「あー……うー?」

 僕の腕の中には、妹のルーテシアが。
 こちらに向けて手を伸ばしたりしている。

 たくさん動くから大変だ。
 落としたりしないように注意して……
 あと、ぐずったりしないように、抱き方にも気をつけて……

「うぅ……赤ちゃんって大変だ」
「ふふ、がんばってくださいね、お兄ちゃん」

 母さんは、にこにこと笑っていた。

 料理をする間、ルーテシアの面倒を見ることにしたんだけど……
 これが思っていた以上に大変だ。

 すごく儚い感じがして、絶対にミスはできないと緊張する。

「うぅ……」
「わわ!?」

 いきなりルーテシアが涙ぐむ。

 な、なんで!?
 僕、なにもしていないはずなのに。

「ダメですよー、フェイト」

 料理をしつつ、母さんがアドバイスをしてくれる。

「赤ちゃんは相手の感情に敏感ですからねー。フェイトが不安に思っていたら、赤ちゃんも不安になっちゃうの。だから、どーんと構えないとダメですよ」
「どーん、と……」

 そんなことを言われても難しい。

 なにしろ、故郷に帰ってきて、初めて妹がいると知ったんだ。
 しかも、こんなに小さい。

 どうしていいかわからなくて……
 ついつい引け腰になってしまうのも仕方ないと思う。

 って……

 そんな言い訳をしても、ルーテシアには関係ないか。
 妹を不安にさせているのは僕で……
 そして、僕はお兄ちゃんだ。
 なら、それらしくならないと。

「ルーテシア」
「うー……?」
「えっと……大丈夫。うん、大丈夫だからね」

 にっこりと笑い、軽く揺らしてみる。

 ルーテシアは目をパチパチとさせて、

「きゃっきゃっ」

 ご機嫌を取り戻してくれたみたいで、笑ってくれた。

 よかった……
 赤ん坊は泣くのが仕事と聞くけど、でも、やっぱり笑顔の方がいいよね。

「うー」

 ルーテシアは手を伸ばして……
 小さな小さな手で、僕の指を必死になって、ぎゅっと掴んだ。

「あ……」

 なんて小さい手なんだろう。
 でも、温かくて……
 こうしていると、不思議な気分になる。

 そんな僕達を見た母さんは笑顔に。

「ふふ。ルーテシアちゃんは、お兄ちゃんを好きになったみたいね」
「僕のことを……?」
「そう。ルーテシアちゃんは、好きな人に触れたがるの。私とか。パパはまだね」
「……父さん……」

 なんてかわいそうな。

 でも、それよりも……

「……ルーテシア……」
「あうー……あうっ」

 今更だけど。
 ようやくだけど。
 ルーテシアのことを妹だ、って……そう強く実感することができた。

 そして、同時に思う。

 僕は今まで、ソフィアやアイシャ。
 リコリスやスノウのために旅をして、戦ってきた。

 でも、それだけじゃない。
 この人の力になりたい、守りたい。
 そう思う人は、他にもたくさんいるんだ。

 ……ルーテシアのように。

「黎明の同盟をなんとかしなくちゃいけない理由……一つ、増えたかな」