翌日。
さっそく、僕達は行動に移ることにした。
まずは、アイシャを探すフリをして、外へ。
一日二日で見つけたとなると、さすがに不自然なので、一週間ほどの時間を空けることにした。
その間、ドクトルに関する情報をありったけ仕入れる。
クリフが苦戦しているだけあって、黒い噂が流れてくる程度で、確たるものはない。
ただ、それでも十分。
なにが今後に繋がるかわからないし、思わぬ収穫が出てくる可能性もある。
なので、手当たり次第に情報収集をした。
ついでに……
ファルツ・ルッツベインについても調査を進めた。
ドクトルと同じく、冒険者ギルドの幹部の一人。
ドクトルの方が立場は上のようだけど……
コイツはコイツで、放っておくことはできない。
クリフの話によると、スタンピードを引き起こしたのはファルツだ。
その動機は、クリフに嫌がらせをしたいという、くだらないもの。
こんなヤツを放っておいたら、今後、どれだけの被害が生まれることか。
ドクトルと同じく、絶対に追放してやる。
そんな決意を胸に燃やしつつ、情報収集を進めて……
同時に、作戦の準備も進めて……
そして、一週間が経過した。
――――――――――
「なにっ、アイシャを見つけたのですか!?」
準備が整ったところで、僕達は、アイシャを見つけたという報告をドクトルにした。
思っていた通り。
ものすごい勢いで食いついてきた。
「それは本当ですか!?」
「はい。十歳くらいの、犬耳の獣人族ですよね?」
「うむ、うむ。その子に間違いないありません」
「色々な調査を重ねた結果、先日、彼女についての情報を得ることができて……」
「それで、実際に確認したところ、アイシャちゃんで間違いないという結論に達しました」
ソフィアが、笑顔で補足してくれる。
声のトーンはいつも通りで、ウソをついているなんて、とても思えない。
女の子はウソが上手なのかな?
ちょっと怖い、なんてことを思ってしまう僕だった。
「一週間で見つけてしまうなんて、素晴らしい成果ですね。お二人を専任にしたのは、間違いではありませんでした。ありがとうございます」
「いえ、お役に立てたのならなによりです」
ドクトルは、孫との再会を待ちわびる好々爺のような顔をするのだけど、
「それで、アイシャは今、どちらに?」
そう問いかけた時、一瞬ではあるけれど、獲物を狙う猛禽類のような鋭い目をした。
これがドクトルの本性なのだろう。
やっぱり、この人は危険だ。
絶対に作戦を成功させて、冒険者ギルドから追放しなければ。
「別の街で見つかりまして」
「今、この街に来る馬車を手配したところです。おそらく、数日中には到着するかと」
「なるほど、なるほど。会えることをとても楽しみにしています。あぁ、今日はなんて素晴らしい日だ」
今、ドクトルは頭の中でなにを考えているのか?
どうせロクでもないことなんだろうな……
そんなことを思いつつ、適当な愛想笑いを浮かべる。
「……」
ソフィアは愛想笑いが引きつりかけていた。
ドクトルのイヤな気配を感じ取り、それに嫌悪感を示しているみたいで、今すぐにでも剣を抜いてしまいそうだ。
ダメ。
さすがに我慢して!
――――――――――
「危ないところでした……あのゴミ、もとい、腐りきったダメ人間を反射的に斬り捨ててしまいそうになりました……」
調査を続けるという名目で屋敷を離れた後、ソフィアがげんなりとした様子で言う。
僕が考えているよりも危うい状況だったらしい。
危ない。
そのまま斬り捨てていたら、とんでもないことになっていたところだ。
「ま、ソフィアの短気はともかく、今のところ、作戦は順調ね」
僕の頭の上で、リコリスが上機嫌で言う。
僕の頭の上、気に入ったのかな?
「大体、あたし達が考えていた通りに動いているんじゃない?」
「うん、そうだね。今のところ、問題ないと思う」
「でも、油断は禁物ですよ? 今は順調だとしても、なにが起きるかわかりませんからね。気を引き締めて、一つのミスもしないつもりで挑みましょう」
「うん、わかっているよ」
そんな話をしつつ、冒険者ギルドへ。
ここでアイシャの情報を探る……
フリをして、逆に、ドクトルとファルツの調査を進める。
今日は、クリフが信頼する諜報員と面会をして、情報をもらう予定だ。
その予定なのだけど……
「……遅いですね?」
客間に案内されて、待つこと三十分。
未だに諜報員は現れない。
クリフも現れない。
なにかあったのかな?
「……またせたね」
クリフが姿を見せたのは、さらに三十分経ってからだった。
なにかあったんだろうと、一目見てわかるほど苦い顔をしている。
トラブル発生、という感じかな?
