「えっと……野営道具は元からあるし、水と食料も買った。予備の武器もある。虫除け、魔物除けの結界も大丈夫。あとは……あ、そうだ。お菓子とドッグフードを買っておかないと」
買い物リストを確認しつつ、街中を歩く。
雪に覆われた街、スノウレイク。
十年以上離れていたため、とても懐かしい。
こうして歩いているだけで、なんだか不思議と優しい気持ちになることができた。
「あ」
「おや?」
ふと、クローディアさんと遭遇した。
向こうも買い物をしていたらしく、片手に荷物袋を下げている。
「買い物ですか?」
「ええ。里にはないものをここで購入しています故」
「なるほど。離れたところにあると、そういうところは不便ですね」
「はい。ただ、あまり近くに里を作るのも……まあ、色々とありまして」
言葉を濁すクローディアさん。
その言葉の奥を悟り、微妙な気持ちになってしまう。
獣人が人里離れたところで暮らしているのは、僕達、人間のせいだ。
アイシャがそうだったように、奴隷にしたり……
ひどいことを繰り返しているからだ。
「……ごめんなさい」
「え? どうして謝るのですか?」
「僕達人間のせいで、クローディアさん達に迷惑をかけているから……」
そう言うと、クローディアさんは優しい顔に。
「フェイトさんは優しいのですね」
「そんなことは……」
「いいえ、優しいですよ。本気で私達のことを想い、気遣ってくれている。それは、なかなかできることではありませぬ」
「でも、ただの同情かも……」
「同情が悪いなんてこと、私は思いませんよ。相手の立場になってものを考えるということですから」
「そう言ってもらえると助かります」
そのまま並んで話をする。
他愛のない日常会話だけど、でも、楽しい。
不思議な人だ。
一緒にいると安心できるというか、落ち着くことができる。
クローディアさんの優しい雰囲気がそうさせているのかな?
「ところで……今更の話ですが、私も買い物にご一緒しても?」
「はい、もちろんです」
「ありがとうございます。もう少し買いたいものがあって……ただ、どこに目的の店があるのかわからず、困っていたところなのです」
「なにを買いたいんですか?」
「ペット用品です」
「はい?」
聞き間違えかな?
そんなことを思うものの、クローディアさんは真面目な顔をして言う。
「この街に、ペット用品を扱うお店はございませんか?」
「えっと……一軒、そういう店はありますけど」
「よかった。お手数をおかけしてしまい恐縮ですが、案内していただけると幸いです」
「どうしてそんなところに……って、もしかして、スノウのため?」
「はい、もちろんです!」
食い気味に肯定された。
「スノウ様にご不便ご迷惑をおかけするわけにはまいりません。快適な旅を。そして、里でもなに一つ問題なく過ごしていただくために、必要なものを買い揃えないといけません!」
瞳に使命の炎をメラメラと燃やして、クローディアさんは強く語る。
ちょっと圧倒されてしまうのだけど……
クローディアさん獣人にとって、それだけスノウは大事な存在なんだろう。
そんなスノウが僕達と一緒にいていいのかな?
