「おとーさん、おとーさん」
「どうしたの?」
「えっとね、あのね……絵本、読んでほしい」
「うん、いいよ。こっちにおいで」
「えへへ♪」
アイシャは嬉しそうに尻尾を振りつつ、僕の膝の上に座る。
彼女から絵本を受け取り、朗読を始めた。
「むかしむかし、あるところに一匹の狼がいました」
「わくわく」
……黎明の同盟のアジトを探さなければいけない。
最も怪しいのは共同墓地。
そこをエリンと一緒に調べることになったものの、それはソフィアとレナが担当することに。
ただ、僕はアイシャ達と一緒に宿で留守番だ。
アイシャとスノウは狙われている。
そんな中、二人から離れるわけにはいかない。
そこで僕が残ることになった、というわけだ。
「ねえねえ」
ふわりと、リコリスが僕の頭の上に舞い降りた。
ポリポリとクッキーを食べている。
欠片が落ちてくるから、やめてほしいんだけど……
「待っているだけなんて、退屈なんですけど」
「仕方ないよ。僕達までアイシャとスノウから離れるわけにはいかないし」
「んー……でも、ここ最近、あたしずっと留守番じゃない? ウルトラミラクルマジカルリリックハートフルワンダースペシャルホリデーライフリコリスちゃんを何度も置いていくなんて、おかしくない?」
それは、リコリスが場をかき乱すかもしれない、と思われているからでは?
……なんてことを思ったものの、それは口にしないでおいた。
「共同墓地は、もしかしたら黎明の同盟の本拠地かもしれないからね。今までとは危険度が段違いだから、仕方ないよ」
「でも、このあたしなら、どんなトラブルも乗り越えられると思わない? 悪人なんて、このリコリスちゃんパンチで滅殺よ」
言葉がとても物騒だ。
「えっと……ほら。それだけ強いリコリスだからこそ、ここを任されているんだよ」
「ん? どゆこと?」
「アイシャとスノウは狙われているでしょう? そして、二人がさらわれたら、たぶん、とんでもないことになる」
アイシャは巫女で、スノウは神獣。
その力を悪用されたら、とんでもない魔剣が生み出されるかも……いや。
魔剣なんかでは収まらない『災厄』が起きるかもしれない。
「だから、二人を守ることの方が大事なんだ。その大事な任務を果たすには……」
「あたしの力が必要、っていうわけね!?」
「そういうこと」
「ふふーん、そこまで頼りにされているのなら仕方ないわね。このスーパー……」
「おとーさん、続き!」
「オンッ!」
「あ、ごめんごめん。えっと……」
「……」
アイシャとスノウを優先したら、リコリスが涙目になっていた。
えっと……ごめん。
でも、妙な名乗りを聞くよりも、二人のお願いを聞く方が優先度は高いと思うんだ。
「続きは……っ!?」
絵本を読もうとして、不意に寒気のようなものを感じた。
背中を突き刺されるかのような、強烈なプレッシャー。
まだなにも起きていないのに、自然と手が震えてしまう。
「おとーさん?」
「オフ?」
「……アイシャ、スノウ。僕の後ろに」
「う、うん……」
アイシャとスノウは困惑しつつ、しかし、素直に僕の後ろに隠れてくれた。
その間に剣を取り、いつでも抜けるように構える。
「リコリス、これは……」
「ええ……敵ね」
リコリスは軽口を叩くことなく、汗を流していた。
これだけ余裕がないリコリスは初めて見るような気がする。
廊下の方から足音が響いてきた。
ゆっくりとした足音。
それはまっすぐこの部屋に向かってきて……
「邪魔をする」
ドアノブを強引に回して鍵を壊して、一人の男が姿を見せた。
「どうしたの?」
「えっとね、あのね……絵本、読んでほしい」
「うん、いいよ。こっちにおいで」
「えへへ♪」
アイシャは嬉しそうに尻尾を振りつつ、僕の膝の上に座る。
彼女から絵本を受け取り、朗読を始めた。
「むかしむかし、あるところに一匹の狼がいました」
「わくわく」
……黎明の同盟のアジトを探さなければいけない。
最も怪しいのは共同墓地。
そこをエリンと一緒に調べることになったものの、それはソフィアとレナが担当することに。
ただ、僕はアイシャ達と一緒に宿で留守番だ。
アイシャとスノウは狙われている。
そんな中、二人から離れるわけにはいかない。
そこで僕が残ることになった、というわけだ。
「ねえねえ」
ふわりと、リコリスが僕の頭の上に舞い降りた。
ポリポリとクッキーを食べている。
欠片が落ちてくるから、やめてほしいんだけど……
「待っているだけなんて、退屈なんですけど」
「仕方ないよ。僕達までアイシャとスノウから離れるわけにはいかないし」
「んー……でも、ここ最近、あたしずっと留守番じゃない? ウルトラミラクルマジカルリリックハートフルワンダースペシャルホリデーライフリコリスちゃんを何度も置いていくなんて、おかしくない?」
それは、リコリスが場をかき乱すかもしれない、と思われているからでは?
……なんてことを思ったものの、それは口にしないでおいた。
「共同墓地は、もしかしたら黎明の同盟の本拠地かもしれないからね。今までとは危険度が段違いだから、仕方ないよ」
「でも、このあたしなら、どんなトラブルも乗り越えられると思わない? 悪人なんて、このリコリスちゃんパンチで滅殺よ」
言葉がとても物騒だ。
「えっと……ほら。それだけ強いリコリスだからこそ、ここを任されているんだよ」
「ん? どゆこと?」
「アイシャとスノウは狙われているでしょう? そして、二人がさらわれたら、たぶん、とんでもないことになる」
アイシャは巫女で、スノウは神獣。
その力を悪用されたら、とんでもない魔剣が生み出されるかも……いや。
魔剣なんかでは収まらない『災厄』が起きるかもしれない。
「だから、二人を守ることの方が大事なんだ。その大事な任務を果たすには……」
「あたしの力が必要、っていうわけね!?」
「そういうこと」
「ふふーん、そこまで頼りにされているのなら仕方ないわね。このスーパー……」
「おとーさん、続き!」
「オンッ!」
「あ、ごめんごめん。えっと……」
「……」
アイシャとスノウを優先したら、リコリスが涙目になっていた。
えっと……ごめん。
でも、妙な名乗りを聞くよりも、二人のお願いを聞く方が優先度は高いと思うんだ。
「続きは……っ!?」
絵本を読もうとして、不意に寒気のようなものを感じた。
背中を突き刺されるかのような、強烈なプレッシャー。
まだなにも起きていないのに、自然と手が震えてしまう。
「おとーさん?」
「オフ?」
「……アイシャ、スノウ。僕の後ろに」
「う、うん……」
アイシャとスノウは困惑しつつ、しかし、素直に僕の後ろに隠れてくれた。
その間に剣を取り、いつでも抜けるように構える。
「リコリス、これは……」
「ええ……敵ね」
リコリスは軽口を叩くことなく、汗を流していた。
これだけ余裕がないリコリスは初めて見るような気がする。
廊下の方から足音が響いてきた。
ゆっくりとした足音。
それはまっすぐこの部屋に向かってきて……
「邪魔をする」
ドアノブを強引に回して鍵を壊して、一人の男が姿を見せた。