翌朝。
太陽が昇って間もない時間に獣人の里を発つことにした。
アイシャは眠そうにしてて申しわけないのだけど、明るいうちに距離を稼いでおきたい。
「お世話になりました」
「こちらこそ、色々と助けていただき、本当に感謝しております」
クローディアさんと握手を交わす。
他にも、見送りに来てくれた長や顔見知りの獣人達と握手をした。
「姫様と神獣様のこと、よろしくお願いいたします」
意外というか、クローディアさん達は、僕達が二人を連れていくことに反対しなかった。
思うところは色々とあったみたいだけど、それは口に出さないで、こちらの判断を尊重してくれた。
いや。
アイシャとスノウの判断を……かな?
二人が僕達と一緒にいることを望み……
そんなアイシャとスノウの想いを汲み取ってくれた形になる。
ひょっとしたら揉めるかもしれない。
そんなことを考えていたから、クローディアさん達の判断に感謝だ。
「……少しいいですか?」
「え? はい」
クローディアさんに小声で誘われて、二人きりになった。
「お願いがあります」
「なんですか?」
「黎明の同盟の目的は復讐……今も生きているかどうか、それはわかりませんが、昔の神獣様が関わっていると思います」
「そう……ですね」
人間に裏切られて。
大事なものを奪われて。
その恨みと怒りが今も続いている。
継ぐ者がいる。
「もしも、かつての神獣様が今も生存してて、黎明の同盟の指揮をとっているのだとしたら……討ってくれませんか?」
「それは……でも、いいんですか?」
「構いません」
クローディアさんの心情としては、神獣に寄っているはず。
それなのに、討ってほしいなんて……
僕の考えていることを察した様子で、クローディアさんは苦い表情に。
「……確かに、心情的には神獣様の味方でありたいです」
「なら……」
「ですが、愚かな行いをした人間はもういません。とっくに死んでいます」
「……」
「それなのに、今の人間に復讐をするのは……間違っていると思うのです。それは正当な復讐ではなくて、ただの八つ当たりです」
「そう……だね」
それと、もう一つ。
彼らの行いを許してはいけないところがある。
黎明の同盟は、復讐のために力を求めた。
そのために魔剣を作り力を得て、同時に、世界を混乱に陥れようとした。
でも……
魔剣を作るためにアイシャを狙う。
同じような獣人を狙う。
仲間の無念を晴らすために仲間を犠牲にする。
そんなこと間違っている。
「ですから、どうか……」
「はい。約束します」
色々な想いがある。
僕達にも黎明の同盟にも、それぞれの正義がある。
だから僕は、自分の信じる道を進もう。
――――――――――
「ばいばーい」
スノウの背中に乗るアイシャが、見送りをしてくれるクローディアさん達に手を振る。
微笑ましい姿に自然と笑みがこぼれた。
「……フェイト」
「うん?」
「さっきはなにを話していたのですか?」
「……後のことはお願い、っていう話かな」
「そうですか……なら、がんばらないといけませんね」
「そうだね」
ソフィアと二人、決意を新たにしていると、
「ねえねえ、王都までどれくらいかかるの?」
リコリスがふわりと目の前にやってきて、そう尋ねてきた。
「えっと……」
「歩きだと二ヶ月くらいですね」
「にっ!?」
リコリスがふらふらと地面に落ちる。
「そんなに歩いてられないわ……かよわいリコリスちゃんには酷な旅よ」
リコリスはいつも飛んでいるのでは……?
