「がんばってください」

 ソフィアの応援が聞こえた。

 ゼノアスとの戦いで体のあちらこちらが悲鳴を上げていたけど……
 うん。
 まだがんばることができる。
 力と勇気が湧いてきて、今まで以上に強く剣撃を放つ。

「くっ……ここに来て、さらに加速するか!」
「もう二度と負けられないんだ!」

 大事な人を守りたい。
 そして、この人を超えたい。

 二つの想いが僕を強くする。

 今まで越えることができなかった壁。
 なかなか気づくことはできなかったけど、行く手を塞いでいた壁。
 それは、ソフィアと同じ『剣聖』のレベルに繋がる領域。

 そこに今。
 僕は到達していた。

「あなたに、勝つ!」
「そのような結末を認めると思うか!?」

 ゼノアスが全身から圧倒的な闘気を放つ。

「吠えろ、グラム!!!」

 魔剣が不気味に輝いた。
 嫌な気配を受けて、それと同時に、天災と相対したかのような『力』を感じた。

 魔剣の力を完全に引き出した状態で戦う。
 正真正銘、これがゼノアスの本気だろう。

 でも……

「俺の剣に断てないものはないっ!!!」
「……ううん」

 僕は静かに彼の言葉を、想いを……生きてきて積み重ねてきたものを否定した。

「今のあなたの剣は怖くない」
「なっ……!?」

 ゼノアスの全力の一撃。

 それは山を断つ。
 海を割る。

 それだけの威力が込められていたけど……
 僕は、それをしっかりと受け止めた。

 流星の剣が折れることはない。
 なんとか耐えてくれている。
 僕の体が壊れることもなくて、こちらも耐えていた。

「なぜだ!? なぜ、俺の剣が届かない!? 受け止めることができる!!!」
「言ったよね? 今のあなたの剣は怖くない、って」

 さっきまで、ゼノアスはとても大きく見えた。
 超えることができない山のように、果てしなく大きく見えた。

 でも、今は小さい。
 とても小さく、儚く、脆い。

 それはなぜか?
 魔剣という歪な力にすがったからだ。

「僕の剣は、あなたとは違う」

 リコリスの、アイシャの、スノウの……たくさんの人の想いが込められている。
 そして、剣を通じてソフィアの想いを感じる。

 そうだ。
 この剣は希望でできている。
 ならば、負の怨念で作られた魔剣に負けることはない。

「僕はあなたに勝って、大事なものを守る! どこまでも!!!」
「ぐっ!?」

 ゼノアスの腹部に蹴りを叩き込んだ。
 これでトドメとはならないものの、ダメージは通り、ゼノアスはわずかに体勢を崩す。

 その隙を逃すことなく、僕は剣を構える。
 天を突くように大上段に構えて……

「神王竜剣術、壱之太刀……破山っ!!!」

 そして、一気に振り下ろした。