「おかーさん!」
「オンッ!」
セーフハウスに移動すると、アイシャとスノウが飛び出してきた。
アイシャはソフィアに抱きついて、スノウは体を寄せる。
怯えているらしく、体が小刻みに震えていた。
ソフィアは、そんな二人を優しく抱きしめる。
「もう大丈夫ですよ。悪い人は、お母さんが成敗しましたからね」
「うぅ……」
「オフゥ……」
少し安心した様子だけど、アイシャの尻尾の毛はぶわっと膨れている。
スノウの尻尾の毛も膨れている。
まだまだ恐怖がとれていないのだろう。
そんな二人の様子を見て、ソフィアは、ちらりと後ろを見る。
そこには、セーフハウスを取り囲んでいた、革命軍を名乗る暴徒が転がっていた。
全て、ソフィアに叩きのめされたのだ。
首を切り飛ばしてやろうか?
一瞬、ソフィアは物騒なことを考える。
でも、仕方ない。
子を害されて怒らない母なんていない。
「うぅ……」
「なんて力だ……」
暴徒達は立ち上がろうとして、しかし傷が響いたらしく、すぐに倒れてしまう。
ソフィアの攻撃は、適切に的確に彼らの戦闘力を奪い取っていた。
「とりあえず、移動しましょうか」
セーフハウスは革命軍に知られていた。
援軍が来たら面倒なので、別の場所へ移動しよう。
そう考えたソフィアは、アイシャの手を引いて、スノウにおいでをする。
「おかーさん、おとーさんは?」
「お父さんは事件を解決するためにがんばっています」
「大丈夫かな……?」
「大丈夫ですよ。お父さんは強いですからね」
……あるいは、私よりも。
ソフィアは、そう心の中で付け足した。
奴隷時代の経験もあって、フェイトの身体能力はとんでもないところまで成長していた。
それから剣を持ち……
才能があったため、メキメキと上達していった。
魔剣使いのレナと、ある程度ではあるが互角に渡り合い。
水神と呼ばれていた魔物を単独で討伐してみせた。
ソフィアが彼の域に達するのには十年近くかかったというのに……
再会してから一年も経っていないのに、凄まじい成長速度だ。
「ふふ」
剣の腕で抜かれようとしているが、ソフィアは、焦りを覚えたり嫉妬したりすることはない。
嬉しさしかない。
大好きな人が強くなる。
ただただ、喜びしかないのだ。
「お前は……なんなんだよ……」
革命軍の一人がなんとか体を起こして、ソフィアを睨みつけた。
強くなったフェイトが強敵を倒して自分を助けてお姫様抱っこをしてくれる……という妄想に浸っていたソフィアは我に返り、とても不機嫌そうに革命軍を睨み返す。
「なんだ、とはどういう意味ですか?」
「なんで、領主なんかに味方をするんだ……あいつは人でなしで……金か? 金で雇われたのか……?」
「失礼ですね。お金は大事ですが、だからといって、その程度で悪事に手を染めるつもりなんてありませんよ」
「ならば、どうして俺達の邪魔をする……? これは、街を正常に戻すための聖戦だというのに……」
「聖戦……ねえ」
大きく出たものだ、とソフィアはある意味で感心した。
なんて面の皮が厚いのだろう。
やれやれと呆れの吐息がこぼれる。
「まあ、私が領主に雇われていると勘違いするのは仕方ないとしても……あなたは今、なにをしようとしたか覚えていますか?」
「な、なに……?」
「子供と子犬を襲おうとしたんですよ?」
「そ、それは……」
「自分の行いが恥ずかしいと、そう思わないのですか?」
「……大義のためだ。多少の犠牲は止むをえない」
「はぁあああああ……」
ソフィアはさらに深いため息をこぼした。
不快なため息だ。
「子供と子犬を襲おうとした理由、なにも応えてもらっていませんよね? まあ、大方、この子達が領主の関係者と思い人質にしようとした、というところでしょう。笑ってしまいますね。人質を取るような者に正義が?」
「非道な領主を敵にするのだから、それくらいは仕方ない」
「なら、どうして最初からそう言わないのですか? 大義のため、という言葉で誤魔化そうとしたのですか?」
「う……」
「後ろめたいからでしょう? 子供を利用するのは悪いことと、理解しているからでしょう? だから、響きの良い言葉で誤魔化そうとした。私だけではなくて、自分も」
「……」
革命軍は言葉も出ない様子だった。
ただ、ソフィアは言葉を止めない。
さらに口撃を続ける。
「大義のため、とか言いますけどね。それで切り捨てられる方はたまったものではありません。大義のためだから死んでくれ? そう言われて納得できる人なんて、一人もいませんよ。あなたが言われたらどうしますか? あなたの家族や恋人が、大義のためだから死んでくれ、なんて言われたらどうしますか?」
「あ……」
「あなた達のやろうとしていることを否定するつもりはありませんが……やるならやるで、きちんと覚悟を示してください。楽な言葉に逃げないでください」
ソフィアは剣を突きつけた。
「私は、そんなことはしません」
そして、冷たい目をして言う。
「私は、私の大切なもののために戦います。それを邪魔するというのなら……斬ります」
「……」
その言葉で革命軍の心は完全に折れてしまい、がくりとうなだれるのだった。
「オンッ!」
セーフハウスに移動すると、アイシャとスノウが飛び出してきた。
アイシャはソフィアに抱きついて、スノウは体を寄せる。
怯えているらしく、体が小刻みに震えていた。
ソフィアは、そんな二人を優しく抱きしめる。
「もう大丈夫ですよ。悪い人は、お母さんが成敗しましたからね」
「うぅ……」
「オフゥ……」
少し安心した様子だけど、アイシャの尻尾の毛はぶわっと膨れている。
スノウの尻尾の毛も膨れている。
まだまだ恐怖がとれていないのだろう。
そんな二人の様子を見て、ソフィアは、ちらりと後ろを見る。
そこには、セーフハウスを取り囲んでいた、革命軍を名乗る暴徒が転がっていた。
全て、ソフィアに叩きのめされたのだ。
首を切り飛ばしてやろうか?
