その後、すぐにモデルの仕事が行われた。

 式の会場に移動して、ステンドグラスの下で僕とソフィアが横に並ぶ。
 その左右にアイシャとスノウ。
 リコリスはアイシャの頭の上に乗っていた。

「では、始めますね」

 画家が到着して、さっそく仕事を始めた。
 滑らかなタッチで絵を描いていく。
 こちらから見えないのが残念だ。

「……これ、暇ね。どれくらいじっとしていないといけないの?」
「数時間は覚悟しておいた方がいいですよ」
「うげっ、そんなに……?」
「合間に休憩があるから大丈夫だよ」
「うへぇ……」

 リコリスは、やっぱりやめておけばよかった、なんていう顔をしていた。

 一方で、アイシャはとてもわくわくした感じだ。
 目をキラキラと輝かせている。

「アイシャは楽しい?」
「うん!」
「あ、えっと……」

 尻尾がぶんぶんと振られていた。
 これ、大丈夫かな?

「問題ありませんよ。ただ、後で彼女の尻尾だけスケッチさせていただければ」
「あ、はい。わかりました」

 優しい人でよかった。

 アイシャも尻尾は自分でコントロールできないところもあるみたいだから、仕方ない。

「わたしとおとーさんとおかーさんとスノウの絵……素敵!」
「ちょっと、あたしは!?」
「ワフッ」
「あ、こらスノウ。笑ったわね?」
「スノウをいじめたら、めっ」
「なんか最近、アイシャがソフィアやフェイトに似てきたわね……」
「ふふ。だとしたら嬉しいですね」
「そうだね」

 本当の家族になれたような気がする。

 でも、ここで終わりじゃない。
 これからも一緒の時間を過ごして、何度も笑い、絆を深めていくだろう。
 ずっと。

「ねえ、フェイト」

 そっと、ソフィアが僕にだけ聞こえる声量で言う。

「こうしていると、結婚式みたいですね」
「う、うん……そうだね。僕も同じことを考えていたよ」

 式を挙げる時、こうして絵画に残す人は多いって聞く。

「ちょっとドキドキしますね」
「ワクワクもするかな」
「フェイトは豪胆ですね」
「これくらいで豪胆、って言われても……」
「私は……本当に、ものすごくドキドキしていますから」

 ちらりと見ると、ソフィアの頬は赤くなっていた。
 りんごみたいだ。

 でも、それは僕も同じ。
 頬が熱くて、きっと同じように赤くなっていると思う。

「……あのさ」
「はい」

 ちょっと迷って。
 でも、ここで言わなければいつ言うんだ、と決意を固める。

「今日のこれは依頼だけど……その、えっと……いつか、そう遠くないうちに、本当の式を挙げたい」
「……フェイト……」
「ど、どうかな……?」

 ソフィアは……優しく、とても優しい笑みを浮かべる。

「はい、もちろん」
「うん、ありがとう」