「ふう……」

 どうにかこうにか魔物を撃退することができた。

 個々の強さはそれほどでもなかったんだけど……
 数が多いから大変だった。

 単純に敵を倒せばいい、っていうわけじゃない。
 里に被害が及ばないように、守りながらの戦いだ。
 防戦というのは経験した回数が少なくて、ちょっと苦戦した。

 できるなら、今後に備えて訓練しておきたいんだけど……
 防戦の訓練ってどうすればいいんだろう?
 今度、ソフィアに聞いてみよう。

 それはともかく。

「ありがとうございます! 姫様と神獣様を助けていただくだけではなくて、里も救ってくださるとは!」
「あんた達は、この里の英雄だ!」
「よし、みんな! 宴の準備をするわよ!」

 たくさんの獣人達が、僕達に笑顔を向けてくれていた。

 里が襲われたことは残念だけど……
 でも、魔物を撃退したことで、僕達のことを信頼してくれたみたいだ。
 不幸中の幸い……っていうのかな?

「えっと……宴の準備なんてしていいんですか? 怪我人の治療とか、家屋の修復を優先するべきじゃあ……?」

 そう長老に尋ねると、笑顔を返される。

「あなた達のおかげで、怪我人はほぼほぼいません。逃げる時に転んだ、というくらいです。家屋の被害も、すぐに修理できるものです。なればこそ、今はあなた達を歓迎したい」
「ありがとうございます」

 ここまで言われたら断る方が失礼だ。
 素直に歓待を受けることにした。

 準備ができるまでの間、長老の家の客間で待機することに。
 客間は広く、ベッドも四つ、設置されていた。

 その一つに座りつつ、ソフィアに声をかける。

「ねえ、ソフィア」
「なんですか?」
「さっきの魔物の襲撃だけど……」

 ちょっと迷う。
 でも、そのまま言葉を続けることにした。

「なんか、ブルーアイランドの時と似ていないかな?」

 根拠はない、直感による話だ。
 だから迷ったのだけど……

 でも、ソフィアなら真剣に向き合ってくれる。
 そう判断して、話をすることにした。

「ブルーアイランドは、魔剣を手にした人がおかしくなったんだけど……なんていうか、その時の空気と似ていたような気がして」
「……フェイトもそう思っていたんですね」
「ということは……」
「はい、私も同じ考えです」

 ソフィアは考える仕草をしつつ、小さく頷いてみせた。

「普通、魔物は群れをなしません。同じ個体同士でなら群れを作ることはありますが、異なる種となると、組織だった行動は不可能です。それらを統率する強力な個体がいるのなら、話は別になりますが……」
「そんな強い魔物はいなかった」
「はい。なので、あれだけの魔物が一斉に里を襲う理由が不可解なのです。納得できません」
「ブルーアイランドの時のように、誰かが先導していた……って考えるのが自然かな?」
「はい。そして、その犯人は……」
「あのボクっ娘ってわけね!」

 最後、リコリスが結論をかっさらっていく。

「あ、リコリス」
「おとーさん、おかーさん!」
「オンッ!」
「アイシャとスノウも」

 三人共、無事ということは聞いていたけど……
 里の様子を確認したり話を聞くことを優先していたため、顔を見れていなかった。

「その様子だと、なにもなかったみたいだね」
「大丈夫よ。魔物達は二人が追い払ってくれたんでしょ? ま、あたしのところまで来たとしても、リコリスちゃんミラクルパワーでギッタギタにしてたけどね!」

 頼もしい……のかな?

「リコリスも同じ結論に達していたのですか?」
「まーねー。けっこう状況が似てるし、あの時と同じヤナ感じもしたし。関連を疑わない方がおかしいっしょ」
「なるほど」

 三人の意見が一致した。

 まあ、それでも確定とは言えないのだけど……
 でも、そうだと仮定して動いた方がいいだろう。

 つまり……
 今回の獣人の里の襲撃にレナが関わっている、と。

「断定はできないけど、可能性は高いですね」
「でも、なにが目的なんだろう?」
「獣人が目的なんじゃない? あいつらいてこましたる、みたいなー?」

 そういう言葉、どこで覚えてきているの?

「レナが……黎明の同盟の目的に獣人が絡んでいるのは間違いないと思うよ? でも、どうして、っていうところはわからないよね」
「それはまあ……」
「なんで獣人を狙うのか? なんでアイシャを狙うのか? なんでスノウを狙うのか? わかりそうでわからないというか……うーん」

 なかなか判断が難しい。
 本人から話を聞くことができれば、それがベストなんだけど……うーん?

「……」

 考えて。
 考えて。
 考えて。

「あ」

 ピコーンと閃いた。