協力する旨を伝えると、アルベルトはものすごく喜んでくれた。
作戦の詳細は後日ということで、今は休んでほしいと、ベッドがある別の部屋に案内された。
素直に好意に甘えることにして、僕達は体を休めることに。
おいしいごはんをたくさん食べて、お風呂でゆっくりくつろいで……
それからベッドに入る。
「……」
ベッドに入ったけど、なんだか眠くならなくて、僕は部屋に備えつけられていたテラスに出た。
夜空を見上げると、三日月が輝いていた。
「なにしてんの?」
振り返ると、リコリスがふわふわと浮いていた。
普段の服じゃなくて、パジャマ姿だ。
おまけに、ナイトキャップをかぶっている。
当然、リコリスに合わせたミニマムサイズだけど、どこで調達したんだろう?
「なんだか眠れなくて」
「ふーん」
「リコリスは? もしかして、起こしちゃった?」
「いいわよ、気にしないで。年上のお姉さんとして、悩める青少年の話に付き合うのも美少女妖精の務めだもの」
長いこと一緒にいるけど、そんな務め、初めて聞いた。
「最近、ずっと考え事してる感じだけど、どうしたのよ? ほら、話してみなさい」
「悩みを強制的に聞き出すって、なかなか斬新だね」
でも、今の僕にはちょうどいいのかもしれない。
リコリスに感謝しつつ、胸のもやもやを言葉にする。
「アルベルトに協力することだけど……うん。そのこと事態は良いんだ。そうした方が良いって判断して、それに後悔はなくて……なんとかしたいと思うから」
「それで?」
「でも……なんか、もやもやするんだ。あと、なんかアルベルトと一緒にいたくないというか……」
たぶん、悪い人じゃないと思う。
簒奪という過激な方法を選んでいるけど、それは、現状に苦しむ民を思えばこそだ。
一刻も早く圧政から民を解放して……
それと同時にクーデターを防いで、たくさんの血が流れることを阻止する。
そのために行動しているアルベルトは、たぶん、良い人なんだと思う。
思うのに、もやもやしてしまう。
彼と一緒にいたくないと思ってしまう。
これ、なんだろう?
「それは嫉妬ね」
僕の話を聞いたリコリスは、さほど迷うことなく、そう断じた。
「嫉妬?」
「意味はわかるわよね?」
「そりゃあ、もちろん。でも……」
「単純な話よ。アルベルトは、ソフィアに告白したでしょ? そのことについて、フェイトは嫉妬しているのよ」
「……」
まったく予想外の結論を突きつけられて、キョトンとしてしまう。
僕がアルベルトに嫉妬?
彼がソフィアに告白したから?
そんなまさか、と思うのだけど……
でも、リコリスの推測を否定する材料は見つからない。
というか、冷静になって考えると、その通り、と思うような心当たりが多すぎる。
自覚もたくさん出てきた。
「そっか……僕、アルベルトに嫉妬していたのか……」
「それと、ライバルに思えるから気を許していない、っていうのもあると思うわよ。ほら。フェイトってば、大抵、初対面の人はさんづけで呼ぶのに、アルベルトだけアルベルトじゃない? つまり、そういうことよ」
「それは……まったく自覚していなかったかも」
ほぼほぼ無意識でアルベルトのことを呼び捨てにしていた。
それも、彼を特別に意識しているせいなんだろう。
色々な事実を知り、なんていうか……
「……恥ずかしい」
「なんでよ、恥ずかしがる必要なんてないじゃない」
「だって、嫉妬とかライバル心とか、僕が一人で勝手に思っているだけなんだよ? 向こうはなにも気にしていないと思うし、ソフィアだって……それなのに僕は……はぁ」
「いいんじゃない? 嫉妬もライバル心もアリよ」
「そう……かな?」
「まったく、フェイトは女心がわかってないわね。こういう時、なにも感じていない方が嫌なのよ。嫉妬されたり、ライバル心を持ったり……そういう方が嬉しいの。この人は私のためにがんばってくれているわー……って、満たされるのよ」
わかるような、わからないような。
でも……
もしかしたら、僕は気にし過ぎだったのかもしれない。
気持ちの整理は簡単にはできないけど、だけど、もっと前向きな気持ちでいないとダメだよね。
少しだけど、そうやって前向きになることができた。
リコリスのおかげだ。
「ありがとう、リコリス」
「ふふん、お礼は甘くてミルクたっぷりのクッキーでいいわ!」
「あはは。うん、今度買ってくるよ」
僕とリコリスは一緒に笑い……
その上で、月が静かに輝いていた。
作戦の詳細は後日ということで、今は休んでほしいと、ベッドがある別の部屋に案内された。
素直に好意に甘えることにして、僕達は体を休めることに。
おいしいごはんをたくさん食べて、お風呂でゆっくりくつろいで……
それからベッドに入る。
「……」
ベッドに入ったけど、なんだか眠くならなくて、僕は部屋に備えつけられていたテラスに出た。
夜空を見上げると、三日月が輝いていた。
「なにしてんの?」
振り返ると、リコリスがふわふわと浮いていた。
普段の服じゃなくて、パジャマ姿だ。
おまけに、ナイトキャップをかぶっている。
当然、リコリスに合わせたミニマムサイズだけど、どこで調達したんだろう?