できれば、軽いトラブルであってほしいんだけど……
そんな僕の願いは、簡単に裏切られることになる。
「どうかしたの?」
「すまない!」
クリフは頭を下げて、
「獣人族の子だけど、ドクトルに捕まってしまったかもしれない」
とびきりの爆弾発言をするのだった。
さっそく、僕達は行動に移ることにした。
まずは、アイシャを探すフリをして、外へ。
一日二日で見つけたとなると、さすがに不自然なので、一週間ほどの時間を空けることにした。
その間、ドクトルに関する情報をありったけ仕入れる。
クリフが苦戦しているだけあって、黒い噂が流れてくる程度で、確たるものはない。
ただ、それでも十分。
なにが今後に繋がるかわからないし、思わぬ収穫が出てくる可能性もある。
なので、手当たり次第に情報収集をした。
ついでに……
ファルツ・ルッツベインについても調査を進めた。
ドクトルと同じく、冒険者ギルドの幹部の一人。
ドクトルの方が立場は上のようだけど……
コイツはコイツで、放っておくことはできない。
クリフの話によると、スタンピードを引き起こしたのはファルツだ。
その動機は、クリフに嫌がらせをしたいという、くだらないもの。
こんなヤツを放っておいたら、今後、どれだけの被害が生まれることか。
ドクトルと同じく、絶対に追放してやる。
そんな決意を胸に燃やしつつ、情報収集を進めて……
同時に、作戦の準備も進めて……
そして、一週間が経過した。
――――――――――
「なにっ、アイシャを見つけたのですか!?」
準備が整ったところで、僕達は、アイシャを見つけたという報告をドクトルにした。
思っていた通り。
ものすごい勢いで食いついてきた。
「それは本当ですか!?」
「はい。十歳くらいの、犬耳の獣人族ですよね?」
「うむ、うむ。その子に間違いないありません」
「色々な調査を重ねた結果、先日、彼女についての情報を得ることができて……」
「それで、実際に確認したところ、アイシャちゃんで間違いないという結論に達しました」
ソフィアが、笑顔で補足してくれる。
声のトーンはいつも通りで、ウソをついているなんて、とても思えない。
女の子はウソが上手なのかな?
ちょっと怖い、なんてことを思ってしまう僕だった。
「一週間で見つけてしまうなんて、素晴らしい成果ですね。お二人を専任にしたのは、間違いではありませんでした。ありがとうございます」
「いえ、お役に立てたのならなによりです」
ドクトルは、孫との再会を待ちわびる好々爺のような顔をするのだけど、
「それで、アイシャは今、どちらに?」
そう問いかけた時、一瞬ではあるけれど、獲物を狙う猛禽類のような鋭い目をした。
これがドクトルの本性なのだろう。
やっぱり、この人は危険だ。
絶対に作戦を成功させて、冒険者ギルドから追放しなければ。
「別の街で見つかりまして」
「今、この街に来る馬車を手配したところです。おそらく、数日中には到着するかと」
「なるほど、なるほど。会えることをとても楽しみにしています。あぁ、今日はなんて素晴らしい日だ」
今、ドクトルは頭の中でなにを考えているのか?
どうせロクでもないことなんだろうな……
そんなことを思いつつ、適当な愛想笑いを浮かべる。
「……」
ソフィアは愛想笑いが引きつりかけていた。
ドクトルのイヤな気配を感じ取り、それに嫌悪感を示しているみたいで、今すぐにでも剣を抜いてしまいそうだ。
ダメ。
さすがに我慢して!
――――――――――
「危ないところでした……あのゴミ、もとい、腐りきったダメ人間を反射的に斬り捨ててしまいそうになりました……」
調査を続けるという名目で屋敷を離れた後、ソフィアがげんなりとした様子で言う。
僕が考えているよりも危うい状況だったらしい。
危ない。
そのまま斬り捨てていたら、とんでもないことになっていたところだ。
「ま、ソフィアの短気はともかく、今のところ、作戦は順調ね」
僕の頭の上で、リコリスが上機嫌で言う。
僕の頭の上、気に入ったのかな?
「大体、あたし達が考えていた通りに動いているんじゃない?」
「うん、そうだね。今のところ、問題ないと思う」
「でも、油断は禁物ですよ? 今は順調だとしても、なにが起きるかわかりませんからね。気を引き締めて、一つのミスもしないつもりで挑みましょう」
「うん、わかっているよ」
そんな話をしつつ、冒険者ギルドへ。
ここでアイシャの情報を探る……
フリをして、逆に、ドクトルとファルツの調査を進める。
今日は、クリフが信頼する諜報員と面会をして、情報をもらう予定だ。
その予定なのだけど……
「……遅いですね?」
客間に案内されて、待つこと三十分。
未だに諜報員は現れない。
クリフも現れない。
なにかあったのかな?
「……またせたね」
クリフが姿を見せたのは、さらに三十分経ってからだった。
なにかあったんだろうと、一目見てわかるほど苦い顔をしている。
トラブル発生、という感じかな?
できれば、軽いトラブルであってほしいんだけど……
そんな僕の願いは、簡単に裏切られることになる。
「どうかしたの?」
「すまない!」
クリフは頭を下げて、
「獣人族の子だけど、ドクトルに捕まってしまったかもしれない」
とびきりの爆弾発言をするのだった。