「あれ、アイシャ? まだ起きていたの?」
工房にいなかったので寝ていたと思ったのだけど、違ったみたいだ。
「どうしたんですか、アイシャちゃん。もう寝る時間ですが……ひょっとして、うるさくしてしまいましたか?」
「ううん、そんなことないよ」
「では、どうして……」
「気になって、そこで話を聞いていたの」
アイシャは扉の外を指差した。
すぐそこにいたみたいだけど、ぜんぜん気づかなかった。
それだけ話に集中していたのだろう。
「わたし、お手伝いできないかな?」
「え?」
「私は魔力がすごいいっぱい、って」
「あ」
そういえば、そうだった。
スノウレイクまで旅をして、ミスリルを手に入れて……
色々とあったせいで忘れていたけど、アイシャの魔力量はとんでもないんだった。
落ち着いたら、また魔法の練習をと思っていたんだけど……
これはアリかな?
「どういうことなんだ?」
事情を知らない父さんは不思議そうに尋ねてくる。
「えっと……」
そんな父さんに、アイシャがすごい魔力を持っていることを教えた。
「なるほど」
「アイシャの魔力をリコリスに渡して、それでリコリスが魔力を供給する。それなら、うまくいくんじゃないかと思ったんだけど、どうかな?」
「いけるんじゃないかしら?」
しばらく考えた後、リコリスはそんな結論を出した。
「あたしだけだと三時間が限界ってところだけど、アイシャが協力してくれるなら百人力ね。たぶん、十二時間までいけるわ。九時間必要っていうのなら、余裕で間に合うわね」
「それなら……」
「ただ、その間、アイシャも魔力を渡し続けないといけないの。それ、けっこう大変なことよ?」
そう言われると迷ってしまう。
すごい魔力を持っていると言われても、アイシャはまだ子供だ。
無理なんて絶対にさせられない。
「なんとかならないのかな? えっと……父さん、途中で休憩を挟むとかは?」
「難しいな……そういう中途半端なことをしたら、それだけ完成度が落ちる。失敗する確率が上がるから、やらねえ方がいいな」
「そっか……」
そうなると、どうすればいいんだろう?
アイシャに無理はさせられない。
しかし、無理をしてもらわないと、雪水晶の剣を修理することはできない。
ジレンマだ。
「大丈夫」
僕達の話を聞いて、アイシャは小さな両手をぎゅっと握り、強く言う。
「わたし、がんばる」
「でも……」
「おとーさんとおかーさんと……リコリスのためにがんばりたいの」
「……アイシャ……」
「それで……おとーさんとおかーさんにぎゅっとしてもらえれば、もっともっとがんばれると思うの。いい?」
「うん、もちろん」
「当たり前です」
僕とソフィアは即答した。
娘ががんばりたいと言う。
そのために傍にいてほしいと言う。
断る理由なんて欠片もない。
「えへへ……わたし、がんばるね」
こうして、今後の方針が決定したのだけど……
僕とソフィアはアイシャのかわいさに夢中になっていて、あまり話を聞いておらず、リコリスに呆れられてしまうのだった。
――――――――――
父さんが雪水晶の剣を修理して、それに必要な魔力はリコリスとアイシャが用意する。
ただ、絶対に失敗が許されない作業だ。
父さんは問題ない。
リコリスも……たぶん、問題はないと思う。
気になるところはアイシャだ。
すごい魔力を持っているといっても、まだ子供。
長時間の作業となると集中力が途切れてしまうだろうし、途中で疲れてダウンしてしまうかもしれない。
そうならないように全力でサポートするけど……
サポートだけじゃなくて、成功率を上げるために、事前にトレーニングをすることになった。
そのトレーニングというのは……
工房にいなかったので寝ていたと思ったのだけど、違ったみたいだ。
「どうしたんですか、アイシャちゃん。もう寝る時間ですが……ひょっとして、うるさくしてしまいましたか?」
「ううん、そんなことないよ」
「では、どうして……」
「気になって、そこで話を聞いていたの」
アイシャは扉の外を指差した。
すぐそこにいたみたいだけど、ぜんぜん気づかなかった。
それだけ話に集中していたのだろう。
「わたし、お手伝いできないかな?」
「え?」
「私は魔力がすごいいっぱい、って」
「あ」
そういえば、そうだった。
スノウレイクまで旅をして、ミスリルを手に入れて……
色々とあったせいで忘れていたけど、アイシャの魔力量はとんでもないんだった。
落ち着いたら、また魔法の練習をと思っていたんだけど……
これはアリかな?
「どういうことなんだ?」
事情を知らない父さんは不思議そうに尋ねてくる。
「えっと……」
そんな父さんに、アイシャがすごい魔力を持っていることを教えた。
「なるほど」
「アイシャの魔力をリコリスに渡して、それでリコリスが魔力を供給する。それなら、うまくいくんじゃないかと思ったんだけど、どうかな?」
「いけるんじゃないかしら?」
しばらく考えた後、リコリスはそんな結論を出した。
「あたしだけだと三時間が限界ってところだけど、アイシャが協力してくれるなら百人力ね。たぶん、十二時間までいけるわ。九時間必要っていうのなら、余裕で間に合うわね」
「それなら……」
「ただ、その間、アイシャも魔力を渡し続けないといけないの。それ、けっこう大変なことよ?」
そう言われると迷ってしまう。
すごい魔力を持っていると言われても、アイシャはまだ子供だ。
無理なんて絶対にさせられない。
「なんとかならないのかな? えっと……父さん、途中で休憩を挟むとかは?」
「難しいな……そういう中途半端なことをしたら、それだけ完成度が落ちる。失敗する確率が上がるから、やらねえ方がいいな」
「そっか……」
そうなると、どうすればいいんだろう?
アイシャに無理はさせられない。
しかし、無理をしてもらわないと、雪水晶の剣を修理することはできない。
ジレンマだ。
「大丈夫」
僕達の話を聞いて、アイシャは小さな両手をぎゅっと握り、強く言う。
「わたし、がんばる」
「でも……」
「おとーさんとおかーさんと……リコリスのためにがんばりたいの」
「……アイシャ……」
「それで……おとーさんとおかーさんにぎゅっとしてもらえれば、もっともっとがんばれると思うの。いい?」
「うん、もちろん」
「当たり前です」
僕とソフィアは即答した。
娘ががんばりたいと言う。
そのために傍にいてほしいと言う。
断る理由なんて欠片もない。
「えへへ……わたし、がんばるね」
こうして、今後の方針が決定したのだけど……
僕とソフィアはアイシャのかわいさに夢中になっていて、あまり話を聞いておらず、リコリスに呆れられてしまうのだった。
――――――――――
父さんが雪水晶の剣を修理して、それに必要な魔力はリコリスとアイシャが用意する。
ただ、絶対に失敗が許されない作業だ。
父さんは問題ない。
リコリスも……たぶん、問題はないと思う。
気になるところはアイシャだ。
すごい魔力を持っているといっても、まだ子供。
長時間の作業となると集中力が途切れてしまうだろうし、途中で疲れてダウンしてしまうかもしれない。
そうならないように全力でサポートするけど……
サポートだけじゃなくて、成功率を上げるために、事前にトレーニングをすることになった。
そのトレーニングというのは……