「え?」
こんなにもあっさり拒否されるとは思ってもいなかったため、ついつい間の抜けた声が出てしまう。
さきほどの真剣な様子はどこへやら、クリフはいつもののんびりとした雰囲気に戻っていた。
そしてまた、ドーナツをぱくり。
「協力したいけどね。でも、協力できないんだ」
「それは、どういうことですか?」
「黎明の同盟は協会の内部にも入り込んでいる、って言っただろう? 下手に行動したら、彼らを警戒させてしまう。なら、なにもしない方がいい」
「なるほど……?」
理に叶っているような、叶っていないような……どっちなのだろう?
「下手に動いても潰されるだけだからねえ……なかなか動くことはできないんだよ」
「そう、ですか……」
クリフなら……と思っていただけに残念だ。
凹む。
そんな僕を見て、クリフはニヤリと笑う。
「まあまあ、早とちりしないでくれ。僕はなにも、完全に協力をしないわけじゃない」
「えっと……?」
「今はまだ動けない、っていうだけさ」
「ということは……いざという時は、力を貸してくれるんですか?」
「うん、そうだね」
クリフはにっこりと笑顔を浮かべつつ、頷いた。
こんな態度だけど、実はしっかりした人ということを知っている。
そんな彼の言葉なら信用できそうだ。
「本当なら、今すぐにでも力を貸したいんだけどね。下手に出世したせいで、色々としがらみも増えてきてねえ……はぁ、のんびりしたい」
「えっと……おつかれさまです」
「あはは、ありがとう。おっと、もうこんな時間か」
店内の時計を見てクリフが席を立つ。
「スティアート君も、すぐに行動を起こすつもりはないんだろう?」
「そうですね、たぶん」
「なら、また会おう。必要な時に呼んでほしい。王都のギルドに行って、伝言を残してくれればいいよ」
「わかりました」
「あ、それとここの会計は僕が持つよ。またね」
クリフはひらひらと手を振り、先に店の外へ出た。
「うーん……久しぶりに会ったけど、あいかわらずの人だなあ」
――――――――――
その後、一度外に出て、ソフィア達と合流。
再び宿へ戻り、そのまま部屋へ移動した。
「おーっ!」
綺麗で洒落た部屋を見て、リコリスが目をキラキラと輝かせた。
「わぁ♪」
「オンッ!」
アイシャとスノウもキラキラ笑顔だ。
大きなベッドにダイブして、ぽふんという反動を楽しんでいる。
二人共、尻尾をぶんぶんと振っていた。
ちょっと行儀が悪いけど……
楽しそうだから、まあいいか。
「良い宿ですね」
「うん。クリフに教えてもらったんだ」
「……あのギルドマスターがここに?」
「実は……」
経緯を話すと、ソフィアは難しい顔に。
「妙な偶然ですね……彼は本当に大丈夫なのでしょうか? もしかしたら、実は黎明の同盟の一員という可能性も……」
「それは考え過ぎじゃないかな? だとしたら、スタンピードを止めようなんて思わないだろうし」
「……それもそうですね。ふう。敵がすぐ近くにいるせいか、少し緊張して、過敏になっているのかもしれませんね」
ソフィアの言うことはよくわかる。
僕も似たような感覚になっていて……それと、妙に落ち着かない。
ピリピリとした雰囲気が王都全体に流れているというか……
例えるなら、壁一枚隔てた向こうに猛獣がいるような感覚だ。
「ここに黎明の同盟の本拠地があって……ちゃんと決着をつけられるのかな?」
「つけましょう。世界のためとか復讐とか、そういうのはどうでもいいですが……アイシャちゃんのために」
「うん、そうだね」
大事な人のために戦う。
理由はそれでいい。それだけあれば十分だ。
こんなにもあっさり拒否されるとは思ってもいなかったため、ついつい間の抜けた声が出てしまう。
さきほどの真剣な様子はどこへやら、クリフはいつもののんびりとした雰囲気に戻っていた。
そしてまた、ドーナツをぱくり。
「協力したいけどね。でも、協力できないんだ」
「それは、どういうことですか?」
「黎明の同盟は協会の内部にも入り込んでいる、って言っただろう? 下手に行動したら、彼らを警戒させてしまう。なら、なにもしない方がいい」
「なるほど……?」
理に叶っているような、叶っていないような……どっちなのだろう?
「下手に動いても潰されるだけだからねえ……なかなか動くことはできないんだよ」
「そう、ですか……」
クリフなら……と思っていただけに残念だ。
凹む。
そんな僕を見て、クリフはニヤリと笑う。
「まあまあ、早とちりしないでくれ。僕はなにも、完全に協力をしないわけじゃない」
「えっと……?」
「今はまだ動けない、っていうだけさ」
「ということは……いざという時は、力を貸してくれるんですか?」
「うん、そうだね」
クリフはにっこりと笑顔を浮かべつつ、頷いた。
こんな態度だけど、実はしっかりした人ということを知っている。
そんな彼の言葉なら信用できそうだ。
「本当なら、今すぐにでも力を貸したいんだけどね。下手に出世したせいで、色々としがらみも増えてきてねえ……はぁ、のんびりしたい」
「えっと……おつかれさまです」
「あはは、ありがとう。おっと、もうこんな時間か」
店内の時計を見てクリフが席を立つ。
「スティアート君も、すぐに行動を起こすつもりはないんだろう?」
「そうですね、たぶん」
「なら、また会おう。必要な時に呼んでほしい。王都のギルドに行って、伝言を残してくれればいいよ」
「わかりました」
「あ、それとここの会計は僕が持つよ。またね」
クリフはひらひらと手を振り、先に店の外へ出た。
「うーん……久しぶりに会ったけど、あいかわらずの人だなあ」
――――――――――
その後、一度外に出て、ソフィア達と合流。
再び宿へ戻り、そのまま部屋へ移動した。
「おーっ!」
綺麗で洒落た部屋を見て、リコリスが目をキラキラと輝かせた。
「わぁ♪」
「オンッ!」
アイシャとスノウもキラキラ笑顔だ。
大きなベッドにダイブして、ぽふんという反動を楽しんでいる。
二人共、尻尾をぶんぶんと振っていた。
ちょっと行儀が悪いけど……
楽しそうだから、まあいいか。
「良い宿ですね」
「うん。クリフに教えてもらったんだ」
「……あのギルドマスターがここに?」
「実は……」
経緯を話すと、ソフィアは難しい顔に。
「妙な偶然ですね……彼は本当に大丈夫なのでしょうか? もしかしたら、実は黎明の同盟の一員という可能性も……」
「それは考え過ぎじゃないかな? だとしたら、スタンピードを止めようなんて思わないだろうし」
「……それもそうですね。ふう。敵がすぐ近くにいるせいか、少し緊張して、過敏になっているのかもしれませんね」
ソフィアの言うことはよくわかる。
僕も似たような感覚になっていて……それと、妙に落ち着かない。
ピリピリとした雰囲気が王都全体に流れているというか……
例えるなら、壁一枚隔てた向こうに猛獣がいるような感覚だ。
「ここに黎明の同盟の本拠地があって……ちゃんと決着をつけられるのかな?」
「つけましょう。世界のためとか復讐とか、そういうのはどうでもいいですが……アイシャちゃんのために」
「うん、そうだね」
大事な人のために戦う。
理由はそれでいい。それだけあれば十分だ。