女将曰く……
嵐は二週間ほど前に発生したらしい。
街とその周辺を覆うほどの巨大な嵐は珍しいものの、絶対に起きないわけではない。
過去に何度か巨大な嵐が発生した記録もある。
ただ、その日以降、ずっと嵐が続いていた。
普通なら一日もあれば収まるはずなのに、一向に勢いが衰えることはない。
それどころか、少しずつ雨風の強さが増しているらしい。
川は大荒れ。
当然、船は欠航。
街の北と南が分断されてしまう。
それだけじゃない。
雨がずっと降り続いたせいで、川が増水して、決壊寸前だという。
あと三日も降り続いたらアウト。
この街は川に飲み込まれてしまうとか。
「そんなことになっているなんて……」
思わぬ事態に遭遇して、少し動揺してしまう。
「二週間も嵐が続くなんていう話、他の地域でも聞いたことがないのですが……」
「なにか原因があるのかな?」
「さてね……偉い学者さん達が調査をしたけれど、なにもわからなかったらしいよ。とにかく、街が沈む前に、あんた達は避難した方がいいよ。幸い、数日の猶予はあるからね」
「女将さんはどうするんですか?」
「あたしは他に行くところがないからね」
寂しい笑みを浮かべる。
「それに、ここは生まれ育った街だ。簡単に離れることはできないさ」
その気持ちはわかる。
仮にスノウレイクが災害で消えるとしても……
最後の最後まで、残るか逃げるか迷い続けると思う。
それだけ故郷というものは大事なのだ。
人の心の拠り所でもある。
帰る場所があるからがんばれる。
思い出の地があるからがんばれる。
たぶん、そういうことだと思う。
「……」
なんとかしたい。
強くそう思う。
でも、手がかりはゼロ。
情報収集をするにしても、この天気なので気軽に外に出ることができない。
それに時間もない。
学者も原因を突き止められなかったのに、数日で解決することができるのだろうか?
「フェイト」
あれこれ悩んでいると、ぎゅっと、ソフィアに抱きしめられた。
「そ、ソフィア……?」
「考えるだけじゃなくて、体を動かしてみませんか?」
僕の考えていること、全部、お見通しだったらしい。
「確かに、難しい問題です。闇雲に動いても仕方ないかもしれません。でも、がむしゃらに前に突き進むことで得られるものもあると思うんです」
「そっか……うん、そうだね」
ソフィアの言う通りだ。
状況は厳しい。
時間はない。
だからこそ、前に進んでいかないといけない。
「ありがとう、ソフィア」
「どういたしまして」
いつもソフィアに支えてもらっている、助けてもらっている。
改めて彼女がいることに感謝した。
「じゃあ、まずは情報収集を……」
「……その必要はないぞ」
ふと、しわがれた声が響いた。
振り返ると、ゆっくりとお酒を飲んでいる老人が。
「儂は、なにが起きているのか全て知っておる」
「やれやれ……ヘミングのじいさん、まだそんなことを言ってるのかい」
女将は呆れた様子だ。
知り合いなのかな?
「水神様の祟りとか、そんなことあるわけないだろう」
「水神様……?」
「祟り……?」
僕とソフィアは顔を見合わせた。
いったい、どういうことなのだろう?
嵐は二週間ほど前に発生したらしい。
街とその周辺を覆うほどの巨大な嵐は珍しいものの、絶対に起きないわけではない。
過去に何度か巨大な嵐が発生した記録もある。
ただ、その日以降、ずっと嵐が続いていた。
普通なら一日もあれば収まるはずなのに、一向に勢いが衰えることはない。
それどころか、少しずつ雨風の強さが増しているらしい。
川は大荒れ。
当然、船は欠航。
街の北と南が分断されてしまう。
それだけじゃない。
雨がずっと降り続いたせいで、川が増水して、決壊寸前だという。
あと三日も降り続いたらアウト。
この街は川に飲み込まれてしまうとか。
「そんなことになっているなんて……」
思わぬ事態に遭遇して、少し動揺してしまう。
「二週間も嵐が続くなんていう話、他の地域でも聞いたことがないのですが……」
「なにか原因があるのかな?」
「さてね……偉い学者さん達が調査をしたけれど、なにもわからなかったらしいよ。とにかく、街が沈む前に、あんた達は避難した方がいいよ。幸い、数日の猶予はあるからね」
「女将さんはどうするんですか?」
「あたしは他に行くところがないからね」
寂しい笑みを浮かべる。
「それに、ここは生まれ育った街だ。簡単に離れることはできないさ」
その気持ちはわかる。
仮にスノウレイクが災害で消えるとしても……
最後の最後まで、残るか逃げるか迷い続けると思う。
それだけ故郷というものは大事なのだ。
人の心の拠り所でもある。
帰る場所があるからがんばれる。
思い出の地があるからがんばれる。
たぶん、そういうことだと思う。
「……」
なんとかしたい。
強くそう思う。
でも、手がかりはゼロ。
情報収集をするにしても、この天気なので気軽に外に出ることができない。
それに時間もない。
学者も原因を突き止められなかったのに、数日で解決することができるのだろうか?
「フェイト」
あれこれ悩んでいると、ぎゅっと、ソフィアに抱きしめられた。
「そ、ソフィア……?」
「考えるだけじゃなくて、体を動かしてみませんか?」
僕の考えていること、全部、お見通しだったらしい。
「確かに、難しい問題です。闇雲に動いても仕方ないかもしれません。でも、がむしゃらに前に突き進むことで得られるものもあると思うんです」
「そっか……うん、そうだね」
ソフィアの言う通りだ。
状況は厳しい。
時間はない。
だからこそ、前に進んでいかないといけない。
「ありがとう、ソフィア」
「どういたしまして」
いつもソフィアに支えてもらっている、助けてもらっている。
改めて彼女がいることに感謝した。
「じゃあ、まずは情報収集を……」
「……その必要はないぞ」
ふと、しわがれた声が響いた。
振り返ると、ゆっくりとお酒を飲んでいる老人が。
「儂は、なにが起きているのか全て知っておる」
「やれやれ……ヘミングのじいさん、まだそんなことを言ってるのかい」
女将は呆れた様子だ。
知り合いなのかな?
「水神様の祟りとか、そんなことあるわけないだろう」
「水神様……?」
「祟り……?」
僕とソフィアは顔を見合わせた。
いったい、どういうことなのだろう?