数時間かけて、ようやくモデルの仕事が終わった。
 途中、何度か休憩を挟んだものの、けっこう疲れた。

「ふぅ」

 誰もいなくなった式場で、僕は一人、キラキラのステンドグラスを見上げていた。

 ソフィアは着替え中。
 アイシャ達は疲れて寝てしまい、控え室で休んでいる。

「なんか、夢のような時間だったなあ……」

 モデルの仕事だけど、ソフィアのドレス姿を見ることができた。
 それがとにかく嬉しい。

「でも、いつかは……」

 仕事とかじゃなくて、本当の式を挙げたい。

「フェイト」
「あれ、ソフィア?」

 振り返るとソフィアがいた。
 着替えていたはずなのに、まだドレス姿のままだ。

「どうしたの?」
「私が使っていた控え室は、ちょっと今別の方が使っているみたいで……それまで、私はここで待機となりました」
「そうなんだ、大変だね」
「そうでもありませんよ? こうして、フェイトと二人でいることができますからね」
「え、えっと……」

 ソフィアが隣に並ぶ。

 ドレス姿のソフィアは本当に綺麗だ。
 女神様のようだ。
 誇張表現じゃなくて、心の底からそう思う。

 ドキドキしてしまう。
 ものすごく緊張してしまう。

「ねえ、フェイト」
「う、うん。なに?」
「いつか、こうして式を挙げたいですね」
「ソフィア……うん、僕も今、同じことを考えていたよ」

 恥ずかしくて。
 ちょっと照れてしまうけど、でも、これはしっかりと言っておかないといけないと思った。

「だって……ソフィアのことが好きだから」
「……はい、私もフェイトのことが大好きですよ」

 ソフィアは顔を赤くしつつ、嬉しそうにはにかんだ。

 本当に綺麗だ。
 彼女から目を離すことができない。
 視線と……そして、心を奪われてしまう。

 僕の心を知っているのか知らないのか、ソフィアはこちらをじっと見つめていた。
 その瞳はしっとりと潤んでいるようだ。

「……フェイト……」
「……ソフィア……」

 互いに名前を呼ぶ。
 それから、そっと距離を寄せていく。

 心が惹かれて。
 体も引かれていく。

 そして……

「……ん……」

 二人の距離がゼロになった。

 唇に広がる柔らかい感触。
 温かくて。
 幸せで。
 いつまでも、ずっとこうしていたいと思う。

「「……」」

 ややあって、どちらからともなく唇を離した。

 ソフィアは真っ赤だ。
 たぶん、僕も真っ赤になっていると思う。

「キス……しちゃいましたね」
「うん、そうだね……」
「なんていうか、本当の結婚式みたいです……」
「また今度……そう遠くないうちに、本当の結婚式をしよう」
「……フェイト……」

 ソフィアの手を取り、その顔をじっと見つめる。

「僕と結婚してくれませんか?」
「……はい、喜んで……」

 ソフィアは花が咲くような笑顔を浮かべて、しっかりと頷くのだった。