門を潜り抜けると、まず最初に大きな道がまっすぐ伸びているのが見えた。
 馬車が10台くらい並走できそうなほど広くて……
 実際に、数え切れないほどの馬車が行き来している。

 その左右に星の数ほどの建物が並んでいた。
 それはどこまでも続いていて、地平線を隠してしまうほどだ。

 大きな道の果てに城が見えた。
 かなりの距離があるはずなのに、それでもその大きさ、きらびやかさが伝わってくる壮大な作りになっている。

「うわぁ……ここが王都なんだ」

 馬を操るソフィアの隣に座り、周囲を見る。
 完全なおのぼりさんになっているけど、仕方ないよね?

「わー!」
「オンッ!」

 アイシャとスノウは窓から身を乗り出すようにして、キラキラと顔を輝かせていた。
 共に尻尾がぶんぶんと振られているところを見ると、興奮しているらしい。

「へー」

 僕の肩に乗るリコリスも、興味深そうに王都の街並みを眺めていた。

 ただ、ソフィアはいつもと変わらない。
 興奮する僕達を見て、微笑ましそうな顔をしている。

「ソフィアは驚かないんだね?」
「両親の仕事の関係で何度か来たことがありますからね。でも、最初に来た時は、私もフェイト達と同じような反応をしていましたよ」

 ソフィアも同じと知り、妙にほっとした。

「……この広い王都のどこかに、黎明の同盟が潜んでいるんだね」

 観光で来たわけじゃない。
 どうにかして連中を止めないといけない。

 自然と気が引き締まる。

「フェイト、気持ちはわかりますが、焦ってはダメですよ」
「でも……」
「焦りは思考を狭くしてしまいますからね。私達がやるべきことは、まずは、王都で活動するための地盤をしっかりと整えることです」
「……うん、そうだね。ありがとう、ソフィア」

 彼女のおかげで、少し落ち着くことができた。

 黎明の同盟のこと。
 レナのこと。
 気になることはあるけど、焦っても仕方ない。

 今はソフィアが言うように、しっかりと準備をしないと。

「それじゃあ、まずは宿を探そうか。ソフィア、良いところを知っていたりしないかな?」
「えっと……ごめんなさい。何度か来たことはありますが、その時は宿を利用していないので……」
「そっか、そうだよね。領主館とか貴族の屋敷に泊まるよね」

 そうなると、まずは宿の情報を集めるところから始めないと。

 それなりに長い間、王都に滞在することになると思う。
 しっかりと英気を養えるところで、なおかつリーズナブルな値段だとよし。

 それと、間違いなく黎明の同盟とやりあうことになるだろうから、ある程度、防犯意識が高いところがいい。

「情報収集なら、王都の冒険者ギルドを利用した方がよさそうですね。依頼の斡旋だけではなくて、情報の売買なども行っていますから」
「うん、そうだね」
「私は馬車を預かってくれるところを探すので、お願いしてもいいですか?」
「了解」
「じゃあ、あたしはこっちに残るわね」

 リコリスは馬車に戻った。
 たぶん、宿を探すのが面倒なのだろう。

「じゃあ、また後で」

 待ち合わせ場所と時間を決めた後、僕はソフィア達と別れた。

 やがて冒険者ギルドに到着。
 王都になればギルドの規模も大きくて、貴族の屋敷みたいだ。

 ちょっと緊張しつつ中に入り……

「あれ!?」
「おや」

 見知った顔に出会い、互いに驚きの声をあげる。