「条件があります」
「条件?」
ソフィアが小首を傾げる中、アルマリアは話を続ける。
「今回の事件、公にすることは避けてください」
「それは……」
「事件の詳細、黎明の同盟の細部が公になれば大きな混乱が生まれるでしょう。下手をしたら、第二の黎明の同盟が生まれるかもしれません。それだけは絶対に避けなくてはいけません」
アルマリアの言うことはもっともだ。
これから起きるかもしれない事件を回避する。
混乱を避けたい。
そう思うのは自然のこと。
しかし、ソフィアはすぐに納得できないでいた。
そもそもの話、根本的な原因を辿ると、人間の愚かな所業が原因なのだ。
それを隠して都合よくしてしまうなんて、アリなのだろうか?
それは臭いものに蓋をしているだけではないか?
全ての事実を公にする。
その上で、これからのことを真摯に考えていく。
そうしなければ、いつかまた同じ過ちを繰り返すかもしれない。
「アスカルトさんの懸念は理解できます」
ソフィアが難しい顔をしていると、アルマリアがそれを察して言う。
「ただ、誰も彼もあなたのように考えることはできません。自分の都合のいいように物事を解釈したり、都合の悪いことは耳にしなかったり、そういう人はたくさんいます」
「それは……そうですね」
そういう人種にソフィアも心当たりがある。
フェイトを奴隷にしていたフレアバードのメンバー。
アイシャを利用しようとしたドクトル。
他、何人もの顔が思い浮かぶ。
いずれもアルマリアが懸念するような人物だ。
「そういう人達に今回の件を利用される可能性もあります。そうなれば、どれだけの被害になるか……」
「そう、ですね……」
「もちろん、永遠に事件を葬るつもりはありません。少しずつ地盤を固めていき、機会を見て問題を投げかけたいと思います。ただ今は……」
「時期尚早、ということですね?」
「はい」
「……わかりました。そういうことなら約束します」
納得できないところはある。
でも、問題を解決するためには仕方ないと、ソフィアは大人の選択をした。
(こういう時、フェイトならどうしたでしょうね……?)
フェイトなら大人の選択をしないかもしれない。
どこまでもまっすぐに問題に取り組んでいたかもしれない。
そう思うと、少し寂しくなった。
「では、冒険者ギルドも協力していただけると?」
成り行きを見守っていたエリンが静かに問いかけた。
「はい、条件を守っていただけるのなら問題ありません。それに……この問題を放置したら、それこそ王都がなくなってしまうかもしれませんからね」
アルマリアは冗談めかして言うものの、誰一人笑わない。
それが現実のものになってしまう可能性があると知っているからだ。
「んー、味方が増えたのはいいけど、結局、これからどうするの?」
レナが問いかける。
その瞳にはちょっとした不満の色があった。
フェイトの安否がおざなりにされているからだろう。
「敵の本拠地は判明しました。すぐに準備を整えて、攻撃をするべきかと」
エリンの堅実的な案に、アルマリアが賛成するように頷いた。
「攻撃については私も賛成ですが……」
「は?」
ソフィアも賛成を示して、レナが険を含んだ表情になる。
「ただ、私はアイシャちゃんとスノウを守らないといけません」
「あれ、あたしは?」
「だから、私は参加できません」
「ちょっと、フェイトはどうするの? まさか、見捨てるつもり? そんなのボクが……」
「レナ、あなたにお願いしてもいいですか?」
「へ」
思わぬ話を聞いたという感じで、レナが目を大きくして驚いた。
「私は……悔しいですが、今は動くことはできません。フェイトがどうなったか、調べることができるのはレナだけです。だから……どうか、フェイトをお願いします」
「……まったく、仕方ないなあ。そういうことならボクに任せておいてよ!」
レナはため息をこぼして、小さな笑みを浮かべるのだった。
「条件?」
ソフィアが小首を傾げる中、アルマリアは話を続ける。
「今回の事件、公にすることは避けてください」
「それは……」
「事件の詳細、黎明の同盟の細部が公になれば大きな混乱が生まれるでしょう。下手をしたら、第二の黎明の同盟が生まれるかもしれません。それだけは絶対に避けなくてはいけません」
アルマリアの言うことはもっともだ。
これから起きるかもしれない事件を回避する。
混乱を避けたい。
そう思うのは自然のこと。
しかし、ソフィアはすぐに納得できないでいた。
そもそもの話、根本的な原因を辿ると、人間の愚かな所業が原因なのだ。
それを隠して都合よくしてしまうなんて、アリなのだろうか?
それは臭いものに蓋をしているだけではないか?
全ての事実を公にする。
その上で、これからのことを真摯に考えていく。
そうしなければ、いつかまた同じ過ちを繰り返すかもしれない。
「アスカルトさんの懸念は理解できます」
ソフィアが難しい顔をしていると、アルマリアがそれを察して言う。
「ただ、誰も彼もあなたのように考えることはできません。自分の都合のいいように物事を解釈したり、都合の悪いことは耳にしなかったり、そういう人はたくさんいます」
「それは……そうですね」
そういう人種にソフィアも心当たりがある。
フェイトを奴隷にしていたフレアバードのメンバー。
アイシャを利用しようとしたドクトル。
他、何人もの顔が思い浮かぶ。
いずれもアルマリアが懸念するような人物だ。
「そういう人達に今回の件を利用される可能性もあります。そうなれば、どれだけの被害になるか……」
「そう、ですね……」
「もちろん、永遠に事件を葬るつもりはありません。少しずつ地盤を固めていき、機会を見て問題を投げかけたいと思います。ただ今は……」
「時期尚早、ということですね?」
「はい」
「……わかりました。そういうことなら約束します」
納得できないところはある。
でも、問題を解決するためには仕方ないと、ソフィアは大人の選択をした。
(こういう時、フェイトならどうしたでしょうね……?)
フェイトなら大人の選択をしないかもしれない。
どこまでもまっすぐに問題に取り組んでいたかもしれない。
そう思うと、少し寂しくなった。
「では、冒険者ギルドも協力していただけると?」
成り行きを見守っていたエリンが静かに問いかけた。
「はい、条件を守っていただけるのなら問題ありません。それに……この問題を放置したら、それこそ王都がなくなってしまうかもしれませんからね」
アルマリアは冗談めかして言うものの、誰一人笑わない。
それが現実のものになってしまう可能性があると知っているからだ。
「んー、味方が増えたのはいいけど、結局、これからどうするの?」
レナが問いかける。
その瞳にはちょっとした不満の色があった。
フェイトの安否がおざなりにされているからだろう。
「敵の本拠地は判明しました。すぐに準備を整えて、攻撃をするべきかと」
エリンの堅実的な案に、アルマリアが賛成するように頷いた。
「攻撃については私も賛成ですが……」
「は?」
ソフィアも賛成を示して、レナが険を含んだ表情になる。
「ただ、私はアイシャちゃんとスノウを守らないといけません」
「あれ、あたしは?」
「だから、私は参加できません」
「ちょっと、フェイトはどうするの? まさか、見捨てるつもり? そんなのボクが……」
「レナ、あなたにお願いしてもいいですか?」
「へ」
思わぬ話を聞いたという感じで、レナが目を大きくして驚いた。
「私は……悔しいですが、今は動くことはできません。フェイトがどうなったか、調べることができるのはレナだけです。だから……どうか、フェイトをお願いします」
「……まったく、仕方ないなあ。そういうことならボクに任せておいてよ!」
レナはため息をこぼして、小さな笑みを浮かべるのだった。