翌朝。

「……うーん、あまり眠れた気がしない」

 昨夜遅くまで、ソフィアとレナは争っていた。
 その仲裁で心底疲れて……
 ようやく眠りにつけたのは深夜だ。
 眠れが気がしないのも当然か。

「よいしょ……っと」

 みんな、まだ寝ていた。
 最初に目を覚ましたのは僕みたいだ。

 起こしたら悪いので、そっと部屋を出る。
 そのまま外に出て、朝の新鮮な空気をいっぱいに吸う。

「んーーー……ふぅ。気持ちのいい朝だなあ」

 すでにたくさんの人が外に出ていた。

 僕と同じように、外の空気を吸いに出た人。
 ジョギングをする人。
 仕事の準備をする人。

 王都だからなのか、たくさんの人がいる。
 そして、誰もが笑顔で、今日一日をがんばろうとしていた。

 とても平和な光景だ。
 でも……

「この平和を壊そうとしている人がいるんだよね」

 黎明の同盟にも言い分はあるかもしれない。
 でも、過去の復讐に今を生きる人は関係ないはずだ。
 親の罪が子供に受け継がれるなんて、そんな話、認めたくない。

 だから……

「なんとしても守らないと」

 改めて決意を固めた。

「すみません」

 ふと、声をかけられた。
 振り返ると、見知らぬ女性が。

 歳は……二十代半ばくらいかな?
 凛とした表情と、強い意思を感じる瞳が特徴的な顔だ。

 ショートヘアーの美人。
 街を歩けば、ほとんどの男性がついつい振り返ると思う。

 鎧を身に着けて、腰に二本の剣を下げている。
 ソフィアがそうしているように、予備の剣なのかな?

「突然、失礼します。フェイト・スティアート殿でしょうか?」
「え……あ、はい。そうですけど、あなたは?」
「私は、とある騎士団に所属する者で、エリン・ラグスリートと申します」
「あ、どうもご丁寧に……フェイト・スティアートです」

 丁寧に頭を下げられて、こちらも慌てて頭を下げた。
 なんだか、取り引きをする前の商人みたいだ。

「少し、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「えっと……大丈夫です」

 出会ったばかりだけど、なんとなく、エリンは悪い人じゃないと思った。

 話をするくらいなら、と了承する。

「ありがとうございます。では、こちらへ」
「どこか移動するんですか?」
「往来でする話ではないので」
「……わかりました」

 ちょっと迷うけど、やはり了承した。

 ハッキリとした根拠はないのだけど、彼女は信じられるように気がする。
 アイシャのような、純粋な心を感じるんだよね。

「では、こちらへ」

 エリンが先導して、その後をついていって……
 そして、小さな家に到着した。
 部屋にあるのはイスとテーブルなどの最低限の家具だけ。
 殺風景なところだ。

「ここは、私達騎士団が保有するセーフハウスの一つです。普段は利用することがないためこのような内装となっていますが、ご容赦いただければ……」
「特に気にしていません。それで、話っていうのは……?」

 エリンは鋭い表情になり、そっと口を開く。

「黎明の同盟について……です」