「じゃあ、幹部の話をするね?」
レナは、ちょっと得意そうな顔をした。
教師の真似事をできるのが楽しいんだと思う。
「幹部はボクを除いて二人。一人は、リケンっていうおじいちゃん。いつから黎明の同盟にいるかわからないけど、一番の古参かな? おじいちゃんだけど、侮ったらダメ。剣の腕はかなりのもので、ボクのちょい下くらい?」
「なら、大したことはありませんね」
「……大したことないか、今、証明しようか?」
「ふふ、私は構いませんよ」
「ストップストップ!」
ソフィアとレナがいきなり火花を散らし始めたので、慌てて止めた。
仲が悪いのかな?
それとも相性の問題?
「もう、話の邪魔しないでよね」
レナは頬を膨らませつつ、話の続きをする。
「リケンはそこそこ強いけど、それ以上に悪知恵が働くんだ。参謀? 的な役割で、けっこう厄介だと思う」
「剣の腕よりも知略に優れている……確かに厄介だね」
「もう一人は、ゼノアスっていう男。歳は、うーん……30くらいかな? ちゃんと確認したことないから、よくわからないや。ゼノアスは、ボク以上に戦闘に特化してて、戦うこと以外は興味ないっていう感じ。巨大な魔剣を軽々と扱い、千人以上の敵を一人で相手することができる……文字通り、一騎当千」
そう語るレナは、ちょっと緊張している様子だった。
彼女にこんな顔をさせるなんて、ゼノアスっていう人は語る以上の化け物なのだろう。
「で、肝心の長老だけど……ボク、ほとんど知らないんだよね。さっきも言ったけど、あまり会ったことがなくて……っていうか、話をする時も魔法を使っていたりで、直接、顔を見たことがないんだ」
「性別や歳は?」
「たぶん、女性かな? 歳は……うーん、若いようで、でも歳をとっているようにも思えて、なんともいえない」
レナはとても困った様子だ。
本当になにも知らないのだろう。
「アジトについて、なにか知りませんか?」
エリンがそう尋ねた。
レナが、むむむと眉を寄せる。
「うーん……セーフハウスを除外して、ボロいところも除外して……色々検証すれば、ある程度は絞れると思う。ただ、ボクが離れている間にアジトが追加されているかもしれないから、そこはなんとも」
「それでも、今は他になにも手がかりがないから、教えてくれないかな?」
「うん、いいよ。フェイトの頼みだもんね、えへへ♪」
「デレデレしないでください」
ソフィアが剣を抜きそうな……というか、柄に手を伸ばしていた。
やめて。
気持ちはわからないでもないけど、レナは、とても重要な協力者だから。
「んー……」
レナは地図をじっと見て考える。
ややあって、三箇所を指さした。
「北の地下水路。港に面した倉庫。共同墓地。ボクが知っている限りでは、この三つが可能性が高いかな?」
黎明の同盟の本部となれば、大量の構成員を抱えている。
貴重な魔剣も複数保管されている。
故に、セーフハウスをアジトにすることはない。
除外。
小さい場所を拠点として活動することも難しい。
除外。
……そうやって、消去法でこの三つが残ったらしい。
「それでも、三つもあるんだよね……」
「これ以外のどこか、という可能性もありますね……まったく。元幹部というのに、役に立たないですね」
「さっきから、ちょっとボクに対する当たり強くない?」
「色々な意味でライバルなので、今から牽制しているだけですよ」
「むう……隙あればフェイトの唇を奪おうと思っているだけなのに」
「絶対にダメです!」
「ケチ」
「……」
子供みたいなやりとりをする二人の横で、エリンが難しい表情をしてなにか考えていた。
さきほどのレナと同じように、じっと地図を見つめている。
「どうしたんですか?」
「共同墓地……ここにアジトがあるかもしれない、というのは確かな話ですか?」
「幹部や長老がいるか、それはわからないよ? ただ、アジトがあるのはホント。ここ、ボクも何度か利用したことあるもん」
「ただの墓地なのに?」
「広大な地下室があるんだよ。墓地って、夜は人が来ないでしょ? だから、隠れるのにはけっこううってつけなんだよねー」
「なるほど」
納得した様子でエリンが頷いた。
「なにか心当たりが?」
「我々もいくらか当たりをつけていて……その一つが、この共同墓地なのです」
「それじゃあ……!」
「はい、調べてみる価値はあるかと」
共同墓地が黎明の同盟のアジトなのか?
そこで何が待ち受けているのか?
