「このぉっ!!!」
「はぁあああああ!!!」

 ソフィアと同時に前へ出た。

 剣を構えつつ駆けて……
 僕は右から。
 ソフィアは左から。
 交差するように、同時に剣を払う。

「ぐっ!?」

 僕とソフィアのタイミングが完全に一致して、レナに重い一撃を叩き込むことに成功した。
 防がれてしまうけど、でも、彼女は顔をしかめている。
 たぶん、予想外に重い一撃に手が痺れたのだろう。

 今がチャンスだ。

「これで……」

 追撃の一閃。

 しっかりと捉えたと思ったんだけど、でも、脅威的な反射神経で防がれてしまう。
 手が痺れていてコレなのだから、レナは本当に強い。

 でも、僕だけじゃない。

「終わりです!」

 続けて、ソフィアが前に出た。
 レナに激突するような勢いで駆けて、その勢いを乗せた突きを繰り出す。

 狙いはレナの急所じゃない。
 彼女の右手だ。

「あっ、ぐ!?」

 ソフィアの剣がレナの右手の甲を貫いた。
 レナの顔が苦痛に歪む。

 それでも、彼女は反撃に移ろうとした。
 痛みに耐えつつ、剣を振ろうとするが……

 カラン。

 しかし、剣を握ることができず落としてしまう。
 右手の甲を貫かれたことで、指に繋がる神経がいくらか断たれたのだろう。
 うまく指を動かせない様子で、その場に膝をついてしまう。

 そんなレナに、ソフィアは剣を突きつけた。

「終わりですね」
「くっ……」

 レナは、血の流れる右手の甲を押さえつつ、ソフィアを睨みつけた。

 もう剣は持てない。
 戦うことはできない。

 でも闘志はまったく衰えていない様子だ。
 剣がないなら拳がある。脚がある。
 どちらも断たれたとしたら、噛みついてでも戦ってやる。

 そんな意思を感じることができた。

 それだけじゃない。
 魔剣が持つ力を使えば、人を捨てる代わりに、レナは大きな力を得ることができるだろう。

 まだまだレナは戦うことができる。
 だから僕は……

「……ねえ、レナ」

 ぴくりとレナが震えた。
 そっと、彼女がこちらを見る。

 そんなレナに僕は……首を小さく横に振る。

「もうやめよう?」
「……」
「レナにも色々あるのわかったよ。譲れないものがあるっていうのもわかった」
「なら……」
「でもさ」

 本当の想いを口にする。

「僕は、レナと争いたくないよ」

 レナはひどいことをしてきたと思う。
 アイシャやスノウを傷つけて、他の人にも剣を向けてきた。

 でも……

「どうしても、君を嫌いになることはできないんだ」