一瞬、ソフィアは物騒なことを考える。
でも、仕方ない。
子を害されて怒らない母なんていない。
「うぅ……」
「なんて力だ……」
暴徒達は立ち上がろうとして、しかし傷が響いたらしく、すぐに倒れてしまう。
ソフィアの攻撃は、適切に的確に彼らの戦闘力を奪い取っていた。
「とりあえず、移動しましょうか」
セーフハウスは革命軍に知られていた。
援軍が来たら面倒なので、別の場所へ移動しよう。
そう考えたソフィアは、アイシャの手を引いて、スノウにおいでをする。
「おかーさん、おとーさんは?」
「お父さんは事件を解決するためにがんばっています」
「大丈夫かな……?」
「大丈夫ですよ。お父さんは強いですからね」
……あるいは、私よりも。
ソフィアは、そう心の中で付け足した。
奴隷時代の経験もあって、フェイトの身体能力はとんでもないところまで成長していた。
それから剣を持ち……
才能があったため、メキメキと上達していった。
魔剣使いのレナと、ある程度ではあるが互角に渡り合い。
水神と呼ばれていた魔物を単独で討伐してみせた。
ソフィアが彼の域に達するのには十年近くかかったというのに……
再会してから一年も経っていないのに、凄まじい成長速度だ。
「ふふ」
剣の腕で抜かれようとしているが、ソフィアは、焦りを覚えたり嫉妬したりすることはない。
嬉しさしかない。
大好きな人が強くなる。
ただただ、喜びしかないのだ。
「お前は……なんなんだよ……」
革命軍の一人がなんとか体を起こして、ソフィアを睨みつけた。
強くなったフェイトが強敵を倒して自分を助けてお姫様抱っこをしてくれる……という妄想に浸っていたソフィアは我に返り、とても不機嫌そうに革命軍を睨み返す。
「なんだ、とはどういう意味ですか?」
「なんで、領主なんかに味方をするんだ……あいつは人でなしで……金か? 金で雇われたのか……?」
「失礼ですね。お金は大事ですが、だからといって、その程度で悪事に手を染めるつもりなんてありませんよ」
「ならば、どうして俺達の邪魔をする……? これは、街を正常に戻すための聖戦だというのに……」
「聖戦……ねえ」
大きく出たものだ、とソフィアはある意味で感心した。
なんて面の皮が厚いのだろう。
やれやれと呆れの吐息がこぼれる。
「まあ、私が領主に雇われていると勘違いするのは仕方ないとしても……あなたは今、なにをしようとしたか覚えていますか?」
「な、なに……?」
「子供と子犬を襲おうとしたんですよ?」
「そ、それは……」
「自分の行いが恥ずかしいと、そう思わないのですか?」
「……大義のためだ。多少の犠牲は止むをえない」
「はぁあああああ……」
ソフィアはさらに深いため息をこぼした。
不快なため息だ。
「子供と子犬を襲おうとした理由、なにも応えてもらっていませんよね? まあ、大方、この子達が領主の関係者と思い人質にしようとした、というところでしょう。笑ってしまいますね。人質を取るような者に正義が?」
「非道な領主を敵にするのだから、それくらいは仕方ない」
「なら、どうして最初からそう言わないのですか? 大義のため、という言葉で誤魔化そうとしたのですか?」
「う……」
「後ろめたいからでしょう? 子供を利用するのは悪いことと、理解しているからでしょう? だから、響きの良い言葉で誤魔化そうとした。私だけではなくて、自分も」
「……」
革命軍は言葉も出ない様子だった。
ただ、ソフィアは言葉を止めない。
さらに口撃を続ける。
「大義のため、とか言いますけどね。それで切り捨てられる方はたまったものではありません。大義のためだから死んでくれ? そう言われて納得できる人なんて、一人もいませんよ。あなたが言われたらどうしますか? あなたの家族や恋人が、大義のためだから死んでくれ、なんて言われたらどうしますか?」
「あ……」
「あなた達のやろうとしていることを否定するつもりはありませんが……やるならやるで、きちんと覚悟を示してください。楽な言葉に逃げないでください」
ソフィアは剣を突きつけた。
「私は、そんなことはしません」
そして、冷たい目をして言う。
「私は、私の大切なもののために戦います。それを邪魔するというのなら……斬ります」
「……」
その言葉で革命軍の心は完全に折れてしまい、がくりとうなだれるのだった。