アイシャとスノウが消えた。

 話によると、二人は空き家で待機していたのだけど……
 ちょっと目を離した隙に消えてしまったらしい。

 自分達で移動したのか?
 それとも、誰かにさらわれたのか?

 後者だろうか?
 その可能性は考えたくないけど、でも、レナの件があるから疑り深くなってしまう。

 なんて慌てていたら……

「姫様と神獣様を発見しました!」

 ほどなくして朗報が飛び込んできた。
 やけに早い。

「二人はどこに?」
「それが、その……」

 報告に来た獣人は、なにやらとても困った顔をしていた。



――――――――――



「すぅ……すぅ、すぅ……」
「スピー……スピー……」

 村の外れにある大きな木。
 その木陰で、アイシャとスノウが抱きしめ合うようにして昼寝をしていた。

 木の葉の隙間から差し込む陽光。
 それと、そっと吹く穏やかな風。
 それらがとても心地良い様子で、二人は幸せそうな顔をしている。

「散歩をして、そのままここで昼寝をしてしまったみたいですね」

 やれやれ、とソフィアがため息をこぼす。

 ただ、怒っているわけじゃない。
 やんちゃをして泥まみれになった子供を見て、仕方ないわね、と苦笑する母親そのもので……
 とても優しい顔をしていた。

「どうしようか?」
「もう少し寝かせてあげましょう。起こすのは、なんだかかわいそうです」
「そうだね」

 幸せそうに昼寝をするアイシャとスノウの隣に座り、僕とソフィアも穏やかな時間を過ごした。



――――――――――



 その後……
 一時間くらいしたところでアイシャとスノウが起きた。

 二人を連れて、改めて村長の家へ。
 そこで今後のことを話し合う。

「アイシャ、スノウ。二人の力を借りて、ここに結界を作りたいんだ。お願いしてもいいかな?」
「わたし……そんなことできるの?」
「うん、できるよ」
「……」

 アイシャは不安そうだ。

 それも仕方ない。
 膨大な魔力を持っていることは判明したものの、結界の構築なんてしたことはない。
 やっていないことをやってほしいとお願いされて、不安を覚えない人なんていない。

「大丈夫よ」

 自信たっぷりに言うリコリスだ。

「あたし、結界の構築にはそれなりの知識と経験があるの。あたしがいれば成功間違いなしね!」
「リコリスって、なんでもできるんだね」
「ふふん、万能無敵妖精リコリスちゃんって呼んでもいいのよ?」

 ちょっと長いかな。

「結界はすぐに構築できるのですか?」
「んー……さすがに準備と軽い練習が必要ね。三日は欲しいわね」
「三日ですか……」

 ソフィアは渋い顔に。
 なにしろ、少し前にレナがやってきたばかりだ。
 三日も守りきれるか、難しいだろう。

 でも、結界を構築すれば里の安全は確保できる。
 絶対安全って言い切れないけど……
 今よりはだいぶマシになるだろう。

 そのためにどうすればいいか?

「うーん」

 みんなで考えて……
 ちょっとしたアイディアを閃いた。

「こういうのはどうかな?」