工業地帯の一角。
そこに、グルドが所有するセーフハウスがあった。
外観はただの倉庫。
しかし、中は快適に過ごせるように改造されているという。
「あれが、私が知るグルドのセーフハウスなのだけど……」
「当たりかもしれないですね」
倉庫の外にいくらか人がいた。
いずれも武装してて、周囲を警戒している。
それだけじゃない。
倉庫の中から、さらにたくさんの気配がした。
これだけのトラブルが起きている中、これだけの人数がセーフハウスに集まっている。
まず間違いなく、あの中にグルドがいるだろう。
「場所を見つけられたところまではいいが……問題は、こちらの戦力だな」
僕とアルベルトの二人だけ。
うまく立ち回れば、二人でやってやれないことはない。
ただ……
「魔剣使いが敵にいたら……まずいかも」
黎明の同盟がグルドに協力していたら?
協力していなくても、この嫌な気配から考えると、敵が魔剣を持っていることは確定だ。
とても強力な武器なので、僕達だけで対処できるかどうか……ここはもう、賭けになってしまう。
「魔剣というのは、そんなに厄介なものなのかい?」
ここに来る途中、魔剣について軽く説明をしておいた。
ただアルベルトは、いまいちピンとこない様子だ。
「ものすごく厄介なものです。そうですね……」
少し考えて続きを口にする。
「鉄をバターのように斬ることができて、おまけに、身体能力を強化することができます」
「それは、また……」
「最下位の魔剣で、それです。もしもレベルの高い魔剣を敵が所有していたら……」
「最悪、剣聖殿に匹敵する力を持つ、と考えた方がいい……というわけか」
「はい」
普通に考えるのなら、一人、この場に残って様子を見る。
その間に、もう一人が援軍を連れてくる。
それが最善だ。
ただ、時間をかければかけるほど被害が拡大してしまうし……
この混乱だ。
うまく援軍を連れてこられるかわからない。
「……」
アルベルトは倉庫を睨みつつ、思考を回転させていた。
僕としては、突入する方に賛成だ。
ただ、気軽にアルベルトを巻き込むわけにはいかないので、最終的には彼の判断に従おうと思う。
「……よし」
ややあって、アルベルトは小さく頷いた。
「君には迷惑をかけてしまうが……ここは、すぐに突入したいと思う」
「いいんですか?」
「ああ、リスクは承知の上だよ。色々な問題はあるけれど……しかし、一刻も早く事態を収拾したい。そのために、できることをやると決めた」
「わかりました。僕も、できる限りのことをします」
「すまない」
アルベルトも、僕を危険に巻き込むことを申しわけなく思っているみたいだ。
その頭を下げる。
でも……
「謝らないでください」
「しかし」
「それよりは、別の言葉が欲しいです」
「それは……ああ、なるほど」
こちらの言いたいことを理解した様子で、アルベルトは苦笑した。
「君は、本当に気持ちの良い男だな。同じ男として、その格好良さに嫉妬してしまうよ」
「そ、そんなことは……」
「照れなくてもいい。それと……ありがとう」
「はい」
最初は、アルベルトに嫉妬とかしていたのだけど……
でも、今は彼に好感を持っていた。
立場は違うけど、もしかしたら友達になれるかもしれない。
そんなことを思うのだった。
そこに、グルドが所有するセーフハウスがあった。
外観はただの倉庫。
しかし、中は快適に過ごせるように改造されているという。
「あれが、私が知るグルドのセーフハウスなのだけど……」
「当たりかもしれないですね」
倉庫の外にいくらか人がいた。
いずれも武装してて、周囲を警戒している。
それだけじゃない。
倉庫の中から、さらにたくさんの気配がした。
これだけのトラブルが起きている中、これだけの人数がセーフハウスに集まっている。
まず間違いなく、あの中にグルドがいるだろう。
「場所を見つけられたところまではいいが……問題は、こちらの戦力だな」
僕とアルベルトの二人だけ。
うまく立ち回れば、二人でやってやれないことはない。
ただ……
「魔剣使いが敵にいたら……まずいかも」
黎明の同盟がグルドに協力していたら?
協力していなくても、この嫌な気配から考えると、敵が魔剣を持っていることは確定だ。
とても強力な武器なので、僕達だけで対処できるかどうか……ここはもう、賭けになってしまう。
「魔剣というのは、そんなに厄介なものなのかい?」
ここに来る途中、魔剣について軽く説明をしておいた。
ただアルベルトは、いまいちピンとこない様子だ。
「ものすごく厄介なものです。そうですね……」
少し考えて続きを口にする。
「鉄をバターのように斬ることができて、おまけに、身体能力を強化することができます」
「それは、また……」
「最下位の魔剣で、それです。もしもレベルの高い魔剣を敵が所有していたら……」
「最悪、剣聖殿に匹敵する力を持つ、と考えた方がいい……というわけか」
「はい」
普通に考えるのなら、一人、この場に残って様子を見る。
その間に、もう一人が援軍を連れてくる。
それが最善だ。
ただ、時間をかければかけるほど被害が拡大してしまうし……
この混乱だ。
うまく援軍を連れてこられるかわからない。
「……」
アルベルトは倉庫を睨みつつ、思考を回転させていた。
僕としては、突入する方に賛成だ。
ただ、気軽にアルベルトを巻き込むわけにはいかないので、最終的には彼の判断に従おうと思う。
「……よし」
ややあって、アルベルトは小さく頷いた。
「君には迷惑をかけてしまうが……ここは、すぐに突入したいと思う」
「いいんですか?」
「ああ、リスクは承知の上だよ。色々な問題はあるけれど……しかし、一刻も早く事態を収拾したい。そのために、できることをやると決めた」
「わかりました。僕も、できる限りのことをします」
「すまない」
アルベルトも、僕を危険に巻き込むことを申しわけなく思っているみたいだ。
その頭を下げる。
でも……
「謝らないでください」
「しかし」
「それよりは、別の言葉が欲しいです」
「それは……ああ、なるほど」
こちらの言いたいことを理解した様子で、アルベルトは苦笑した。
「君は、本当に気持ちの良い男だな。同じ男として、その格好良さに嫉妬してしまうよ」
「そ、そんなことは……」
「照れなくてもいい。それと……ありがとう」
「はい」
最初は、アルベルトに嫉妬とかしていたのだけど……
でも、今は彼に好感を持っていた。
立場は違うけど、もしかしたら友達になれるかもしれない。
そんなことを思うのだった。