半日に及ぶ決闘の末、ソフィアが勝利を掴み取った。

 半日も戦わなくても……
 と思うのだけど、本人達にとってはとても大事なことらしく、ツッコミを入れられないほどに真剣な様子だった。

 とにかくも、パートナーが決定した。

 依頼のため、まずは服飾店に。
 ドレスなどはすでに用意されているけど、サイズなどを調整しないといけない。

「いらっしゃいませ」

 店に入ると、オーナーらしき綺麗な女性に迎えられた。

「今日はどのような服をお探しでしょうか?」
「あ、えっと……」
「すみません。私達、クリフの紹介で来たんですが……」
「あら。それじゃあ、あなた達がモデルに?」
「はい」
「ふむ」

 じっと見つめられる。
 女性はソフィアを見て、次いで僕を見る。
 じーっと見る。

 僕を見る時間がやけに長い。
 うぅ……
 もしかして、こんな子供っぽい男がモデルに? と反対されているのかな。

「いいわね」
「え?」
「あなた、とてもいいわ……可愛らしさが前面に出ているものの、その奥に隠された芯の強さ。凛とした瞳に、意思の強さを感じさせられる。体はしっかりと鍛えられていて、しかし、無駄に肉はついていない……あぁ、なんて最高なのかしら!」
「は、はぁ……」

 褒められているのかな?

 ソフィアは、なんでドヤ顔をするの?

「ねえ、あなた!」
「は、はい?」
「結婚式だけじゃなくて、その後も私のところでモデルをやらない?」
「えぇ!?」
「色々な服を着てもらって、私の店の服をアピールしてほしいの。それと、案内用に絵に残して……あ、女性用の服を着るのもありね」

 今、とんでもなく不穏な言葉が聞こえてきたような。

「え、えっと……とりあえず、依頼を先にしたいんですけど」
「あ、それもそうね。みんな!」

 奥から複数人の女性が現れた。

「こちらの方のサイズを測ってちょうだい。私は、この子のサイズを測るわ」
「「えっ」」

 僕とソフィアの驚きの声が重なる。

「待ってください。フェイトのサイズはあなたが測るんですか?」
「ええ、そうよ」
「そんな美味しい役目を他の人に……」
「ソフィア?」
「私がやります! フェイトに堂々と触れるチャンス……ではなくて、私がフェイトのパートナーですから!」
「ソフィア?」

 欲望が漏れているよ?

「でもあなた、きちんと測ることはできるの? こういうのって、適当にやるだけじゃダメなのよ。きちんと正確に測らないとダメ」
「うっ、それは……」
「知識がないならダメ。悪いけど、ここは譲るつもりはないわ」
「フェイトに変なことをしませんか?」
「……しないわよ」

 今の間は!?

「さあさあ、剣聖様はこちらへ」
「ふふ、こんなにも極上の素材がやってくるなんて……」
「測るついでに、色々と教えてさしあげましょう」
「え? え?」

 ソフィアの顔が青くなる。
 僕の心配をするどころじゃないと気づいたらしい。

「さあ、行きましょう」
「みっちりねっとり丁寧に測ってあげますわ」
「ふふ、楽しみね。どんな声で鳴いてくれるのかしら」
「あ、いえ、その……やっぱり私は……」
「「「さあ、行くわよ!!!」」」
「いやぁあああああーーーーー!?」

 ソフィアは引きずられるようにして店の奥に消えた。

 だ、大丈夫かな……?

「それじゃあ」

 がしっと、肩を掴まれた。
 恐る恐る振り返ると、にっこりと笑う女性が。

「私達も仕事をしましょうか」
「え、えっと……はい」

 ダメだ、逃げられない。
 観念した僕は、罠にかかった鹿のような気持ちで頷くのだった。



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 その夜。
 採寸を終えてソフィアと合流したけど……
 僕もソフィアもものすごく疲れて、魂が抜けたような顔をしていたけど、互いに深く追求することはしないのだった。