もしかしたら、僕の父さんが雪水晶の剣を修理できるかもしれない。
その可能性に賭けて……
次の目的地は、僕の故郷のスノウレイクに決まった。
そのために、まずは旅の準備をすることに。
食料や水。
馬車の手配。
そして、なによりも大事なのが……服だ。
服屋に立ち寄り、防寒具を探す。
スノウレイクは一年の半分以上が雪に包まれた場所なので、しっかりと準備をしないと風邪を引いて……
いや、下手したら凍死してしまう。
「フェイト、このようなものはどうですか?」
どこかウキウキした様子で、ソフィアは厚手のコートを自分の体に当てて、僕に見せる。
ふわふわのファーがついていて、とても温かそうだ。
丈も長く、膝までを覆う。
「うん、それなら防寒対策はバッチリだと思うよ」
「……そういう意味で聞いたわけではないのですが」
「?」
なら、どういう意味なのだろう?
「えっと……それと、手袋とブーツ。できれば、帽子も欲しいかな? 念を押すなら、中に着るシャツも新調しておきたいかも」
「スノウレイクは、それほどまでに寒いところなのですか? 私の記憶では、そこまでではなかったのですが……」
「ソフィアがいた頃は、数年に一度の温かい年だったんだ。普段のスノウレイクは、あの頃の数倍は寒いよ」
「……数倍……」
「ここ最近は、寒冷化が進んでいるみたいだし、しっかりと対策をしておかないとね」
「おとーさん」
くいくいっと、服を引っ張られた。
振り返ると……
「どうかな?」
コートを着て、ふわふわもこもこになったアイシャの姿が。
単にコートを着ているだけじゃない。
子供用のコートだからなのか、熊のきぐるみっぽい感じになっていた。
「「か、かわいい」」
僕とソフィアの声がぴたりと重なる。
「アイシャちゃん、かわいいです! すごくかわいいですよ!」
「はうっ」
ぎゅうっと、思い切り抱きしめられた。
アイシャはちょっと苦しそうにしていたものの、ソフィアの温もりを感じることができてうれしそうだ。
尻尾がぶんぶんと横に振られている。
「おとーさん」
「うん、すごくかわいいよ」
「えへへ」
素直な感想を口にすると、アイシャは頬を染めてはにかむ。
天使かな?
「ふっふーん、ここで真打ち登場ね!」
ふと、リコリスの声が聞こえてきた。
振り返ると……
「どうよ!? このミラクルワンダフル妖精、リコリスちゃんのかわいらしさに昇天なさい!!!」
「「……」」
僕とソフィアは沈黙して、
「毛玉?」
アイシャは、こてんと小首を傾げた。
アイシャが言うように、毛玉が宙に浮いていた。
いや、毛玉じゃない。
よくよく見てみると、毛玉から羽が生えていた。
たぶん、中にリコリスがいるのだろう。
「えっと……リコリス?」
「ええ」
「なに、それ?」
「見ての通り、防寒具よ! かわいいでしょ?」
「かわいい……のかな?」
羽の生えた毛玉。
かわいいと言えなくもないけど……
どちらかというと、シュールさの方が勝っているような?
「なんでそんなことになっているの?」
「だって、この店、妖精用の防寒具が置いてないんだもの。だから、捨てる予定の羽毛をもらって、自分でなんとかしたっていうわけ。ドヤ!」
リコリスとしては会心の出来なのだろう。
でも、それは毛玉と呼ぶ以外の何者でもなくて……
うん。
リコリスって、ちょっと残念だったんだね。
「リコリスの防寒具は、あとで私が作ってあげますね。大丈夫ですよ。花嫁修業の一貫として、裁縫は習っていましたから」
「え? なんで、妙に優しい顔をしているの?」
「ふふ、なんでもありませんよ」
「その笑顔はなに!? なんなのぉーーー!?」
納得いかないというようなリコリスの声が店内に響くのだった。
その可能性に賭けて……
次の目的地は、僕の故郷のスノウレイクに決まった。
そのために、まずは旅の準備をすることに。
食料や水。
馬車の手配。
そして、なによりも大事なのが……服だ。
服屋に立ち寄り、防寒具を探す。
スノウレイクは一年の半分以上が雪に包まれた場所なので、しっかりと準備をしないと風邪を引いて……
いや、下手したら凍死してしまう。
「フェイト、このようなものはどうですか?」
どこかウキウキした様子で、ソフィアは厚手のコートを自分の体に当てて、僕に見せる。
ふわふわのファーがついていて、とても温かそうだ。
丈も長く、膝までを覆う。
「うん、それなら防寒対策はバッチリだと思うよ」
「……そういう意味で聞いたわけではないのですが」
「?」
なら、どういう意味なのだろう?
「えっと……それと、手袋とブーツ。できれば、帽子も欲しいかな? 念を押すなら、中に着るシャツも新調しておきたいかも」
「スノウレイクは、それほどまでに寒いところなのですか? 私の記憶では、そこまでではなかったのですが……」
「ソフィアがいた頃は、数年に一度の温かい年だったんだ。普段のスノウレイクは、あの頃の数倍は寒いよ」
「……数倍……」
「ここ最近は、寒冷化が進んでいるみたいだし、しっかりと対策をしておかないとね」
「おとーさん」
くいくいっと、服を引っ張られた。
振り返ると……
「どうかな?」
コートを着て、ふわふわもこもこになったアイシャの姿が。
単にコートを着ているだけじゃない。
子供用のコートだからなのか、熊のきぐるみっぽい感じになっていた。
「「か、かわいい」」
僕とソフィアの声がぴたりと重なる。
「アイシャちゃん、かわいいです! すごくかわいいですよ!」
「はうっ」
ぎゅうっと、思い切り抱きしめられた。
アイシャはちょっと苦しそうにしていたものの、ソフィアの温もりを感じることができてうれしそうだ。
尻尾がぶんぶんと横に振られている。
「おとーさん」
「うん、すごくかわいいよ」
「えへへ」
素直な感想を口にすると、アイシャは頬を染めてはにかむ。
天使かな?
「ふっふーん、ここで真打ち登場ね!」
ふと、リコリスの声が聞こえてきた。
振り返ると……
「どうよ!? このミラクルワンダフル妖精、リコリスちゃんのかわいらしさに昇天なさい!!!」
「「……」」
僕とソフィアは沈黙して、
「毛玉?」
アイシャは、こてんと小首を傾げた。
アイシャが言うように、毛玉が宙に浮いていた。
いや、毛玉じゃない。
よくよく見てみると、毛玉から羽が生えていた。
たぶん、中にリコリスがいるのだろう。
「えっと……リコリス?」
「ええ」
「なに、それ?」
「見ての通り、防寒具よ! かわいいでしょ?」
「かわいい……のかな?」
羽の生えた毛玉。
かわいいと言えなくもないけど……
どちらかというと、シュールさの方が勝っているような?
「なんでそんなことになっているの?」
「だって、この店、妖精用の防寒具が置いてないんだもの。だから、捨てる予定の羽毛をもらって、自分でなんとかしたっていうわけ。ドヤ!」
リコリスとしては会心の出来なのだろう。
でも、それは毛玉と呼ぶ以外の何者でもなくて……
うん。
リコリスって、ちょっと残念だったんだね。
「リコリスの防寒具は、あとで私が作ってあげますね。大丈夫ですよ。花嫁修業の一貫として、裁縫は習っていましたから」
「え? なんで、妙に優しい顔をしているの?」
「ふふ、なんでもありませんよ」
「その笑顔はなに!? なんなのぉーーー!?」
納得いかないというようなリコリスの声が店内に響くのだった。