「……」

 剣を突きつけられたレナは、信じられないという様子で目を丸くした。

 そのまま、しばらくの間、呆然として……
 やがて、ニヤリと笑みを作る。

「あはっ」

 小さな笑い声。
 それは哄笑に変わる。

「あはははははっ!!!」

 レナの戦意が膨れ上がる。
 やる気か……?

 距離を取り、剣を構える。

 ただ、レナは剣を抜くことなく、とにかく楽しそうに笑っていた。

「あーもうっ、ものすごくおもしろいんだけど。まさか、そんな風に言われちゃうなんて……ふふ、あははっ。思い出したら何度でも笑っちゃう」
「……」
「ボク、本気でフェイトのことが好きなんだよ?」

 笑顔を消して。
 冷たい表情でレナがこちらを見る。

「っ……!?」

 その瞳は、深い深い闇で満たされていた。
 どれだけの修羅場を潜れば、こんな目ができるようになるんだろう?

「本当に好きなんだけど……」

 ゆっくりと、レナは剣を抜いた。

 魔剣ティルフィング。
 修理は終わっていたらしく、刃には傷一つない。

「ボクの邪魔をするなら、死んでもらうしかないね」
「っ!?」

 強烈な殺気が放たれた。
 質量を感じてしまうほどのもので、思わず、一歩後ろへ下がってしまう。

 って……ダメだ!
 戦う前から気持ちで負けていたら、絶対に勝つことはできない。

 負けるわけにはいかない。
 絶対に!

「……」

 軽い深呼吸をして、乱れた心を落ち着かせる。

 体の震えが止まる。
 呼吸が正常に戻る。

 剣を構えて、レナをまっすぐに見据えた。

「へぇ」

 レナが笑う。
 楽しそうに笑う。
 心底楽しそうに……嗤う。

「この殺気は本物で本気なんだけど……耐えるんだ。耐えるだけじゃなくて、立ち向かおう、って思えちゃうんだ。これに耐えられるのって、あの剣聖くらいだと思っていたんだけど……」
「いつまでもソフィアに守られてばかりじゃいられないから」
「あはっ」

 レナが笑い声をこぼした。

「うんうん、うんうんうん! いいよ、すごくいいよ。ボクの予想をこんなにも上回ってくるなんて……あー、ホントにやばい。もうダメ。今日、絶対にフェイトをボクのものにしてみせるんだから」

 レナも剣を構えた。
 そして、笑みを消す。

「フェイト……ボクのものになって?」

 その問いかけに、僕は……