水神を倒したことで、嵐はピタリと止んだ。
雨は上がり、風は穏やかなものに変わる。
空を覆っていた雨雲も消えて、太陽が顔を見せた。
氾濫寸前の川は、すぐに元に戻ることはないけど……
数日もすれば元の水位に下がるだろう。
アクアレイトは救われた。
誰かの力になることができた。
そのことはとても嬉しい。
嬉しいのだけど……
――――――――――
「むううう……!」
宿へ戻ると、不機嫌そうなソフィアが。
そんな彼女の前で正座をする僕とリコリス。
「無茶はしない、って約束しましたよね?」
「う、うん。そうだね」
「でも、リコリスの話を聞く限り、無茶をしたみたいですね?」
「そ、そうかな……? 無茶っていうほど無茶はしていないような……」
「一歩間違えたら、死んでいたかも……という攻撃を受けたと聞いていますが」
「うっ」
最後、水神が口から放ってきた水流のことだろう。
確かに、あれが直撃していたら即死だったと思う。
「危ないと感じた場合は、即撤退。二人で挑む……という約束をしていましたよね?」
「えっと……あれくらいなら、そんなに危ないことは……」
「危ないです!」
ピシャリと言われてしまい、反論の言葉を失う。
「前々から思っていましたけど、フェイトは自分のことに対して鈍感です。他人の痛みには敏感なのに、自分のことになると途端に鈍感になって、おざなりになってしまいます」
「そう……なのかな?」
「そうです!」
そんな自覚はなかった。
でも……
そう指摘されると、ソフィアの言う通りかもしれない。
奴隷生活が長かったから、誰かのために、と思うことが自然になって。
自分のことをないがしろにしていたのかもしれない。
「……もう」
「そ、ソフィア……?」
突然、ソフィアに抱きしめられてしまう。
ぎゅうっと、強く強く抱きしめられてしまう。
でも、痛いと思うことはなくて……
むしろ、温かくて優しい気持ちになれた。
「話を聞いて、とても心配したんですからね……」
「……ごめん」
「罰として、このまま抱きしめさせてください」
「それ、罰なの?」
「罰です」
「そっか……なら、じっとしていないとだね」
「はい」
静かで優しい時間が流れて……
「じー……」
「オフゥ……」
「「っ!?」」
アイシャとスノウがいることを思い出して、僕とソフィアはビクリと震えた。
顔を熱くしつつ、慌てて離れる。
「おとーさん、おとーさん」
「な、なに?」
「わたしも、ぎゅってして?」
「う、うん。もちろん! ほら、ぎゅー」
「えへへ」
抱きしめると、アイシャは嬉しそうに尻尾を振った。
「にひひ、アイシャが純粋でよかったわね」
「……うるさいですよ」
リコリスにからかわれて、ソフィアはさらに顔を赤くするのだった。
雨は上がり、風は穏やかなものに変わる。
空を覆っていた雨雲も消えて、太陽が顔を見せた。
氾濫寸前の川は、すぐに元に戻ることはないけど……
数日もすれば元の水位に下がるだろう。
アクアレイトは救われた。
誰かの力になることができた。
そのことはとても嬉しい。
嬉しいのだけど……
――――――――――
「むううう……!」
宿へ戻ると、不機嫌そうなソフィアが。
そんな彼女の前で正座をする僕とリコリス。
「無茶はしない、って約束しましたよね?」
「う、うん。そうだね」
「でも、リコリスの話を聞く限り、無茶をしたみたいですね?」
「そ、そうかな……? 無茶っていうほど無茶はしていないような……」
「一歩間違えたら、死んでいたかも……という攻撃を受けたと聞いていますが」
「うっ」
最後、水神が口から放ってきた水流のことだろう。
確かに、あれが直撃していたら即死だったと思う。
「危ないと感じた場合は、即撤退。二人で挑む……という約束をしていましたよね?」
「えっと……あれくらいなら、そんなに危ないことは……」
「危ないです!」
ピシャリと言われてしまい、反論の言葉を失う。
「前々から思っていましたけど、フェイトは自分のことに対して鈍感です。他人の痛みには敏感なのに、自分のことになると途端に鈍感になって、おざなりになってしまいます」
「そう……なのかな?」
「そうです!」
そんな自覚はなかった。
でも……
そう指摘されると、ソフィアの言う通りかもしれない。
奴隷生活が長かったから、誰かのために、と思うことが自然になって。
自分のことをないがしろにしていたのかもしれない。
「……もう」
「そ、ソフィア……?」
突然、ソフィアに抱きしめられてしまう。
ぎゅうっと、強く強く抱きしめられてしまう。
でも、痛いと思うことはなくて……
むしろ、温かくて優しい気持ちになれた。
「話を聞いて、とても心配したんですからね……」
「……ごめん」
「罰として、このまま抱きしめさせてください」
「それ、罰なの?」
「罰です」
「そっか……なら、じっとしていないとだね」
「はい」
静かで優しい時間が流れて……
「じー……」
「オフゥ……」
「「っ!?」」
アイシャとスノウがいることを思い出して、僕とソフィアはビクリと震えた。
顔を熱くしつつ、慌てて離れる。
「おとーさん、おとーさん」
「な、なに?」
「わたしも、ぎゅってして?」
「う、うん。もちろん! ほら、ぎゅー」
「えへへ」
抱きしめると、アイシャは嬉しそうに尻尾を振った。
「にひひ、アイシャが純粋でよかったわね」
「……うるさいですよ」
リコリスにからかわれて、ソフィアはさらに顔を赤くするのだった。