「ソフィア、大丈夫?」
「はい、なんとか……」

 ソフィアに手を貸した。
 ややふらついているものの、顔色は悪くない。
 ポーションを飲んだおかげだろう。

「私でも無理だったゼノアスを倒してしまうなんて……」
「違うよ」
「え?」
「倒した、じゃなくて、勝った……だよ」
「……」

 ソフィアは目を丸くして、

「ふふ」

 小さく笑う。

「そうですね。倒しただと殺した、と同じ意味になりますからね。だから、勝った……なるほど。私では無理で、フェイトだからこそできたこと。その理由を少し理解することができました」
「?」
「おーい」

 ふと、明るい声が聞こえてきた。
 レナだ。
 途中でふらりと姿を消したけど、いったいどこに行っていたのだろう?

「レナ、いったいどこに……って、うわぁあああ!?」
「ちょ、乙女を見るなり悲鳴をあげるとかひどくない?」
「いや、だって……」

 あちらこちらに怪我をしているらしく、全身、血まみれだ。
 ちょっとしたホラー。

「だ、大丈夫なの……?」
「大丈夫、大丈夫。半分くらいは返り血だから」

 それじゃあ、残り半分はレナの血ということになる。

「た、大変だ。ほら、ポーション。飲んで!」
「え? あ、うん」

 言われるままレナはポーションを飲んだ。

「ふぅ……ちょっと楽になったかも。ありがと、フェイト♪」
「大丈夫なの……?」
「本当に平気だから。ボク、これくらいの怪我は慣れているからね。日常茶飯事だし。ね、ゼノアス?」
「そうだな」

 ゼノアスがいることを不思議に思うことなく、気軽に声をかけていた。

「俺達にとって、これくらいの怪我は当たり前のことだ」
「そうそう。血が流れない日なんてなかったし、定期的に骨を折っていたからねー。ほんと、大したことないんだ」

 さらりとえぐい話をしないでほしい。

「ところで、なんでゼノアスがここに?」
「剣聖と戦い、次にフェイトと……勝負をした」
「ふぇ?」
「そして、負けた」
「えぇえええええ!?」

 マイペースを貫いていたレナだけど、ここで思い切り驚いた。

「え、嘘。マジ? フェイトってば、ゼノアスに勝ったの……?」
「あ、うん。一応」
「すごぉ……」

 心底驚いている様子で、レナは呆然とつぶやいた。
 それだけ驚きが大きのだろう。

 でも、よくわかる。
 ゼノアスはとんでもない強敵で、勝てたのが不思議なくらいだ。

「さすがフェイト! ボクでもできないことをやってのけちゃうなんて、うんうん、ますます惚れちゃった♪」
「やめなさい」
「ぶーぶー、ちょっとくらい、いいじゃん」

 僕に抱きつこうとしたレナがソフィアに阻止されて拗ねた。

「それよりも、レナはどこでなにをしていたんですか?」
「ん? えっと……場所はよくわからないけど、リケンと戦ってた。あ、リケンっていうのは黎明の同盟の幹部の一人だよん」

 さらりと重大なことを言う。

「そ、それで結果は……?」
「見ればわかるでしょ? ボクがここにいるっていうことは、ボクの勝ち。いえい、ぶい♪」
「さすがというか、なんというか……」
「あれ? ちょっとまって」

 レナがリケンを倒したということは……

「ゼノアスに勝って。レナは、そもそも僕達の味方。なら……黎明の同盟の幹部は全滅した、っていうこと?」