この時の僕は……まだ、なにも知らない。
レナは、ちょっと得意そうな顔をした。
教師の真似事をできるのが楽しいんだと思う。
「幹部はボクを除いて二人。一人は、リケンっていうおじいちゃん。いつから黎明の同盟にいるかわからないけど、一番の古参かな? おじいちゃんだけど、侮ったらダメ。剣の腕はかなりのもので、ボクのちょい下くらい?」
「なら、大したことはありませんね」
「……大したことないか、今、証明しようか?」
「ふふ、私は構いませんよ」
「ストップストップ!」
ソフィアとレナがいきなり火花を散らし始めたので、慌てて止めた。
仲が悪いのかな?
それとも相性の問題?
「もう、話の邪魔しないでよね」
レナは頬を膨らませつつ、話の続きをする。
「リケンはそこそこ強いけど、それ以上に悪知恵が働くんだ。参謀? 的な役割で、けっこう厄介だと思う」
「剣の腕よりも知略に優れている……確かに厄介だね」
「もう一人は、ゼノアスっていう男。歳は、うーん……30くらいかな? ちゃんと確認したことないから、よくわからないや。ゼノアスは、ボク以上に戦闘に特化してて、戦うこと以外は興味ないっていう感じ。巨大な魔剣を軽々と扱い、千人以上の敵を一人で相手することができる……文字通り、一騎当千」
そう語るレナは、ちょっと緊張している様子だった。
彼女にこんな顔をさせるなんて、ゼノアスっていう人は語る以上の化け物なのだろう。
「で、肝心の長老だけど……ボク、ほとんど知らないんだよね。さっきも言ったけど、あまり会ったことがなくて……っていうか、話をする時も魔法を使っていたりで、直接、顔を見たことがないんだ」
「性別や歳は?」
「たぶん、女性かな? 歳は……うーん、若いようで、でも歳をとっているようにも思えて、なんともいえない」
レナはとても困った様子だ。
本当になにも知らないのだろう。
「アジトについて、なにか知りませんか?」
エリンがそう尋ねた。
レナが、むむむと眉を寄せる。
「うーん……セーフハウスを除外して、ボロいところも除外して……色々検証すれば、ある程度は絞れると思う。ただ、ボクが離れている間にアジトが追加されているかもしれないから、そこはなんとも」
「それでも、今は他になにも手がかりがないから、教えてくれないかな?」
「うん、いいよ。フェイトの頼みだもんね、えへへ♪」
「デレデレしないでください」
ソフィアが剣を抜きそうな……というか、柄に手を伸ばしていた。
やめて。
気持ちはわからないでもないけど、レナは、とても重要な協力者だから。
「んー……」
レナは地図をじっと見て考える。
ややあって、三箇所を指さした。
「北の地下水路。港に面した倉庫。共同墓地。ボクが知っている限りでは、この三つが可能性が高いかな?」
黎明の同盟の本部となれば、大量の構成員を抱えている。
貴重な魔剣も複数保管されている。
故に、セーフハウスをアジトにすることはない。
除外。
小さい場所を拠点として活動することも難しい。
除外。
……そうやって、消去法でこの三つが残ったらしい。
「それでも、三つもあるんだよね……」
「これ以外のどこか、という可能性もありますね……まったく。元幹部というのに、役に立たないですね」
「さっきから、ちょっとボクに対する当たり強くない?」
「色々な意味でライバルなので、今から牽制しているだけですよ」
「むう……隙あればフェイトの唇を奪おうと思っているだけなのに」
「絶対にダメです!」
「ケチ」
「……」
子供みたいなやりとりをする二人の横で、エリンが難しい表情をしてなにか考えていた。
さきほどのレナと同じように、じっと地図を見つめている。
「どうしたんですか?」
「共同墓地……ここにアジトがあるかもしれない、というのは確かな話ですか?」
「幹部や長老がいるか、それはわからないよ? ただ、アジトがあるのはホント。ここ、ボクも何度か利用したことあるもん」
「ただの墓地なのに?」
「広大な地下室があるんだよ。墓地って、夜は人が来ないでしょ? だから、隠れるのにはけっこううってつけなんだよねー」
「なるほど」
納得した様子でエリンが頷いた。
「なにか心当たりが?」
「我々もいくらか当たりをつけていて……その一つが、この共同墓地なのです」
「それじゃあ……!」
「はい、調べてみる価値はあるかと」
共同墓地が黎明の同盟のアジトなのか?
そこで何が待ち受けているのか?
この時の僕は……まだ、なにも知らない。