「「レナ!?」」

 思わぬ人物の乱入に僕とソフィアは驚いた。

 いや、彼女だけじゃない。

「真王竜剣術・裏之一……獅子戦吼!」

 ゼノアスの痛烈な一撃が炸裂して、ジャガーノートがわずかに怯んだ。
 わずかでもあの巨体を怯ませることができるなんて、とんでもない力だ。

 僕、よく勝てたなあ……

「どうして二人がここに?」
「それはもちろん、愛するフェイトのためだよ♪」
「心配するな。巫女達はアルマリアと名乗る者に預けておいた」

 よかった、アルマリアさんは無事だったんだ。

 なら、エリンやクリフも無事だろう。
 敵の本拠地からジャガーノートが現れたから、もしかしたら……なんて心配をしていたけど、大丈夫そうだ。

「騎士団が出撃準備を整えている」
「冒険者達も全員、動くみたいだよ」
「援軍は頼もしいけど、街を放っておいて大丈夫なのかな……?」

 黎明の同盟の幹部は撃破した。
 こうして、二人は味方になってくれている。

 でも、構成員を全て倒したわけじゃない。
 この機会に……という可能性があるはずだ。

「大丈夫、大丈夫。ボク達が偽の命令を出して混乱させておいたからね。今すぐにどうこう、ってことはないと思うよ」
「俺とレナの裏切りは知らないからな。ほとんどの構成員は偽の命令を信じただろう」
「ありがとう」

 僕は一人じゃない。
 いつもソフィアが隣にいてくれた。
 リコリスが笑顔をくれて、アイシャが癒やしをくれて、スノウが勇気をくれた。

 でも、それだけじゃない。

 レナやゼノアスと分かり合うことができた。
 その他、たくさんの人と知り合い、同じように理解することができた。

「そうだ……僕は、みんなと一緒にいる!」

 さらに自信ができた。
 それに比例して、不思議な力が湧いてくる。

 まだやれる。
 これからだ。
 どれだけ強大な敵だとしても、負けることは絶対にない。

 絶対に。

「よし、いこう!」



――――――――――



 なぜだ?

 ジャガーノートは困惑していた。

 ジャガーノートは圧倒的な力を持つ。
 人間なんて、戯れの一撃で粉々にすることができる。
 どれだけ鍛え上げられた剣も弾くことができる。

 自分は圧倒的な強者だ。
 敵う者なんていない。

 そのことは相手も理解しているはず。
 なのに、人間達は諦めない。
 仲間を呼び、愚かな反抗を続けている。
 それに意味なんてない、果てに待つのは死だけだというのに、戦い続けている。

 どうして?
 どうして?
 どうして?

「……理解できヌ」

 彼らの行いを理解できないのは、ジャガーノートが遥か昔にその感情を捨てたから。
 だから理解することができず、彼らの行いを無駄と断じてしまう。

 実際はそんなことはない。
 少しずつではあるが、彼らの剣はジャガーノートに届いていた。

 ジャガーノートが理解できず、昔、捨てたもの……
 その名を『希望』という。