竜は自分を抱きかかえるようにして、氷の中で眠っていた。
その氷は地面から生えていて、天井にまで届くほどに巨大だ。
これが封印なのだろう。
ただ、ホルンさんが言っていたように、封印が解けようとしていた。
軽く触れてみると、溶け始めている。
どれくらいかかるのか、それはハッキリとは言えないけど……
そのうち氷が溶けて、煉獄竜は解放されてしまうだろう。
「これは……す、すごいね」
想像していたものの倍くらい大きい。
迫力も満点だ。
こんな相手に勝てるのだろうか? と不安になってしまうのだけど……
でも、右を見ればソフィアがいる。
反対側にはホルンさんがいる。
うん、大丈夫だ。
僕は一人じゃない。
頼もしい恋人と先輩がいる。
なら、きっとなんでもできるはずだ。
「フェイト、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
「なら良かったです」
彼女の笑顔がたくさんの勇気と元気を与えてくれた。
「では、封印を解くぞ」
「はい」
ホルンさんが氷漬けの煉獄竜に近づいて……
「ホルンさん、待ってください!」
それに気づいて、慌ててストップをかけた。
巧妙に隠しているけど、覚えのある気配が。
それと、よくよく見てみると、奥に人影が。
「そこにいるんだよね?」
「……」
「もう気づいているから、黙っていても無駄だよ」
「……ちぇ」
姿を見せたのは……
「うまく隠れたつもりだったんだけどなー。なんでわかったの? あ、これって愛の力?」
レナだった。
「むっ」
色々な意味でライバルのレナを発見したソフィアは、反射的にという様子で僕を抱き寄せた。
ぎゅっとされてしまう。
い、色々と当たっているのだけど……
でも、ソフィアは僕を離してくれない。
「むかっ。なに、それ。ボクを挑発しているの?」
「いいえ、そのようなことはありません。私とフェイトは相思相愛ですからね。あなたなんて道端の石のようなもので、相手にされることもありませんし」
「ぐぎぎぎ!」
「むむむ!」
二人がにらみ合い、バチバチと火花が散る。
「えっと……ソフィア? 今はこんなことをしている場合じゃ……なんでレナがこんなところにいるのか、それを問い詰めないと」
「はっ!? そ、そうですね……」
「でも、大体の予想はついているけど」
煉獄竜の封印が解け始めた。
そして、黎明の同盟であるレナが封印の地にいる。
この二つを偶然と考えるほど抜けているつもりはない。
「レナが煉獄竜の封印を解こうとしていたんだね?」
「正解♪」
「やけにあっさり認めるんだね」
「まあ、状況証拠が揃いまくりだからね。ここまできて否定しても、白々しすぎるでしょ? ならまあ、愛するフェイトのために素直に答えてあげようかな、って」
「フェイトを愛しているのは私です!」
そこ、対抗しないで。
「どうしてこんなことを……」
「あ、勘違いしないでね? 近くの街を滅ぼしてやろうとか、そういう物騒なことは考えてないから」
「どうでしょうか。あなたの性根はねじ曲がっていますからね。ちょっとしたいたずらで街を滅ぼそうとしても、おかしくないと思いますが」
「やだなー、さすにそんなことはしないって。ただ単に……って、素直に目的を話すところだった。面倒だから、隠したままにしておこうっと」
てへ、と笑うと、レナは洞窟の奥へ移動する。
「待ちなさい!」
「やだよー」
待てと言われて待つ者はいない。
そんなことを言うかのように、レナは奥へ消える。
「ま、今回は素直に退いておくよ。ばいばいーい」
そして、気配が完全に消えた。
レナの性格上、隠れて様子を見る、っていうことはなさそう。
たぶん、本当に立ち去ったのだろう。
「くううう……あの泥棒猫は!」
「お、落ち着いて、ソフィア。ここにレナがいたことは驚いたけど、でも、僕達がやるべきことは別のことだよ」
「……そうですね」
「ふむ? なにやら因縁のある相手じゃったが、よいのか?」
成り行きを見守っていたホルンさんが、そう尋ねてきた。
それに対してしっかりと頷いてみせる。
「大丈夫です。今の目的は煉獄竜を倒すことで、彼女を追うことじゃないですから」
「ならよいが……他に気を取られていると、それが致命傷になるかもしれぬぞ?」
「気をつけます」
レナのことは今は忘れよう。
煉獄竜の討伐だけを考える。
ソフィアも気持ちを切り替えたらしく、凛とした表情に。
そうやって僕らの覚悟が決まったのを感じたらしく、ホルンさんは表情を引き締めた。