「なんだか眠れなくて」
「ふーん」
「リコリスは? もしかして、起こしちゃった?」
「いいわよ、気にしないで。年上のお姉さんとして、悩める青少年の話に付き合うのも美少女妖精の務めだもの」
長いこと一緒にいるけど、そんな務め、初めて聞いた。
「最近、ずっと考え事してる感じだけど、どうしたのよ? ほら、話してみなさい」
「悩みを強制的に聞き出すって、なかなか斬新だね」
でも、今の僕にはちょうどいいのかもしれない。
リコリスに感謝しつつ、胸のもやもやを言葉にする。
「アルベルトに協力することだけど……うん。そのこと事態は良いんだ。そうした方が良いって判断して、それに後悔はなくて……なんとかしたいと思うから」
「それで?」
「でも……なんか、もやもやするんだ。あと、なんかアルベルトと一緒にいたくないというか……」
たぶん、悪い人じゃないと思う。
簒奪という過激な方法を選んでいるけど、それは、現状に苦しむ民を思えばこそだ。
一刻も早く圧政から民を解放して……
それと同時にクーデターを防いで、たくさんの血が流れることを阻止する。
そのために行動しているアルベルトは、たぶん、良い人なんだと思う。
思うのに、もやもやしてしまう。
彼と一緒にいたくないと思ってしまう。
これ、なんだろう?
「それは嫉妬ね」
僕の話を聞いたリコリスは、さほど迷うことなく、そう断じた。
「嫉妬?」
「意味はわかるわよね?」
「そりゃあ、もちろん。でも……」
「単純な話よ。アルベルトは、ソフィアに告白したでしょ? そのことについて、フェイトは嫉妬しているのよ」
「……」
まったく予想外の結論を突きつけられて、キョトンとしてしまう。
僕がアルベルトに嫉妬?
彼がソフィアに告白したから?
そんなまさか、と思うのだけど……
でも、リコリスの推測を否定する材料は見つからない。
というか、冷静になって考えると、その通り、と思うような心当たりが多すぎる。
自覚もたくさん出てきた。
「そっか……僕、アルベルトに嫉妬していたのか……」
「それと、ライバルに思えるから気を許していない、っていうのもあると思うわよ。ほら。フェイトってば、大抵、初対面の人はさんづけで呼ぶのに、アルベルトだけアルベルトじゃない? つまり、そういうことよ」
「それは……まったく自覚していなかったかも」
ほぼほぼ無意識でアルベルトのことを呼び捨てにしていた。
それも、彼を特別に意識しているせいなんだろう。
色々な事実を知り、なんていうか……
「……恥ずかしい」
「なんでよ、恥ずかしがる必要なんてないじゃない」
「だって、嫉妬とかライバル心とか、僕が一人で勝手に思っているだけなんだよ? 向こうはなにも気にしていないと思うし、ソフィアだって……それなのに僕は……はぁ」
「いいんじゃない? 嫉妬もライバル心もアリよ」
「そう……かな?」
「まったく、フェイトは女心がわかってないわね。こういう時、なにも感じていない方が嫌なのよ。嫉妬されたり、ライバル心を持ったり……そういう方が嬉しいの。この人は私のためにがんばってくれているわー……って、満たされるのよ」
わかるような、わからないような。
でも……
もしかしたら、僕は気にし過ぎだったのかもしれない。
気持ちの整理は簡単にはできないけど、だけど、もっと前向きな気持ちでいないとダメだよね。
少しだけど、そうやって前向きになることができた。
リコリスのおかげだ。
「ありがとう、リコリス」
「ふふん、お礼は甘くてミルクたっぷりのクッキーでいいわ!」
「あはは。うん、今度買ってくるよ」
僕とリコリスは一緒に笑い……
その上で、月が静かに輝いていた。