会場の警備を任されたものの、ドクトルも僕達を完全に信用はしていないだろう。
クリフと協力していると、疑っているとは思わないのだけど……
ただ、自分の暗部を見せていい者かどうか、測りかねているところはあると思う。
会場の警備を、と言われたものの、周辺を担当することになるかもしれない。
それは問題だ。
なので、警備を任されるまでの間、クリフの手のものを撃退するなどの成果を示してみせた。
これにより、僕達はクリフじゃなくてあなたに味方するよ? というアピールをすることができて、信頼もゲット。
無事、オークション会場の内部の警備を任されることに。
何度も何度も打ち合わせを重ねて……
当日のドクトルの動きも、可能な限りシミュレートして……
これ以上の作戦はない、という完璧な準備ができたところで、オークション当日が訪れた。
――――――――――
オークション会場は、郊外にある寂れた屋敷だ。
一見するとお化け屋敷のように見えるのだけど、それは外観だけ。
中はきちんと整備されていて、綺麗、なおかつ豪華だ。
それだけじゃなくて、要塞のような堅牢な作りになっている。
いざという時に備えて、このような作りにしたのだろう。
僕とソフィアはホールの担当だ。
来場者を全員把握することができるし、いつでもどこへでも駆けつけやすいから、とても助かる配置だ。
「やあ」
ドクトルが現れた。
ファルツも一緒だ。
ただ、護衛が見当たらない。
ここは絶対安心、ということなのかな?
「調子はどうですか?」
「はい、問題ありません」
「なにかしら問題が起きても、私とフェイトですぐに解決いたしましょう」
「そうですか、そうですか。とても頼もしい。前にも言いましたが、今日はとても大事な取り引きがあるため、しっかりと頼みますよ」
「「はい」」
ドクトルは機嫌よさそうに笑い、
「……ふん」
ファルツは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
ドクトルからの信頼は、ある程度、得ることができたみたいだけど、ファルツはそうでもないみたいだ。
ファルツも重要なターゲットなのだけど、優先順位はドクトルの方が上。
今になって急に信頼を得ることはできないし、放置しておくしかないんだけど……うーん?
ちょっとイヤな感じがするな。
この予感、外れてくれるといいんだけど……
「フェイト」
二人が去った後で、ソフィアがそっと声をかけてきた。
「もう一度、今日の手順を確認しておきましょう」
「うん、そうだね」
まずは、すでに内部に潜入している僕達が動く。
見回りと称して屋敷内を探索。
事前に屋敷の設計図を入手してチェックしておいたので、オークションの会場となる場所は大体の予想がついている。
そして、オークションの現場を確認したところで、魔道具を使い、クリフに合図を送る。
合図と共に、クリフを始めとする冒険者達が屋敷へ突入。
もちろん、誰一人逃さないように万全の包囲網を敷く。
僕とソフィアの第一目標は、アイシャの救出。
そして余裕があれば、ドクトルとファルツの確保。
「……とまあ、こんなところだよね?」
「はい、そうですね。補足するなら、第三の目的として、隠し通路などがないかの調査。あるとしたら、それを潰しておくことでしょうか」
「あ、そっか。それもあったね」
「ですが、さすがにそこまでの余裕はないと思うので……私達は、アイシャの救出に専念しましょう。ドクトルとファルツは、クリフがなんとかすると言っていますし」
「そう、だね……」
「どうかしましたか?」
「うーん、なんて言えばいいのか……ちょっとイヤな予感がして」
「イヤな予感ですか……」
「ごめんね、根拠のない話で」
「いえ、問題ありません。フェイトがそう言うのなら、私も、最大限に警戒することにします。なにしろ、世界で一番大事で、一番信頼できる人の言葉ですからね」
「ありがとう、ソフィア」
「……あのさー」
僕の頭の上に乗るリコリスが、呆れたような感じで言う。
「あたしのこと忘れて、イチャつかないでくれる? っていうか、あんたら、イチャつかないと生きていけないの? とある魚なの? あたし、砂糖を食べさせられているみたいで、胸焼けしてきたんだけど」
「「ごめんなさい」」
リコリスに陳謝する僕とソフィアだった。
その後……
一時間ほど経過したところで、屋敷内の巡回と称して探索を始めた。
これは事前に話をしているため、怪しまれることはない。
一階、二階、三階を見て回るものの、オークション会場はない。
となると、地下室だろうか?
