雪水晶の剣の修理が完了して……
 雪水晶の剣改め、流星の剣を手に入れることができた。

 それに、すごく久しぶりに父さんと母さんと再会することができた。
 妹ができていたことは驚いたものの……
 みんな元気そうでなにより。

 ミントも昔と変わらず、とても元気そうにしていた。

 これで、スノウレイクでやるべきことは全部やった。

「これから、どうしようか?」

 ソフィア、アイシャ、リコリス、スノウ。
 みんなが部屋に集まった状態で、そんな話を切り出した。

「このままスノウレイクでスローライフを送る、という手もありますよ?」
「それは……」

 非常に魅力的な提案だ。

 いつまでも実家のお世話になるわけにはいかないから、家を借りるなり買うなりして独立して。
 ソフィアと一緒に、スノウレイクを拠点とした冒険者として活躍して。

 あるいは、父さんの跡を継いで鍛冶職人になるのもいいかもしれない。
 あと、いつの間にか生まれていた妹……ルーテシアの成長を見届けたい。

 でも……

「それはできないよ」

 アイシャのこと。
 そして、黎明の同盟のこと。

 これらの問題を放置するわけにはいかない。

 放置したら、なにかとんでもないことが起きるような……
 そんな気がした。

「わかっています。言ってみただけです」

 試されていたのかな?

「やっぱり、アイシャのことについてもっと知りたいよね」
「わたし?」

 アイシャの尻尾がくるっと丸くなる。
 『?』のマークを作っているみたいだ。

 かわいい。

「色々とわからないことが多いんだよね」

 アイシャの魔力量。
 神の子……巫女かもしれない、ということ。

 その辺りをハッキリとさせておきたい。
 そうすれば、自然と黎明の同盟の目的もわかると思う。

「なら、獣人族の里に行けばいいだろ」
「父さん?」

 いつから話を聞いていたのか、振り返ると父さんの姿が。

「わからないことがあるっていうのなら、同じ獣人に聞けばいいだろ」
「簡単に言うけど、里がどこにあるのかなんて……」
「俺は知っているぞ?」
「本当に!?」

 さらりと、とんでもないことを言われた。

 ついつい大きな声が出てしまい、驚いたアイシャの尻尾がピーンと立つ。
 ソフィアが、そんな娘を落ち着かせて……うん、ごめんなさい。

「えっと……どういうこと? もしかして、父さんは獣人の知り合いがいるの?」
「ああ、いるな。日々、色々な仕事をしているが、たまに獣人がやってくるんだよ」
「へえ……」

 さすが、鍛冶の神様に愛された男。
 その名は人間だけじゃなくて、獣人にも届いているようだ。

「ま、お前が言うように色々とあるからな。こっそり会って仕事を請けてるんだが……まあ、それなりの信頼関係は築いているつもりだ。俺の息子ってなら、話くらいは聞いてくれるだろ」
「……」
「なんだ、そのぽかんとした顔は?」
「父さんはすごいね」

 鍛冶職人として大成するだけじゃなくて。
 獣人の心を掴んでしまうほど、人脈に長けていて。

 本当にすごい。
 僕なんかとは比べ物にならない……

「おら」
「いたっ!?」

 いきなりげんこつを落とされた。

「今、つまらないこと考えていただろ?」
「つまらないことなんて……」
「俺は俺。お前はお前。そこにある差なんて気にするな」
「あ……」
「ってか、フェイトはまだまだガキだからな。これからだよ、これから」
「……うん、ありがとう」

 父さんの言葉が心に染み渡る。

 うん。
 卑屈になったりしないで、前を向いて歩いて行こう。

 そして、ソフィアにふさわしい男になって……
 あと、アイシャが誇れるような父親にならないと。

「で、どうする?」
「えっと……」

 みんなの方を見ると、任せる、という感じでうなずかれた。

「じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「わかった。今度、お得意さんの獣人が来る予定だから、その時に話をしてやるよ」
「それって、どれくらい先になるかわかる?」
「んー……一週間前後だろうな。正確な日付はわからん」
「一週間前後っていうだけでもわかっていれば十分だよ」

 それまでに旅の準備を進めておこう。

「それじゃあ……次の目的地は、獣人族の里、ということで!」