「どういうつもり?」
「考え直せ、と言っている」
リケンは手を差し出したまま、静かに言う。
そんな彼の思惑がわからなくて、レナは混乱してしまう。
リケンは同盟の幹部の中で一番合理的な考えをする。
必要なものは大事にして、必要でないものはあっさりと切り捨てる。
今、レナは必要ないものだろう。
同盟を裏切り、敵対までした。
やっぱりやめた、なんて言っても失った信頼は元に戻らない。
また裏切るのでは? という疑念も消えない。
そんな相手を同盟に連れ戻す意味なんてない。
利益もない。
それなのに、どうしてリケンは自分を連れ戻そうとするのか?
リケンらしからぬ言動に混乱して、レナはどうしていいかわからず、動きを止めてしまう。
「儂の言葉を疑うか?」
「そりゃね。罠って考えた方がしっくりくるよ」
「確かに」
疑われても仕方ないという自覚はあるらしく、リケンは苦笑した。
「しかし、嘘は吐いていない。なによりも罠を仕掛ける意味がないだろう?」
「それは……」
現状、リケンは圧倒的に優勢だ。
わざわざ罠を張る意味がない。
レナを同盟に連れ戻して、改めて処分する。
そして魔剣を奪う。
……なんて可能性をレナは考えたけれど、しかし、それはそれで手間がかかりすぎて意味がないと判断した。
だとしたら本当に?
裏切りを帳消しにしてしまうくらい、自分を必要としている?
レナはリケンの真意を確かめるべく、言葉を重ねる。
「どうしてそこまでボクのことを?」
「貴重な人材だ。すぐに切り捨ててしまうのは惜しい」
「……どういう意味で貴重なの?」
「才能だな」
「才能?」
「魔剣は誰にでも扱えるものではない。国で一番の強者だとしても、適性がなければ魔剣を扱うことはできぬ。その点、お主は別格じゃ」
適性の話はレナも知っていた。
魔剣は呪いの剣。
過去に虐げられた聖獣の憎悪が元になっている。
故に、普通の者が手にすれば蝕まれ、発狂してしまうだろう。
あるいは力に酔い、我を失って暴走するか……
どちらにしてもロクな結末にならない。
しかし、適性がある者は別だ。
魔剣をリスクなしに扱えるだけではなくて、その力を100パーセント発揮することができる。
レナは、リケンもゼノアスも制御することができなかったティルフィングの適合者になった。
ティルフィングの力に飲み込まれることはなくて、きちんと制御してみせて。
いや。
完全にコントロールして、支配下において、120パーセントを出すことに成功した。
それは彼女の血が為せる技だ。
レナの両親は、共に同盟に所属していて……
そして、祖父母もその親も、またその親も……
遥か昔から続く血の継承者なのだ。
始まりの者の血を引いている。
だからこその力、適合力なのだ。
「その力、ここで刈り取るのは惜しい」
「……」
「儂らがするべきことを思い出せ。使命を心に刻み込め」
「……」
「虐げられた我らが主の無念を晴らすのだ。そのための剣となる……それこそが、儂らのするべきことだろう?」
「そっか」
リケンの話を聞いて、レナは悟る。
やはり、自分の居場所は同盟ではない……と。
リケンは語る。
レナの力が必要だと。
その力をもって復讐を果たせ、と。
しかし、フェイトはまったく別のことを語った。
力とかどうでもいい。
それよりも友達になってほしい、と。
「これ……比べるまでもない問題だよね」
レナは笑い、立ち上がる。
血は流れているが、でも、痛みはもう感じなかった。
「考え直せ、と言っている」
リケンは手を差し出したまま、静かに言う。
そんな彼の思惑がわからなくて、レナは混乱してしまう。
リケンは同盟の幹部の中で一番合理的な考えをする。
必要なものは大事にして、必要でないものはあっさりと切り捨てる。
今、レナは必要ないものだろう。
同盟を裏切り、敵対までした。
やっぱりやめた、なんて言っても失った信頼は元に戻らない。
また裏切るのでは? という疑念も消えない。
そんな相手を同盟に連れ戻す意味なんてない。
利益もない。
それなのに、どうしてリケンは自分を連れ戻そうとするのか?
リケンらしからぬ言動に混乱して、レナはどうしていいかわからず、動きを止めてしまう。
「儂の言葉を疑うか?」
「そりゃね。罠って考えた方がしっくりくるよ」
「確かに」
疑われても仕方ないという自覚はあるらしく、リケンは苦笑した。
「しかし、嘘は吐いていない。なによりも罠を仕掛ける意味がないだろう?」
「それは……」
現状、リケンは圧倒的に優勢だ。
わざわざ罠を張る意味がない。
レナを同盟に連れ戻して、改めて処分する。
そして魔剣を奪う。
……なんて可能性をレナは考えたけれど、しかし、それはそれで手間がかかりすぎて意味がないと判断した。
だとしたら本当に?
裏切りを帳消しにしてしまうくらい、自分を必要としている?
レナはリケンの真意を確かめるべく、言葉を重ねる。
「どうしてそこまでボクのことを?」
「貴重な人材だ。すぐに切り捨ててしまうのは惜しい」
「……どういう意味で貴重なの?」
「才能だな」
「才能?」
「魔剣は誰にでも扱えるものではない。国で一番の強者だとしても、適性がなければ魔剣を扱うことはできぬ。その点、お主は別格じゃ」
適性の話はレナも知っていた。
魔剣は呪いの剣。
過去に虐げられた聖獣の憎悪が元になっている。
故に、普通の者が手にすれば蝕まれ、発狂してしまうだろう。
あるいは力に酔い、我を失って暴走するか……
どちらにしてもロクな結末にならない。
しかし、適性がある者は別だ。
魔剣をリスクなしに扱えるだけではなくて、その力を100パーセント発揮することができる。
レナは、リケンもゼノアスも制御することができなかったティルフィングの適合者になった。
ティルフィングの力に飲み込まれることはなくて、きちんと制御してみせて。
いや。
完全にコントロールして、支配下において、120パーセントを出すことに成功した。
それは彼女の血が為せる技だ。
レナの両親は、共に同盟に所属していて……
そして、祖父母もその親も、またその親も……
遥か昔から続く血の継承者なのだ。
始まりの者の血を引いている。
だからこその力、適合力なのだ。
「その力、ここで刈り取るのは惜しい」
「……」
「儂らがするべきことを思い出せ。使命を心に刻み込め」
「……」
「虐げられた我らが主の無念を晴らすのだ。そのための剣となる……それこそが、儂らのするべきことだろう?」
「そっか」
リケンの話を聞いて、レナは悟る。
やはり、自分の居場所は同盟ではない……と。
リケンは語る。
レナの力が必要だと。
その力をもって復讐を果たせ、と。
しかし、フェイトはまったく別のことを語った。
力とかどうでもいい。
それよりも友達になってほしい、と。
「これ……比べるまでもない問題だよね」
レナは笑い、立ち上がる。
血は流れているが、でも、痛みはもう感じなかった。