「いきます」
「ああ、いつでも」

 顔を見合わせて、頷く。
 それから、心の中でカウントダウン。

 3……
 2……
 1……

「「っ!!」」

 心の中でゼロを刻むと同時に、僕とアルベルトは物陰から飛び出して、一気に駆けた。
 同時に抜剣して、その切っ先を敵に向ける。

「なっ!?」
「こいつら、どこから!?」
「敵……がっ!?」

 最初にアルベルトが飛び出した。
 彼は必要最小限の動きで剣を振り、兵士の足を斬る。

 兵士はぐらりとよろめいて……
 そこに追撃の蹴りが顔に叩き込まれて、そのまま気絶した。

 残り二人が慌てて武器を構えるけど、遅い。

 僕は一人目の懐に潜り込む。
 ゼロ距離で剣の腹で殴りつけて、二人目に向けて吹き飛ばした。

 二人はもつれあって倒れて……
 そこを狙い打撃を叩き込み、意識を刈り取る。

「ふう」

 うまくいってよかった。

 敵だけど、仕方なく領主の味方をしているだけかもしれない。
 そう考えると、できるなら命は奪いたくない。

 甘いって言われるかもしれないけど……
 でも、これが僕だ。

「このまま中へ突入しよう」
「あ、ちょっと待ってください」

 ぐるりと倉庫を回り……
 ところどころにある扉の前に廃材を置いて、開かないようにしておいた。

 逃亡防止だ。
 窓から飛び降りたりしたら防ぐことはできないけど、なにもしないよりはマシだろう。

「おまたせしました」
「君は色々と機転が効くね。逃亡防止とか、考えていなかったよ」
「ソフィアのおかげです。彼女には、色々なことを教えてもらいましたから」
「……なるほど」

 そう言うアルベルトは、どこかまぶしそうな顔をしていた。

 ただ、すぐにキリッとした真面目な表情になる。

「私は領主を探す。危険を押しつけてしまい申しわけないのだけど、フェイトは、魔剣を使う者を頼めるかい?」
「わかりました、やってみます」

 レナクラスの魔剣使いが出てきたら、けっこうまずいかもしれない。
 ただ、そこまでの圧は感じないし……

 出てきたとしても、なんとかしてみせる。
 こんな状況、放っておくことはできないからね。

「では、いこう」
「はい」
「もう一度、カウントダウンをして……」

 と、その時。

 ゴガァッ!!!

 轟音と共に倉庫の扉が吹き飛んだ。

「なんだ!?」
「魔法による爆発? でも今の感じは……」

 なにが起きてもいいように剣を構える。
 アルベルトも、油断なく扉の先を注視する。

 すると、吐いてしまいそうになる嫌な匂いが漂ってきた。

「この匂いは……」
「血……なのか?」

 一人分の血で、これだけ濃厚な死の匂いはしない。
 数十人分の血の匂い、死の気配。

 そして……

「ふむ、来客か」

 漆黒の剣を持つ男が姿を見せた。