その日は、そのまま屋敷に泊まることになった。
アルベルトの客人として、滞在許可が降りたのだ。
僕達に与えられた客室は一つ。
でも、とても広く、ベッドも四つあった。
「あー、ふかふかのベッド、素敵だわー」
リコリスはさっそくベッドにダイブするものの、僕達はそんなことはしない。
部屋の中を見て回り、間取りを確認して……
それと、とあるものを探す。
「フェイト、どうでしたか?」
「大丈夫だと思うよ」
「私の方も、問題ありませんでした」
「おとーさん、おかーさん。なにをしているの?」
アイシャが不思議そうに小首を傾げた。
「えっと……盗み聞きをしている悪い人がいないか、調べていたんだ」
「おー」
「アイシャちゃんも、誰かに見られたりしたら嫌でしょう? だから、色々と確認をしていたんですよ」
正直なところ、アルベルトのことは信用していない。
話に矛盾はなかったけど……
でも、それだけで出会ったばかりの人間を信用することはできない。
それは向こうも同じのはず。
だから、客室に盗聴の魔道具を仕掛けるなどすると思っていたんだけど……
それらしいものを見つけることはできなかった。
アルベルトは僕達のことを信用している……なんて、そんな甘い話はないと思う。
盗聴の魔道具などを設置して、見つけられてしまった時は立場が悪くなる。
だから、あえてなにもしない……そんなところだと思う。
「これなら、一応、気兼ねなく色々な話をすることができるね」
「どうでしょうか……私達が盗聴の魔道具を見つけられなかった、という可能性もあります。あるいは、そういったものに頼らず、相手の動向を探ることができる方法を持っているかもしれません。そういうことを考えると、なかなか……」
「いいんじゃないかな?」
「え?」
「その時は、その時だよ。アルベルトが妙な行動に出たら、それはそれでわかりやすいよ。敵、って判断できる」
「……」
「なにも仕掛けられていないなら、それはそれでよし。少しだけ彼を信用することができる。どっちに転んでも損はないんじゃないかな?」
「……フェイトは、いつの間にか大きくなっていたのですね」
「え? え?」
ぎゅうっと、抱きしめられてしまう。
なんで?
というか、その、当たって……
「ふふ、気持ちいいですか?」
「な、なんのことかな!?」
慌ててソフィアから離れた。
「そ、それよりも、これからのことを決めないと」
「ごまかしましたね?」
「おとーさん、ごまかしたー」
「アイシャまで!?」
「子は親のことを真似るものよ」
リコリスが苦笑して、そう締めくくる。
「まあ、冗談はここまでにして……フェイトの言う通り、今後のことを話し合いましょう」
「アルベルトに協力するか、しないか……だね」
彼がやろうとしていることは、とても過激なことだ。
例えるなら……
足が病気になった時、普通は、病気の原因を特定して治療しようとする。
しかしアルベルトの場合は、他に病気が転移しないうちに、足を切り落としてしまう、というものだ。
とても過激な方法だけど、でも、一概に否定することもできない。
時と場合によっては、それが正しいこともある。
「もうどうしようもないほど領主が腐っているとしたら、彼のすることは正しいですね」
「うん……時間をかければかけるほど、街がダメージを受けてしまう。たくさんの人が苦しむことになる。だから、そうなる前に一気に決着をつける。悪いことじゃないと思う」
「ですが……彼の話が正しい、という前提があってのことですが」
そこだ。
アルベルトの話を聞いただけで、他に情報を持っていない。
彼が正しいのか。
それとも、実は領主が正しいのか。
それを判断することができない。
「まずは情報を集めないといけないね」
「しかし、私達の外出が許されるかどうか……」
「なら、このウルトラミラクルウルトラ妖精リコリスちゃんに任せなさい!」
今、ウルトラって二回言ったよね?
「あたしなら、すいすいっと抜け出して情報を集めてくることができるわ」
「「……」」
「二人揃って疑いの眼差し!?」
「だって……」
「ねえ?」
普段のリコリスの言動を知ると、どうにもこうにも不安になってしまう。
大丈夫だろうか?
なにかやらかしたりしないだろうか?
不用意にトラブルを持ってきたりしないだろうか?
