「神王竜剣術・壱之太刀……破山っ!!!」

 威力重視の剣技を、地面に向けて放つ。
 ついでに言うと、剣を横にして、刃の腹で地面をすくい上げるようにして放つ。

 ゴガァッ!

 隕石が着弾したかのように、大量の土砂が舞い上がる。
 さらに、地中に埋もれていた石が吹き出して、矢のごとく飛ぶ。

 それらはゼフィランサスを飲み込む。

「キィイイイゥ!?」

 土と石のカーテンが直撃して、ゼフィランサスが悲鳴をあげた。
 直接的なダメージは少ないだろう。
 たぶん、驚いただけだと思う。

 でも、それで十分。
 敵は僕の姿を見失い、混乱している。

 この隙、逃すつもりはない。

「いっけー、フェイト!」
「うん!」

 リコリスの応援を受けて、一気に突撃した。

 蔦の迎撃が繰り出されるものの、その狙いは甘い。
 土と石のカーテンを浴びたことで、集中することができないのだろう。

 避けて、あるいは斬り。
 道を作り、ゼフィランサスに接近した。

「もう一回……破山っ!!!」

 ゼフィランサスの巨体を断ち切るため、ありったけの力で剣を振り下ろした。

 ザンッ!!!

 人型の部分を叩き潰す。
 巨体が仰け反り、そのまま地面に倒れた。

 しかし、死んだわけではないらしい。
 地面の倒れているものの、その状態でのたうち回り、蔦を暴れさせている。

「すごい生命力だね……」
「SSランクとなれば、あれくらい普通よ。頭消し飛んでも再生するヤツもいるって聞くし、まあ、再生しないだけマシじゃない?」
「とんでもない相手だね」

 でも、そういう連中と渡り合えるようにならないと、ソフィアの足を引っ張ってしまう。
 それはイヤだ。

「なら、何度でも……」
「フェイト! 下!」
「っ!?」

 リコリスの声で、咄嗟に横に跳んだ。
 直後、蔦が槍のように生えてきて、さきほどまでいた場所を貫く。

「うっわ、あぶな」
「やられたフリをして、こっそりと攻撃の機会を伺っていたんだ……それなりに知恵もある、っていうことか。油断はできないね」

 僕の方が有利、という考えは捨てた。
 気を引き締める。

 もう一度、破山を叩きつければ、たぶん、倒せると思う。
 ただ、今の一撃で距離が開いてしまった。
 ゼフィランサスは防御に徹している様子で、蔦を不気味にうごめかせている。

 もう一度、土と石を浴びせるか?
 でも、知能は高いみたいだから、同じ攻撃が通じるかどうか。

 なら……

「これだ!」

 雪水晶の剣を鞘に戻して、再び別の剣を手に取る。
 そして、それを……おもいきり投擲した。

「ッ!?」

 武器を矢の代わりに使うという戦い方に、ゼフィランサスが驚いたように体を震わせる。
 なまじ知能があるせいで、動揺しているのだろう。

 ゼフィランサスは蔦をぐるりと回転させて、迫りくる剣を叩き落とす。
 でも、それは予想通り。

 僕は、さらに二本目、三本目を投擲する。

「キィ!」

 ゼフィランサスは驚きつつも、全ての剣を蔦で防いだ。
 残りは、雪水晶の剣、一本。
 さすがにこれは手放さないだろうと、そう思っているだろう。

 だから……これも投擲した。

「ギギッ!?」

 狂ったか?
 ゼフィランサスは、そう言っているかのようだった。

 雪水晶の剣の軌道は、ゼフィランサスの巨体の横、少し離れたところを通る。
 これならば当たることはない。
 そう判断して、ヤツは蔦で防ぐことをやめた。
 代わりに、武器をなくした僕を狙うのだけど……それこそが、致命的なミスだ。

「ふっ!」

 前かがみに、地面を這うようにして駆ける。
 ゼフィランサスの蔦をかいくぐり、その巨体の横をすり抜けて……
 投げた雪水晶の剣に追いつく。

「キャッチ!」
「うっそぉ……自分で投げた剣を自分で取るなんて、ありえないでしょ……」

 リコリスが驚いていたけど、今は後回し。
 これで、完全にゼフィランサスの虚を突くことに成功した。

 後ろに回り込み、雪水晶の剣を冗談に構える。

 そして……

「破山っ!!!!!」

 横に薙ぐ。
 残された本体部分が上下に分かたれて、さらに、爆発したかのように吹き飛ぶ。

 土煙が舞い上がり、視界が塞がれる。
 もしもゼフィランサスが生きていたら、かなり致命的な状況だ。

 でも、その心配はしていない。
 僕は落ち着いて、雪水晶の剣を鞘に収める。

 それと同時に土煙が晴れて……
 今度こそ、絶命したゼフィランサスの姿が見えた。

「討伐完了」