「大丈夫ですよ。少し先に行ったところにある街で馬車を拾います。それなら、二週間ほどでつきますよ」
「それでも二週間かかるのね……」
再びリコリスがふらふらになってしまう。
性格的に退屈を嫌っているんだろうな。
気持ちはわかるけど、こればかりはどうしようもない。
「ま、仕方ないわね! こうなったら、その街で観光を楽しみましょ!」
「中継地点だからね……?」
切り替えが早いのもリコリスの特徴だった。
太陽が昇って間もない時間に獣人の里を発つことにした。
アイシャは眠そうにしてて申しわけないのだけど、明るいうちに距離を稼いでおきたい。
「お世話になりました」
「こちらこそ、色々と助けていただき、本当に感謝しております」
クローディアさんと握手を交わす。
他にも、見送りに来てくれた長や顔見知りの獣人達と握手をした。
「姫様と神獣様のこと、よろしくお願いいたします」
意外というか、クローディアさん達は、僕達が二人を連れていくことに反対しなかった。
思うところは色々とあったみたいだけど、それは口に出さないで、こちらの判断を尊重してくれた。
いや。
アイシャとスノウの判断を……かな?
二人が僕達と一緒にいることを望み……
そんなアイシャとスノウの想いを汲み取ってくれた形になる。
ひょっとしたら揉めるかもしれない。
そんなことを考えていたから、クローディアさん達の判断に感謝だ。
「……少しいいですか?」
「え? はい」
クローディアさんに小声で誘われて、二人きりになった。
「お願いがあります」
「なんですか?」
「黎明の同盟の目的は復讐……今も生きているかどうか、それはわかりませんが、昔の神獣様が関わっていると思います」
「そう……ですね」
人間に裏切られて。
大事なものを奪われて。
その恨みと怒りが今も続いている。
継ぐ者がいる。
「もしも、かつての神獣様が今も生存してて、黎明の同盟の指揮をとっているのだとしたら……討ってくれませんか?」
「それは……でも、いいんですか?」
「構いません」
クローディアさんの心情としては、神獣に寄っているはず。
それなのに、討ってほしいなんて……
僕の考えていることを察した様子で、クローディアさんは苦い表情に。
「……確かに、心情的には神獣様の味方でありたいです」
「なら……」
「ですが、愚かな行いをした人間はもういません。とっくに死んでいます」
「……」
「それなのに、今の人間に復讐をするのは……間違っていると思うのです。それは正当な復讐ではなくて、ただの八つ当たりです」
「そう……だね」
それと、もう一つ。
彼らの行いを許してはいけないところがある。
黎明の同盟は、復讐のために力を求めた。
そのために魔剣を作り力を得て、同時に、世界を混乱に陥れようとした。
でも……
魔剣を作るためにアイシャを狙う。
同じような獣人を狙う。
仲間の無念を晴らすために仲間を犠牲にする。
そんなこと間違っている。
「ですから、どうか……」
「はい。約束します」
色々な想いがある。
僕達にも黎明の同盟にも、それぞれの正義がある。
だから僕は、自分の信じる道を進もう。
――――――――――
「ばいばーい」
スノウの背中に乗るアイシャが、見送りをしてくれるクローディアさん達に手を振る。
微笑ましい姿に自然と笑みがこぼれた。
「……フェイト」
「うん?」
「さっきはなにを話していたのですか?」
「……後のことはお願い、っていう話かな」
「そうですか……なら、がんばらないといけませんね」
「そうだね」
ソフィアと二人、決意を新たにしていると、
「ねえねえ、王都までどれくらいかかるの?」
リコリスがふわりと目の前にやってきて、そう尋ねてきた。
「えっと……」
「歩きだと二ヶ月くらいですね」
「にっ!?」
リコリスがふらふらと地面に落ちる。
「そんなに歩いてられないわ……かよわいリコリスちゃんには酷な旅よ」
リコリスはいつも飛んでいるのでは……?
「大丈夫ですよ。少し先に行ったところにある街で馬車を拾います。それなら、二週間ほどでつきますよ」
「それでも二週間かかるのね……」
再びリコリスがふらふらになってしまう。
性格的に退屈を嫌っているんだろうな。
気持ちはわかるけど、こればかりはどうしようもない。
「ま、仕方ないわね! こうなったら、その街で観光を楽しみましょ!」
「中継地点だからね……?」
切り替えが早いのもリコリスの特徴だった。