「うあああああぁっ!!!」

 獣のように叫びつつ、レナが突撃をする。

 速い!

 まるで風の化身だ。
 目で追うことができなくて、気がつけば距離を詰められている。

 僕が対処するのは難しい。
 でも……

「甘いです!」

 ソフィアが前に出て、レナの突撃を止めてくれた。

「ありがとう、ソフィア」
「どういたしまして」

 僕ができないことは、素直にソフィアを頼ればいい。
 そして、頼った分、働いてみせればいい。

 それだけのこと。

「破山!」

 ソフィアがレナの動きを止めている間に、横から技を叩き込む。

 レナはちらりとこちらを見た。
 魔剣を右手だけで持ち、再び左手に短剣を抜く。

 ギィンッ!

 左手の短剣をこちらに叩きつけて、僕の剣の軌道を逸らしてみせた。

 やっぱりというか、多対一の戦いに慣れている。
 目が倍あるかのように、正確に戦場を把握していて、隙がまるでない。

 でも……

「負けてたまるもんか!」

 手数を増やしても意味がない。
 そう考えた僕は、攻撃頻度を減らし、代わりに精度と威力を高めた一撃を繰り出していく。

 一方のソフィアは、ひたすらに加速。
 秒間、三撃放つような神業を披露しつつ、ひたすらに手数を増やしていく。

「くっ……!?」

 対称的な攻撃を繰り出されて、レナは苦い顔に。

 僕もそれなりに経験を積んだからわかる。
 こんな攻撃をされると、ものすごくやりにくい。
 レナも同じ気持ちらしく、苛立ちが溜まり、次第に攻撃が荒くなる。

「こんなところで、ボクは……!!!」
「ぐ!?」

 ここに来てレナの剣が加速した。
 それだけじゃなくて、重さも増す。

 まだ全力じゃなかった!?

 そう思うほどの急加速で、一気に戦況を盛り返していく。

 僕とソフィアの二人がかりなのに、それでも押されてしまう。
 それほどの相手……ということ?

 いや、でも……

「ボクは、ボクは……もう二度と負けるわけにはいかないんだ!!!」

 魂を震わせているような、そんな叫び。
 その迫力に押されてしまいそうになる。

「フェイト」
「……あ……」

 静かな声をかけられた。
 ちらりと見ると、ソフィアが優しく笑う。

 言葉はない。
 でも、私が一緒にいます、と言っているかのようだった。

 うん、そうだ。
 僕は一人じゃない。
 ソフィアがいる。
 大好きな人が隣にいる。

 それだけで人はどこまでも強くなれる。

「フェイト!」
「うん。いこう、ソフィア!」

 ソフィアと一緒に前へ出た。