リコリスちゃんの特製結界だもの。そんじょそこらのヤツじゃ突破することはできないわ」
これなら安心だ。
次は、アイシャだけど……
「てめえ、裏切るつもりか!?」
「台無しにしやがって……ぶっ殺す!」
激怒するドクトルの私兵達が現れた。
それぞれに武器を持ち、突撃してくるのだけど……
「私を忘れないでくださいね?」
一陣の風が吹いた。
「ぎゃあああ!?」
「ぐあ!?」
「げはぁっ!?」
ソフィアが一瞬で三人を迎撃して、地に叩き伏せた。
うめき声をこぼしているところを見ると、一応、手加減はしたみたいだ。
ただ、手足が変な方向に曲がっていて……
たぶん、荒事に関わることは二度とできないだろうな。
「さあ、私が相手をしてあげます。どこからでも、いつでもかかってきなさい。ただし……」
ソフィアは剣を構える。
そして、鋭く睨みつけた。
「今の私はだいぶ不機嫌なので、相応の怪我を覚悟してくださいね?」
凍てつくような殺気に、私兵達は顔を青ざめさせた。
あの様子なら問題はないかな?
やりすぎてしまわないか、という心配はあるのだけど……
まあ、そうなったら、それはそれでいいか。
こんな連中に同情する要素はゼロだ。
「じゃあ、あとはお願い。僕は、アイシャを探しに行くよ」
「はい、ここは任せてください」
「しっかりやりなさいよ」
二人のエールを受けて、力を分けてもらったような気分だ。
今ならなんでもできそう。
「くっ……こ、このようなことをして、タダで済むと思っているのですか……!?」
司会者が体を起こして、こちらを睨みつけてきた。
しぶとい。
いっそのこと、バッサリと……
なんて乱暴な考えが浮かんでしまうものの、それは我慢。
無抵抗の相手をというのは、さすがにやったらダメだ。
「ドクトルさまに逆らうなんて愚かなことを……! 断言しましょう、あなた達は、アリのように踏み潰されるでしょう!」
「……タダで済むと思うのか、っていう台詞だけど、それは僕の台詞だよ」
放っておけばいいのだけど、でも、そこだけは見逃すことができず、睨みつける。
「たくさんの人にひどいことをして、アイシャにもひどいことをして……そうやって好き勝手して、タダで済むと思わないでくれるかな? 絶対に、落とし前はつけさせる!」
「っ……!?」
司会者がビクリと震えて、押し黙る。
「はー……フェイトってば、怒ると怖いのね」
なにやらリコリスのそんな台詞が聞こえてきたけど、気にしないことにする。
それよりも、今はアイシャだ。
早く助けて、安心させてあげないと!
司会者が僕に気づいて、不思議そうな顔に。
たぶん、ドクトルから話は聞いているのだろう。
味方だと思っているらしく、不思議そうにしてはいるものの、慌ててはいない。
好都合。
隙だらけなので、遠慮なくやらせてもらうよ。
「ぐぁ!? な、なにが……」
足を斬りつけて、ついでに腕も斬る。
切断したわけじゃないから、ひどい出血じゃないし、死ぬことはないだろう。
でも、すぐに動くことはできないはずだ。
「あ……うわあああああっ!?」
「きゃあああっ、な、なに!? なにが起きているの!?」
突然の事件に、客達が騒ぎ始めた。
中には、判断が早い者もいて、出口に向かい逃げ出そうとしている。
しかし、無駄。
一人も逃さないように、出口はリコリスの魔法で施錠しておいた。
なにも能力を持たない一般人なら、逃げることは不可能だ。
今のうちに、やるべきことをやる。
「あ、あなたは……」
「助けに来ました。じっとしててください」
捕まっていた人達も驚いて、怯えていた。
敵じゃないことを証明するために、なるべく優しい声でそう語りかけて、それぞれを縛る枷を切り落としていく。
奴隷の首輪だとしたら、僕じゃあ切ることはできないんだけど……