事前に入手した設計図で、この屋敷に広い地下室があることは確認済みだ。
「オッケー。今はあんた達が巡回してるってことで、途中に見張りはいないわ」
先行偵察をしてくれたリコリスから、そんな報告を受け取る。
「ただ、ちょっとでかい扉があって、その先は確認できなかったから、そこはどうなってるかわからないわ」
「とりあえず、行ってみるしかないね」
「設計図も、この屋敷が建てられた当時のものなので、改築などされているかもしれませんし……見落としがないよう、注意していきましょう」
こうして、僕達は地下へ。
地下は暗く狭くおどろどろしい……なんていうことはなくで、地上階と同じように綺麗で清潔だ。
しかも広い。
さらに言うと、多方面に通路が伸びている。
設計図にこんな情報は載っていない。
改築されていることは確定かな。
「ここがその扉か……」
五分ほど歩いたところで、リコリスが言う扉に行き着いた。
鍵は……かかっていない。
見張りもいない。
大丈夫かな?
警戒はしつつ、扉を開ける。
そこで見たものは……
「さあ、おまたせいたしました。続いての商品は、金髪碧眼の美女です! 見ての通り、スタイルは抜群。夜の相手をさせるのならば、文句はないでしょう。それだけではなくて、コレは、ある程度の戦闘能力も有しています。性奴隷だけではなくて、戦闘奴隷としても使用できるという優れもの。さあさあ、いかがでしょう? まずは、一万からスタートです!!!」
おぞましいほどの欲望が行き交うオークションの現場だった。
クリフと協力していると、疑っているとは思わないのだけど……
ただ、自分の暗部を見せていい者かどうか、測りかねているところはあると思う。
会場の警備を、と言われたものの、周辺を担当することになるかもしれない。
それは問題だ。
なので、警備を任されるまでの間、クリフの手のものを撃退するなどの成果を示してみせた。
これにより、僕達はクリフじゃなくてあなたに味方するよ? というアピールをすることができて、信頼もゲット。
無事、オークション会場の内部の警備を任されることに。
何度も何度も打ち合わせを重ねて……
当日のドクトルの動きも、可能な限りシミュレートして……
これ以上の作戦はない、という完璧な準備ができたところで、オークション当日が訪れた。
――――――――――
オークション会場は、郊外にある寂れた屋敷だ。
一見するとお化け屋敷のように見えるのだけど、それは外観だけ。
中はきちんと整備されていて、綺麗、なおかつ豪華だ。
それだけじゃなくて、要塞のような堅牢な作りになっている。
いざという時に備えて、このような作りにしたのだろう。
僕とソフィアはホールの担当だ。
来場者を全員把握することができるし、いつでもどこへでも駆けつけやすいから、とても助かる配置だ。
「やあ」
ドクトルが現れた。
ファルツも一緒だ。
ただ、護衛が見当たらない。
ここは絶対安心、ということなのかな?
「調子はどうですか?」
「はい、問題ありません」
「なにかしら問題が起きても、私とフェイトですぐに解決いたしましょう」
「そうですか、そうですか。とても頼もしい。前にも言いましたが、今日はとても大事な取り引きがあるため、しっかりと頼みますよ」
「「はい」」
ドクトルは機嫌よさそうに笑い、
「……ふん」
ファルツは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
ドクトルからの信頼は、ある程度、得ることができたみたいだけど、ファルツはそうでもないみたいだ。
ファルツも重要なターゲットなのだけど、優先順位はドクトルの方が上。
今になって急に信頼を得ることはできないし、放置しておくしかないんだけど……うーん?