なんて、そんなことをチラリと考えてしまうのだけど……
「まあ、いいかな?」
肝心のスノウがアイシャと一緒にいることを望んでいる。
僕達にも懐いてくれている。
なら、問題はないだろう。
決めるのは、スノウ当人なのだから。
「でも、ペット用品でいいんですか? もっとこう、高級なものにするとか」
「……」
クローディアさんは気まずい顔をして、
「……神獣様は、なんだかんだで犬と同じなので」
そんな身も蓋もないことを言ってしまうのだった。
――――――――――
「ふう、こんなところですね」
買い物を無事に終える。
ただ、思った以上に時間がかかってしまい、空は赤くなり始めていた。
「お手伝いいただき、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございます。クローディアさんと色々な話ができて、うれしかったです」
また一つ、獣人のことを知ることができた。
少しだけど理解することができた。
アイシャのこともあるし、もっともっと理解していきたいと思う。
そうしていけば……
たぶん、僕達は本当の意味でわかりあえるはずだから。
「じゃあ、帰りましょうか」
「はい」
買い物リストを確認しつつ、街中を歩く。
雪に覆われた街、スノウレイク。
十年以上離れていたため、とても懐かしい。
こうして歩いているだけで、なんだか不思議と優しい気持ちになることができた。
「あ」
「おや?」
ふと、クローディアさんと遭遇した。
向こうも買い物をしていたらしく、片手に荷物袋を下げている。
「買い物ですか?」
「ええ。里にはないものをここで購入しています故」
「なるほど。離れたところにあると、そういうところは不便ですね」
「はい。ただ、あまり近くに里を作るのも……まあ、色々とありまして」
言葉を濁すクローディアさん。
その言葉の奥を悟り、微妙な気持ちになってしまう。
獣人が人里離れたところで暮らしているのは、僕達、人間のせいだ。
アイシャがそうだったように、奴隷にしたり……
ひどいことを繰り返しているからだ。
「……ごめんなさい」
「え? どうして謝るのですか?」
「僕達人間のせいで、クローディアさん達に迷惑をかけているから……」
そう言うと、クローディアさんは優しい顔に。
「フェイトさんは優しいのですね」
「そんなことは……」
「いいえ、優しいですよ。本気で私達のことを想い、気遣ってくれている。それは、なかなかできることではありませぬ」
「でも、ただの同情かも……」
「同情が悪いなんてこと、私は思いませんよ。相手の立場になってものを考えるということですから」
「そう言ってもらえると助かります」
そのまま並んで話をする。
他愛のない日常会話だけど、でも、楽しい。
不思議な人だ。
一緒にいると安心できるというか、落ち着くことができる。
クローディアさんの優しい雰囲気がそうさせているのかな?
「ところで……今更の話ですが、私も買い物にご一緒しても?」
「はい、もちろんです」
「ありがとうございます。もう少し買いたいものがあって……ただ、どこに目的の店があるのかわからず、困っていたところなのです」
「なにを買いたいんですか?」
「ペット用品です」
「はい?」
聞き間違えかな?
そんなことを思うものの、クローディアさんは真面目な顔をして言う。
「この街に、ペット用品を扱うお店はございませんか?」
「えっと……一軒、そういう店はありますけど」
「よかった。お手数をおかけしてしまい恐縮ですが、案内していただけると幸いです」
「どうしてそんなところに……って、もしかして、スノウのため?」
「はい、もちろんです!」
食い気味に肯定された。
「スノウ様にご不便ご迷惑をおかけするわけにはまいりません。快適な旅を。そして、里でもなに一つ問題なく過ごしていただくために、必要なものを買い揃えないといけません!」
瞳に使命の炎をメラメラと燃やして、クローディアさんは強く語る。
ちょっと圧倒されてしまうのだけど……
クローディアさん獣人にとって、それだけスノウは大事な存在なんだろう。
そんなスノウが僕達と一緒にいていいのかな?
なんて、そんなことをチラリと考えてしまうのだけど……
「まあ、いいかな?」
肝心のスノウがアイシャと一緒にいることを望んでいる。
僕達にも懐いてくれている。
なら、問題はないだろう。
決めるのは、スノウ当人なのだから。
「でも、ペット用品でいいんですか? もっとこう、高級なものにするとか」
「……」
クローディアさんは気まずい顔をして、
「……神獣様は、なんだかんだで犬と同じなので」
そんな身も蓋もないことを言ってしまうのだった。
――――――――――
「ふう、こんなところですね」
買い物を無事に終える。
ただ、思った以上に時間がかかってしまい、空は赤くなり始めていた。
「お手伝いいただき、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございます。クローディアさんと色々な話ができて、うれしかったです」
また一つ、獣人のことを知ることができた。
少しだけど理解することができた。
アイシャのこともあるし、もっともっと理解していきたいと思う。
そうしていけば……
たぶん、僕達は本当の意味でわかりあえるはずだから。
「じゃあ、帰りましょうか」
「はい」