「聖剣が……」
僕が知っている聖剣は、ソフィアが持つエクスカリバーだけ。
邪悪を祓う剣。
闇を切り裂く希望の光。
聖剣エクスカリバー。
「聖剣は、獣人がありったけの力を込めて作った最終兵器のようなもの。でも、試作品っぽいところもあって、量産はできなかったんだ。作ることができたのは、三本だけ、って聞いているよ」
「そのうちの一本が、ソフィアが持っているエクスカリバー?」
「そういうこと。残りの二本は、ボクも知らないんだよねー。って、話が逸れた。で……聖剣の代わりの、ちょっとランクが落ちる武器を量産したり、あるいは結界を展開するとかして、獣人は色々と協力したんだ。おかげで、人間の被害は減ってめでたしめでたし」
レナはにっこりと笑う。
でも、次の瞬間には、その笑みは消えた。
「って、そうそう、うまくはいかなかったんだよねー」
レナは、やれやれといった様子で肩をすくめてみせた。
その表情には、ハッキリとした怒りと憎しみが現れている。
「一部の人間は、こう考えた。獣人を利用すれば、もっと強くなれるのではないか? もっともっと豊かな生活を手に入れられるのではないか?」
「それは……」
「人間って、ホント欲深くてどうしようもない生き物だよねー。それって昔から変わってなくて、ダメダメすぎるよね。そう思わない?」
「……」
返す言葉がない。
人間の全部がそうだなんて言うつもりはないけど……
でも、世の中には色々な人がいる。
良い人がいれば、悪い人もいる。
だから……
レナの言葉には、大きな説得力があった。
「で、色々な人間が暗躍を始めて、暴走をして……ついには、禁忌に手を染めたんだ」
「禁忌っていうのは……?」
「神獣の子供に手を出した」
そう語るレナは、とても冷たい顔をしていた。
感情の一切を削ぎ落としてしまったかのようで……
思わず背中が震えてしまう。
「当時の人間は、神獣の子供を拉致して、生贄にしたんだ」
「そんなことが……」
「神獣の子供の力を利用した、一種の結界を展開したの。その結界内では常に豊作になって、幸せが訪れて、災厄が退けられる」
それは、とても理想的な話だ。
誰もが望んでやまないものだろう。
でも……
そのために誰かを犠牲にするなんて、絶対に間違っている。
レナも同じ想いを抱いているらしく、拳を強く握りしめていた。
「その結界は色々な場所にあるんだけど……その一つが、ブルーアイランド」
「えっ」
「ボク達は、あえて魔剣をばらまいて街の空気を壊して、封印を解いたんだ」
「……ちょっとまって。なら、どうしてスノウがおかしくなったの?」
「封印が解かれると同時に、生贄にされた神獣の子供の恨み憎しみがあふれたんだよ。それが今代の神獣に乗り移り……っていう感じ」
凄絶な話だった。
聞いているだけで胸が痛くなる。
それでも逃げるわけにはいかない。
スノウの家族として。
一人の人間として。
きちんと真実と向き合わないといけない。
「話は戻るけど……子供をさらわれて怒らない親はいないよね? 神獣は怒った。それはもう激怒した。人間達は、あれこれと口八丁で言い含めるつもりだったらしいけど、そんなことはできなくて……まあ、戦争が起きたよね」
「当然の流れ……だよね」
「血で血を洗うような泥沼の戦争になって……最終的に神獣が負けたんだ。その力は圧倒的だったけど、人間達は聖剣を持ち出していたから、それで追い込まれちゃったみたい」
「……」
「かくして、復讐の鬼となった神獣は封印されて、人間は平和を勝ち取りました……めでたしめでたし」
レナは茶化すように言うけど、ぜんぜんめでたくない。
むしろ、バッドエンドでは?
