「アイシャとスノウのことだけど……」

 仲直りをした後、二人の話をする。

「ソフィアの言う通り、一緒に連れて行こうと思うんだ」
「えっと……いいのですか? フェイトはフェイトなりの考えがあったと思うのですが……」
「うん、そうだね。里で匿ってもらったら安全だと思っているよ」
「なら、どうして?」
「……ソフィアの方が二人のことを気にかけていたから、かな」

 僕は、リコリスに言われるまでアイシャとスノウのことを忘れていた。
 自分のことしか考えていなかった。

 でも、ソフィアは違う。
 誰に言われるでもなく、二人のことを自然と気にかけていた。
 僕とケンカをしていた時も、途中で二人を一番に考えるようにした。

 その差はとても大きいと思う。

「……そんなソフィアの意見なら正しいと思うんだ」
「そう……でしょうか?」
「そこで不安そうにならなくても」
「実のところ……フェイトの意見も一理あると思っていまして。どちらも正しい……みたいな感じでしょうか? なので、正しいかどうか、それは……」
「大丈夫」

 ソフィアの手をそっと握る。

 彼女の不安は理解できた。
 逆の立場だったら、僕も不安になっていたと思う。

 でも……
 そういう時のために僕がいるんだと思う。

「僕がソフィアを支えるよ。この選択が正解だった、って思えるように、一生懸命がんばるよ」
「……フェイト……」
「だから、自信を持って。いつものかっこいいソフィアになって」

 くすり、とソフィアは小さく笑う。

「かっこいい、というのは女性に対しての褒め言葉ではありませんよ?」
「ご、ごめん……つい」
「でも、フェイトにそう言われると、とてもうれしいです」

 ソフィアも僕の手を握る。

 手と手が触れ合い、熱が伝わる。
 温かくて、優しくて、心地よくて……
 ふんわりするような気分に。

 ずっとこうしていたい。

「これからも、私を助けてくれますか?」
「もちろん」
「なら、私もフェイトの隣にいますね……ずっと」
「う、うん」

 ともすれば、それはプロポーズみたいで……
 意識してしまった僕は、ちょっとぎこちなくなってしまう。

 ソフィアは無意識に言ったらしく、特に気にしていないみたいだ。

 指摘したら……
 たぶん、恥ずかしがって混乱すると思う。
 やめておこう。

 この幸せとむずがゆさは、今は独り占めだ。

「じゃあ、アイシャとスノウに今の話を……」
「待ってください」

 部屋を出ようとしたら、繋いだ手を引っ張られて引き止められてしまう。

「どうしたの?」
「もう遅いから、二人も寝ていると思います。明日でいいのでは?」
「あ、それもそうだね」
「それよりも今は……」

 ソフィアは、どことなく熱っぽい視線をこちらに向けてくる。

「今はもう少し……フェイトと二人きりでいたいです」
「え? そ、それは……」
「そ、その……変な意味ではなくてですね? 最近、色々あって二人きりになれなかったので……たまには、と」

 言われてみると、二人きりの時間を持つことがなかった。

 アイシャとスノウと一緒にいるのが嫌、っていうわけじゃない。
 二人との時間はとても大事で幸せだ。

 でも、それとは別に、ソフィアと二人きりの時間が欲しいというわがままもある。

「なら……もう少し一緒にいようか?」
「はい!」

 ソフィアはとびきりの笑顔で頷くのだった。