まだ奴隷として売られる前なので、契約は完了していない。
彼女達を縛るものは普通の鉄製のものなので、順次、切断して自由にしていく。
「あ……ほ、本当に、私達を助けてくれるんですか……?」
「わたし、おうちに帰れるの……?」
「はい。もう大丈夫です」
「あ、あああぁ……! ありがとうございますっ、ありがとうございますっ」
女性は涙を流して喜び、子供達もつられて泣き出してしまう。
それだけ怯え、苦しみ、傷ついていたのだろう。
改めて、こんなことを企むドクトルとファルツに強い怒りを覚える。
「リコリス、この人達を」
「りょーかい、任せておきなさい!」
リコリスはふわりと飛び上がると、ぶつぶつとなにかつぶやいた。
すると、捕まっていた人達を包み込むかのように、光のカーテンが現れる。
これが結界なのだろう。
軽く触れてみると、強い抵抗力を感じた。
水の中にいるかのように、思うように手を進めることができない。
しまいにはぴたりと止まり、それ以上は進めなくなる。
「この結界、すごいね。前に進むことができないよ」
「ふふーん、でしょ? そうでしょ? すごいでしょ? まっ、天才美少女キューティービューティー妖精リコリスちゃんの特製結界だもの。そんじょそこらのヤツじゃ突破することはできないわ」
これなら安心だ。
次は、アイシャだけど……
「てめえ、裏切るつもりか!?」
「台無しにしやがって……ぶっ殺す!」
激怒するドクトルの私兵達が現れた。
それぞれに武器を持ち、突撃してくるのだけど……
「私を忘れないでくださいね?」
一陣の風が吹いた。
「ぎゃあああ!?」
「ぐあ!?」
「げはぁっ!?」
ソフィアが一瞬で三人を迎撃して、地に叩き伏せた。
うめき声をこぼしているところを見ると、一応、手加減はしたみたいだ。
ただ、手足が変な方向に曲がっていて……
たぶん、荒事に関わることは二度とできないだろうな。
「さあ、私が相手をしてあげます。どこからでも、いつでもかかってきなさい。ただし……」
ソフィアは剣を構える。
そして、鋭く睨みつけた。
「今の私はだいぶ不機嫌なので、相応の怪我を覚悟してくださいね?」
凍てつくような殺気に、私兵達は顔を青ざめさせた。
あの様子なら問題はないかな?
やりすぎてしまわないか、という心配はあるのだけど……
まあ、そうなったら、それはそれでいいか。
こんな連中に同情する要素はゼロだ。
「じゃあ、あとはお願い。僕は、アイシャを探しに行くよ」
「はい、ここは任せてください」
「しっかりやりなさいよ」
二人のエールを受けて、力を分けてもらったような気分だ。
今ならなんでもできそう。
「くっ……こ、このようなことをして、タダで済むと思っているのですか……!?」
司会者が体を起こして、こちらを睨みつけてきた。
しぶとい。
いっそのこと、バッサリと……
なんて乱暴な考えが浮かんでしまうものの、それは我慢。
無抵抗の相手をというのは、さすがにやったらダメだ。
「ドクトルさまに逆らうなんて愚かなことを……! 断言しましょう、あなた達は、アリのように踏み潰されるでしょう!」
「……タダで済むと思うのか、っていう台詞だけど、それは僕の台詞だよ」
放っておけばいいのだけど、でも、そこだけは見逃すことができず、睨みつける。
「たくさんの人にひどいことをして、アイシャにもひどいことをして……そうやって好き勝手して、タダで済むと思わないでくれるかな? 絶対に、落とし前はつけさせる!」
「っ……!?」
司会者がビクリと震えて、押し黙る。
「はー……フェイトってば、怒ると怖いのね」
なにやらリコリスのそんな台詞が聞こえてきたけど、気にしないことにする。
それよりも、今はアイシャだ。
早く助けて、安心させてあげないと!