「そんなことがあったなんて、ぜんぜん知らなかった……」
「まー、仕方ないよ。獣人の神様の子供を殺しました、とか言えないからね。そこら辺の歴史は、都合のいいように捏造されているよ」
「……もしかして」
ふと、とある可能性に思い至る。
「黎明の同盟は、かつての神獣の関係者?」
「正解」
レナはニヤリと笑い、僕の言葉を肯定するのだった。
僕が知っている聖剣は、ソフィアが持つエクスカリバーだけ。
邪悪を祓う剣。
闇を切り裂く希望の光。
聖剣エクスカリバー。
「聖剣は、獣人がありったけの力を込めて作った最終兵器のようなもの。でも、試作品っぽいところもあって、量産はできなかったんだ。作ることができたのは、三本だけ、って聞いているよ」
「そのうちの一本が、ソフィアが持っているエクスカリバー?」
「そういうこと。残りの二本は、ボクも知らないんだよねー。って、話が逸れた。で……聖剣の代わりの、ちょっとランクが落ちる武器を量産したり、あるいは結界を展開するとかして、獣人は色々と協力したんだ。おかげで、人間の被害は減ってめでたしめでたし」
レナはにっこりと笑う。
でも、次の瞬間には、その笑みは消えた。
「って、そうそう、うまくはいかなかったんだよねー」
レナは、やれやれといった様子で肩をすくめてみせた。
その表情には、ハッキリとした怒りと憎しみが現れている。
「一部の人間は、こう考えた。獣人を利用すれば、もっと強くなれるのではないか? もっともっと豊かな生活を手に入れられるのではないか?」
「それは……」
「人間って、ホント欲深くてどうしようもない生き物だよねー。それって昔から変わってなくて、ダメダメすぎるよね。そう思わない?」
「……」
返す言葉がない。
人間の全部がそうだなんて言うつもりはないけど……
でも、世の中には色々な人がいる。
良い人がいれば、悪い人もいる。
だから……
レナの言葉には、大きな説得力があった。
「で、色々な人間が暗躍を始めて、暴走をして……ついには、禁忌に手を染めたんだ」
「禁忌っていうのは……?」
「神獣の子供に手を出した」
そう語るレナは、とても冷たい顔をしていた。
感情の一切を削ぎ落としてしまったかのようで……
思わず背中が震えてしまう。
「当時の人間は、神獣の子供を拉致して、生贄にしたんだ」
「そんなことが……」
「神獣の子供の力を利用した、一種の結界を展開したの。その結界内では常に豊作になって、幸せが訪れて、災厄が退けられる」
それは、とても理想的な話だ。
誰もが望んでやまないものだろう。
でも……
そのために誰かを犠牲にするなんて、絶対に間違っている。
レナも同じ想いを抱いているらしく、拳を強く握りしめていた。
「その結界は色々な場所にあるんだけど……その一つが、ブルーアイランド」
「えっ」
「ボク達は、あえて魔剣をばらまいて街の空気を壊して、封印を解いたんだ」
「……ちょっとまって。なら、どうしてスノウがおかしくなったの?」
「封印が解かれると同時に、生贄にされた神獣の子供の恨み憎しみがあふれたんだよ。それが今代の神獣に乗り移り……っていう感じ」
凄絶な話だった。
聞いているだけで胸が痛くなる。
それでも逃げるわけにはいかない。
スノウの家族として。
一人の人間として。
きちんと真実と向き合わないといけない。
「話は戻るけど……子供をさらわれて怒らない親はいないよね? 神獣は怒った。それはもう激怒した。人間達は、あれこれと口八丁で言い含めるつもりだったらしいけど、そんなことはできなくて……まあ、戦争が起きたよね」
「当然の流れ……だよね」
「血で血を洗うような泥沼の戦争になって……最終的に神獣が負けたんだ。その力は圧倒的だったけど、人間達は聖剣を持ち出していたから、それで追い込まれちゃったみたい」
「……」
「かくして、復讐の鬼となった神獣は封印されて、人間は平和を勝ち取りました……めでたしめでたし」
レナは茶化すように言うけど、ぜんぜんめでたくない。
むしろ、バッドエンドでは?
「そんなことがあったなんて、ぜんぜん知らなかった……」
「まー、仕方ないよ。獣人の神様の子供を殺しました、とか言えないからね。そこら辺の歴史は、都合のいいように捏造されているよ」
「……もしかして」
ふと、とある可能性に思い至る。
「黎明の同盟は、かつての神獣の関係者?」
「正解」
レナはニヤリと笑い、僕の言葉を肯定するのだった。