「では……いくぞ」
その氷は地面から生えていて、天井にまで届くほどに巨大だ。
これが封印なのだろう。
ただ、ホルンさんが言っていたように、封印が解けようとしていた。
軽く触れてみると、溶け始めている。
どれくらいかかるのか、それはハッキリとは言えないけど……
そのうち氷が溶けて、煉獄竜は解放されてしまうだろう。
「これは……す、すごいね」
想像していたものの倍くらい大きい。
迫力も満点だ。
こんな相手に勝てるのだろうか? と不安になってしまうのだけど……
でも、右を見ればソフィアがいる。
反対側にはホルンさんがいる。
うん、大丈夫だ。
僕は一人じゃない。
頼もしい恋人と先輩がいる。
なら、きっとなんでもできるはずだ。
「フェイト、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
「なら良かったです」
彼女の笑顔がたくさんの勇気と元気を与えてくれた。
「では、封印を解くぞ」
「はい」
ホルンさんが氷漬けの煉獄竜に近づいて……
「ホルンさん、待ってください!」
それに気づいて、慌ててストップをかけた。
巧妙に隠しているけど、覚えのある気配が。
それと、よくよく見てみると、奥に人影が。
「そこにいるんだよね?」
「……」
「もう気づいているから、黙っていても無駄だよ」
「……ちぇ」
姿を見せたのは……
「うまく隠れたつもりだったんだけどなー。なんでわかったの? あ、これって愛の力?」
レナだった。
「むっ」
色々な意味でライバルのレナを発見したソフィアは、反射的にという様子で僕を抱き寄せた。
ぎゅっとされてしまう。
い、色々と当たっているのだけど……
でも、ソフィアは僕を離してくれない。
「むかっ。なに、それ。ボクを挑発しているの?」
「いいえ、そのようなことはありません。私とフェイトは相思相愛ですからね。あなたなんて道端の石のようなもので、相手にされることもありませんし」
「ぐぎぎぎ!」
「むむむ!」
二人がにらみ合い、バチバチと火花が散る。
「えっと……ソフィア? 今はこんなことをしている場合じゃ……なんでレナがこんなところにいるのか、それを問い詰めないと」
「はっ!? そ、そうですね……」
「でも、大体の予想はついているけど」
煉獄竜の封印が解け始めた。
そして、黎明の同盟であるレナが封印の地にいる。
この二つを偶然と考えるほど抜けているつもりはない。
「レナが煉獄竜の封印を解こうとしていたんだね?」
「正解♪」
「やけにあっさり認めるんだね」
「まあ、状況証拠が揃いまくりだからね。ここまできて否定しても、白々しすぎるでしょ? ならまあ、愛するフェイトのために素直に答えてあげようかな、って」
「フェイトを愛しているのは私です!」
そこ、対抗しないで。
「どうしてこんなことを……」
「あ、勘違いしないでね? 近くの街を滅ぼしてやろうとか、そういう物騒なことは考えてないから」
「どうでしょうか。あなたの性根はねじ曲がっていますからね。ちょっとしたいたずらで街を滅ぼそうとしても、おかしくないと思いますが」
「やだなー、さすにそんなことはしないって。ただ単に……って、素直に目的を話すところだった。面倒だから、隠したままにしておこうっと」
てへ、と笑うと、レナは洞窟の奥へ移動する。
「待ちなさい!」
「やだよー」
待てと言われて待つ者はいない。
そんなことを言うかのように、レナは奥へ消える。
「ま、今回は素直に退いておくよ。ばいばいーい」
そして、気配が完全に消えた。
レナの性格上、隠れて様子を見る、っていうことはなさそう。
たぶん、本当に立ち去ったのだろう。
「くううう……あの泥棒猫は!」
「お、落ち着いて、ソフィア。ここにレナがいたことは驚いたけど、でも、僕達がやるべきことは別のことだよ」
「……そうですね」
「ふむ? なにやら因縁のある相手じゃったが、よいのか?」
成り行きを見守っていたホルンさんが、そう尋ねてきた。
それに対してしっかりと頷いてみせる。
「大丈夫です。今の目的は煉獄竜を倒すことで、彼女を追うことじゃないですから」
「ならよいが……他に気を取られていると、それが致命傷になるかもしれぬぞ?」
「気をつけます」
レナのことは今は忘れよう。
煉獄竜の討伐だけを考える。
ソフィアも気持ちを切り替えたらしく、凛とした表情に。
そうやって僕らの覚悟が決まったのを感じたらしく、ホルンさんは表情を引き締めた。
「では……いくぞ」