「スノウ、こっちこっち!」
「オンッ!」

 湖の浅いところでアイシャが水しぶきを上げつつ駆けて、スノウがそれを追いかける。

 アイシャは時折足を止めて、水をすくってすのうにかけていた。
 お返しとばかりにスノウは尻尾を器用に使い、水をかけ返す。

「はー……生き返るわー」

 リコリスは両手足を広げて、ぷかぷかと浮いていた。
 とても気持ちいいらしく、その表情はとろけきっている。

 そして、ソフィアは……

「ふふ、涼しくて気持ちいいですね」
「う、うん……そうだね」

 膝の辺りまで水に浸かり、僕に白い肌を見せていた。

 正確に言うと……水着姿だ。

 色は白。
 背中に大胆なカットが入っている。
 清楚でありつつ扇状的でもあるという、どこか矛盾した水着だ。

 でも、それはソフィアにとてもよく似合っている。
 似合っているからこそ直視するのが恥ずかしくて、照れくさくて、ついつい目を逸らしてしまう。

 一緒に水浴びをしようと言われた時は驚いたけど……
 水着を着て、ということなので納得の話だ。
 ただ、これはこれで恥ずかしい。

「フェイト、私の水着はどうですか? 似合っていませんか……?」
「え? あ、うん……す、すごく似合っているよ」
「なら、どうしてこちらを見てくれないのですか?」
「それは、その……」
「えいっ」
「ふわ!?」

 抱きつかれてしまう。
 水着姿でそんなことをしたら、いつも以上に、その……感触が大変なことに。

「ふふ。もしかして、照れているんですか?」
「えっと……」
「嬉しいです。フェイトがそういう目で私を見てくれて」
「そこ、怒るところじゃないの?」
「好きな人が私に注目してくれる……女性として、とても嬉しいことですよ?」

 そういうものなのかな?

「それで……私の水着姿、どうですか?」
「えっと、その……すごく綺麗で、でもかわいくて、なんかもう……最高です!」
「ふふ、ありがとうございます」

 満足したらしく、ソフィアは僕から離れた。
 そして、ぱしゃぱしゃと水をかけてくる。

「わぷっ」
「せっかくの水浴びなんです。フェイトも楽しみましょう?」
「……そうだね」

 目に毒な光景……
 いや、幸せ?

 そんな状況だけど、これはこれで気にしない。
 今この時間を楽しむことにしよう。

 ……王都に行ったら、そんな時間はないかもしれないからね。

「えいっ」
「きゃっ、やりましたね! んー……えいっ!」
「わわわっ」

 水のかけっこをする。
 それだけなのにすごく楽しくて、笑顔があふれて止まらない。

「やれやれ」

 いつの間にか浮き輪を使ってぷかぷかと浮いているリコリスは、そんな僕達を見て苦笑する。

「いつでもどこでも、あの二人は変わらないわねー」
「おとーさん、おかーさん、仲良し!」
「オンッ!」
「違うわ、アイシャ。ああいうのは……」
「ばかっぷる?」
「それも違うわ。あの二人は、ばかっぷるを超えたばかっぷる……そう、どばかっぷるよ!!!」
「おー」

 リコリスの迫力に感じるものがあったのか、アイシャはぱちぱちと拍手をして……

「娘に変なことを教えないでください!」
「ぎゃん!?」

 しっかりと話を聞いていたソフィアが水を放ち、リコリスは吹き飛ばされるのだった。