「あなたのそれは、復讐なんかじゃない! 子供がそうするように、ただ癇癪を起こして暴れているだけだ!」
「うるさいうるさイ、黙レ!!!」
「本当はわかっているんだよね、こんなことをしても意味はないって。なにも戻るものはないって。なら……」
「黙れと言っタ!!!」

 できることならジャガーノートを討伐したくない。
 わかりあえるのならわかりあいたい。

 そう思い言葉を重ねるものの、彼の心に届くことはない。
 目につく全てを破壊する勢いで暴れる。

「フェイト、気持ちはわかりますが、もう……」
「……うん、そうだね」

 心も魔獣に堕ちた。
 なら、もうできることはない。

「せめて、安らかに眠れることを」
「舐めるナ!!!」

 ジャガーノートが怒りに吠えて、ブレスを吐き出した。

 超高熱の炎。
 直撃したら骨も残らないだろう。
 かすっても致命傷だ。

 でも、もう覚えた。

「なニ!?」

 横に跳んで回避して……
 舌のように伸びてくる炎の破片は、剣で地面を砕いて、その破片で相殺した。

「その攻撃はもう通用しないよ」
「同じく、ですね」
「んー……ちょっと攻撃がワンパターンなんだよね」
「力はあるが、それをうまく使いこなせていないな」
「生意気ナ……!!!」

 ジャガーノートは再びブレスを吐いた。
 今度は先程よりも勢いがあって、広範囲に炎が広がる。

 でも、それも芸がない攻撃だ。
 ただ範囲を広げただけなら簡単に避けることができる。
 事実、僕を含めて、みんな無傷だ。

「フェイト、一気に決めましょう。切り札がないとは限りません」
「うん、そうだね」

 僕とソフィアでありったけの一撃を叩き込む。
 そうすれば、たぶん、なんとかなるはずだ。

 でも……

「我の邪魔を……するなアアアアアアアアッ!!!」

 ジャガーノートは空気を震わせるような叫び声を放つ。

 暴れる。
 暴れる。
 暴れる。

 デタラメな攻撃を繰り返して、周囲にあるもの全てを破壊していく。
 攻撃は単純で見切ることは簡単だ。
 しかし、ジャガーノートのような巨体が暴れ回ることで、迂闊に近づくことができないでいた。
 それに力を貯めることも難しい。

 まずい。

 今のところ、ジャガーノートの注意は僕達に向いているものの……
 これが王都に向けられたら、どれだけの被害が生まれることか。
 できる限りヘイトを買い、ターゲットが移らないようにしないと。

 でも、そうすると決定的な一打を叩き込めないわけで……
 ものすごくもどかしい。

「なにもかも、全て滅びてしまうがいイ! 我が壊してくれル!!!」
「そんなこと……」
「……させないよ」

 ふと、第三者の声が響いた。

 炎、氷、雷、土、風……色々な魔法が飛んできた。
 それと、数え切れないくらいの矢の雨。

 それらがジャガーノートに襲いかかる。
 ダメージを与えることは敵わないが、その動きを止めることには成功した。

「すみません、おまたせしました!」
「やあ、元気にやっているかい?」

 エリンとクリフ……それと、たくさんの騎士と冒険者の姿があった。