心配の種は尽きない。
「大丈夫よ! このあたしが、見事、大きな情報を持ち帰ってみせるわ!」
「あっ、リコリス!?」
止める間もなく、窓の隙間からリコリスが飛び出してしまった。
アルベルトの客人として、滞在許可が降りたのだ。
僕達に与えられた客室は一つ。
でも、とても広く、ベッドも四つあった。
「あー、ふかふかのベッド、素敵だわー」
リコリスはさっそくベッドにダイブするものの、僕達はそんなことはしない。
部屋の中を見て回り、間取りを確認して……
それと、とあるものを探す。
「フェイト、どうでしたか?」
「大丈夫だと思うよ」
「私の方も、問題ありませんでした」
「おとーさん、おかーさん。なにをしているの?」
アイシャが不思議そうに小首を傾げた。
「えっと……盗み聞きをしている悪い人がいないか、調べていたんだ」
「おー」
「アイシャちゃんも、誰かに見られたりしたら嫌でしょう? だから、色々と確認をしていたんですよ」
正直なところ、アルベルトのことは信用していない。
話に矛盾はなかったけど……
でも、それだけで出会ったばかりの人間を信用することはできない。
それは向こうも同じのはず。
だから、客室に盗聴の魔道具を仕掛けるなどすると思っていたんだけど……
それらしいものを見つけることはできなかった。
アルベルトは僕達のことを信用している……なんて、そんな甘い話はないと思う。
盗聴の魔道具などを設置して、見つけられてしまった時は立場が悪くなる。
だから、あえてなにもしない……そんなところだと思う。
「これなら、一応、気兼ねなく色々な話をすることができるね」
「どうでしょうか……私達が盗聴の魔道具を見つけられなかった、という可能性もあります。あるいは、そういったものに頼らず、相手の動向を探ることができる方法を持っているかもしれません。そういうことを考えると、なかなか……」
「いいんじゃないかな?」
「え?」
「その時は、その時だよ。アルベルトが妙な行動に出たら、それはそれでわかりやすいよ。敵、って判断できる」
「……」
「なにも仕掛けられていないなら、それはそれでよし。少しだけ彼を信用することができる。どっちに転んでも損はないんじゃないかな?」
「……フェイトは、いつの間にか大きくなっていたのですね」
「え? え?」
ぎゅうっと、抱きしめられてしまう。
なんで?
というか、その、当たって……
「ふふ、気持ちいいですか?」
「な、なんのことかな!?」
慌ててソフィアから離れた。
「そ、それよりも、これからのことを決めないと」
「ごまかしましたね?」
「おとーさん、ごまかしたー」
「アイシャまで!?」
「子は親のことを真似るものよ」
リコリスが苦笑して、そう締めくくる。
「まあ、冗談はここまでにして……フェイトの言う通り、今後のことを話し合いましょう」
「アルベルトに協力するか、しないか……だね」
彼がやろうとしていることは、とても過激なことだ。
例えるなら……
足が病気になった時、普通は、病気の原因を特定して治療しようとする。
しかしアルベルトの場合は、他に病気が転移しないうちに、足を切り落としてしまう、というものだ。
とても過激な方法だけど、でも、一概に否定することもできない。
時と場合によっては、それが正しいこともある。
「もうどうしようもないほど領主が腐っているとしたら、彼のすることは正しいですね」
「うん……時間をかければかけるほど、街がダメージを受けてしまう。たくさんの人が苦しむことになる。だから、そうなる前に一気に決着をつける。悪いことじゃないと思う」
「ですが……彼の話が正しい、という前提があってのことですが」
そこだ。
アルベルトの話を聞いただけで、他に情報を持っていない。
彼が正しいのか。
それとも、実は領主が正しいのか。
それを判断することができない。
「まずは情報を集めないといけないね」
「しかし、私達の外出が許されるかどうか……」
「なら、このウルトラミラクルウルトラ妖精リコリスちゃんに任せなさい!」
今、ウルトラって二回言ったよね?
「あたしなら、すいすいっと抜け出して情報を集めてくることができるわ」
「「……」」
「二人揃って疑いの眼差し!?」
「だって……」
「ねえ?」
普段のリコリスの言動を知ると、どうにもこうにも不安になってしまう。
大丈夫だろうか?
なにかやらかしたりしないだろうか?
不用意にトラブルを持ってきたりしないだろうか?
心配の種は尽きない。
「大丈夫よ! このあたしが、見事、大きな情報を持ち帰ってみせるわ!」
「あっ、リコリス!?」
止める間もなく、窓の隙間からリコリスが飛び出してしまった。