「つまらないもの……見せないでよっ!!!」

 レナは眩しいものを見るかのような目をこちらに向けて……
 次いで、ギンと鋭く睨みつけてきた。

 怨嗟のような声を吐き出しつつ、地面を蹴る。

 転移したかと思うような脅威的な加速力。
 気がつけばレナの姿が目の前にあった。

 でも、慌てることはない。

「このっ!」

 魔剣を流星の剣で受け止めた。

 力で押し切られてしまいそうになるけど、そこは我慢。
 両足に力を込めて耐える。

「フェイトから離れなさい!」
「ちっ」

 ソフィアの反撃に、レナはうっとうしそうに舌打ちをした。

 ただ、下手な動きをしたらやられてしまうのは理解しているんだろう。
 一度離れて……

「えっ」

 なにを思ったのか、レナは魔剣を投擲する。

 自ら武器を手放すという、ありえない行動。
 虚を突かれてしまい、一瞬、反応が遅れてしまう。

 それはソフィアも同じだった。
 避けることは間に合わないと判断したらしく、その場に留まる。
 そして剣を振り上げて、飛来する魔剣を弾いた。

 魔剣がくるくると宙を舞い……

「死ねぇえええええっ!!!」
「なぁ!?」

 あらかじめそうなることを予測していたのか、レナは、ベストな位置で魔剣をキャッチ。
 そのまま斬りかかってきた。

 剣を投げて、弾かれて、しかしそれをキャッチする。
 まるでサーカスの曲芸だ。

「山茶花!」
「破山!」

 僕とレナの技が真正面から激突した。

 予想外の動きに翻弄されてしまい、こちらの方が初動が遅い。
 でも、技の威力はこちらが上だったらしく、刃が競り合い、拮抗状態に持ち込むことができた。

 今度は逃さない!

 こちらから前に出て、ひたすらに力を叩きつけてやる。
 そうして撤退を許さないでいると、横からソフィアが飛び込む。

「これで!」
「うるさいっ!!!」

 レナは右手一つだけで魔剣を持つ。
 そして、空いた左手に忍び持っていた短剣を。

 短剣でソフィアの剣を受け止めた。
 名のあるものではなかったらしく、ギィンッと一撃で砕け散ってしまう。

 でも、防ぐことはできた。
 それで十分というかのように、レナはさらに数本の短剣を左手に持ち、投擲する。

 複数相手の戦いに慣れている。
 これが真王竜の力……?

「ボクはもう、我慢なんてしたくないんだから……全部、全部手に入れてやるんだ!」

 現状、戦況はレナに傾いている。

 こちらは二人いるのだけど……
 でも、レナの力が圧倒的だ。

 加えて、複数相手の戦いに慣れているため死角がない。
 隙もない。
 攻めあぐねている状態で、これが続くとまずい。

 まずいんだけど……

 ただ、レナはレナで苦しそうだ。
 自分の方が優位に立っているはずなのに、その表情に余裕はない。
 むしろ、とても苦しそうだ。

 それは……

 もしかしたら、レナの心を表しているのかもしれなかった。