ちょっとイヤな感じがするな。
この予感、外れてくれるといいんだけど……
「フェイト」
二人が去った後で、ソフィアがそっと声をかけてきた。
「もう一度、今日の手順を確認しておきましょう」
「うん、そうだね」
まずは、すでに内部に潜入している僕達が動く。
見回りと称して屋敷内を探索。
事前に屋敷の設計図を入手してチェックしておいたので、オークションの会場となる場所は大体の予想がついている。
そして、オークションの現場を確認したところで、魔道具を使い、クリフに合図を送る。
合図と共に、クリフを始めとする冒険者達が屋敷へ突入。
もちろん、誰一人逃さないように万全の包囲網を敷く。
僕とソフィアの第一目標は、アイシャの救出。
そして余裕があれば、ドクトルとファルツの確保。
「……とまあ、こんなところだよね?」
「はい、そうですね。補足するなら、第三の目的として、隠し通路などがないかの調査。あるとしたら、それを潰しておくことでしょうか」
「あ、そっか。それもあったね」
「ですが、さすがにそこまでの余裕はないと思うので……私達は、アイシャの救出に専念しましょう。ドクトルとファルツは、クリフがなんとかすると言っていますし」
「そう、だね……」
「どうかしましたか?」
「うーん、なんて言えばいいのか……ちょっとイヤな予感がして」
「イヤな予感ですか……」
「ごめんね、根拠のない話で」
「いえ、問題ありません。フェイトがそう言うのなら、私も、最大限に警戒することにします。なにしろ、世界で一番大事で、一番信頼できる人の言葉ですからね」
「ありがとう、ソフィア」
「……あのさー」
僕の頭の上に乗るリコリスが、呆れたような感じで言う。
「あたしのこと忘れて、イチャつかないでくれる? っていうか、あんたら、イチャつかないと生きていけないの? とある魚なの? あたし、砂糖を食べさせられているみたいで、胸焼けしてきたんだけど」
「「ごめんなさい」」
リコリスに陳謝する僕とソフィアだった。
その後……
一時間ほど経過したところで、屋敷内の巡回と称して探索を始めた。
これは事前に話をしているため、怪しまれることはない。
一階、二階、三階を見て回るものの、オークション会場はない。
となると、地下室だろうか?
事前に入手した設計図で、この屋敷に広い地下室があることは確認済みだ。
「オッケー。今はあんた達が巡回してるってことで、途中に見張りはいないわ」
先行偵察をしてくれたリコリスから、そんな報告を受け取る。
「ただ、ちょっとでかい扉があって、その先は確認できなかったから、そこはどうなってるかわからないわ」
「とりあえず、行ってみるしかないね」
「設計図も、この屋敷が建てられた当時のものなので、改築などされているかもしれませんし……見落としがないよう、注意していきましょう」
こうして、僕達は地下へ。
地下は暗く狭くおどろどろしい……なんていうことはなくで、地上階と同じように綺麗で清潔だ。
しかも広い。
さらに言うと、多方面に通路が伸びている。
設計図にこんな情報は載っていない。
改築されていることは確定かな。
「ここがその扉か……」
五分ほど歩いたところで、リコリスが言う扉に行き着いた。
鍵は……かかっていない。
見張りもいない。
大丈夫かな?
警戒はしつつ、扉を開ける。
そこで見たものは……
「さあ、おまたせいたしました。続いての商品は、金髪碧眼の美女です! 見ての通り、スタイルは抜群。夜の相手をさせるのならば、文句はないでしょう。それだけではなくて、コレは、ある程度の戦闘能力も有しています。性奴隷だけではなくて、戦闘奴隷としても使用できるという優れもの。さあさあ、いかがでしょう? まずは、一万からスタートです!!!」
おぞましいほどの欲望が行き交うオークションの現場だった。