レナが撤退したからなのか、ブルーアイランドの騒動は急速に治まっていった。
スノウは元に戻り……
暴徒も数を減らして、ほぼ全て拘束された。
こうして事件は解決したのだけど、被害は大きい。
たくさんの人が傷ついて、たくさんの建物が壊れた。
死者も少なくない。
どうして、レナはこんな惨劇を引き起こしたのか?
スノウを暴走させて、新しい魔剣を作るとか言っていたけど……
そのために街を犠牲にしていいなんてこと、絶対にない。
今度会った時は……
「なにをするつもりなのか、真意を確かめないと」
レナを放っておくことはできない。
黎明の同盟を放っておくことはできない。
いつか……
そんな覚悟を決めるのだった。
――――――――――
それはそうと。
街の復興が一段落したところで、スノウのことが問題になった。
多くの人がスノウが暴走するところを目撃している。
その獣はなんなんだ?
また暴走するのではないか?
処分した方がいいのでは?
そんな意見が多発したものの……
ソフィアが全て黙らせた。
スノウは自分達が管理する。
もしも同じことが起きた場合、その責任は、剣聖である自分が全て負う。
そこまで言うのならと、街の人達は納得してくれた。
ありがたい。
そうして……
色々とあったものの、再び穏やかな日常が戻ってきた。
戻ってきたのだけど……
「お手」
「ワンッ」
「おかわり」
「ワンッ」
「お座り」
「オン!」
ライラさんの家の庭で、アイシャはスノウと遊んでいた。
今は躾をしているらしく、成功する度に褒めて、犬用のお菓子をあげていた。
ほんわりとする光景に和みつつ、本の山に埋もれて、たくさんの資料とにらめっこをするライラさんに視線を戻す。
「結局、アイシャは巫女っていうことでいいんですか?」
「んー、断言はできないけどね。私も、巫女についてそれほど詳しいわけじゃないし。ただ、状況を聞く限り、巫女と考えるのが自然かな?」
「だよね……」
膨大な魔力を持っていて……
それだけじゃなくて、不思議な力で暴走したスノウを元に戻してみせた。
あんなこと、普通の人にできるわけがない。
ライラさんの言う、巫女という特別な存在と考えるのが正しいだろう。
「アイシャちゃんのことが気になるなら、私が身体調査を……」
「ふふ、斬られたいんですか?」
ソフィアがにっこりと笑いつつ、剣の柄に手を伸ばした。
「ごめんなさい冗談です」
絶対本気だった。
……と思うのだけど、話がこじれるだけなので、口にはしないでおいた。
「それで、スノウのことなんだけど……スノウは神獣なのかな?」
女神さまの使い。
世界の裁定者。
救世主。
色々な言葉が使われているものの、正しい情報は見つからない。
伝説の存在とされていて、知っている人も少なく、文献もほとんど残ってなくて……
そのせいで、なにが正しいのか間違っているのか、わからないんだよね。
「たぶん、神獣で間違いないと思うよ」
「でも、どうして神獣がこんなところに……」
「んー、これは私の想像なんだけど」
そう前置きして、ライラさんは話を続ける。
「スノウくんは、この街の守り神とか、そういう存在だったんじゃないかな? あるいは、その後継者。子供なのは、そういうことだね」
「守り神がそこらを歩いているものなの?」
「うーん、それはなんとも。ただ、巫女を助けるために出てきたのかも」
「そういえば、スノウが初めて姿を見せたのは、アイシャちゃんが迷子になった時ですね」
アイシャを助けるためだとしたら、納得できる話だ。
それほどまでに、巫女は神獣に愛されているのだろう。
「暴走したのは?」
「それも証拠はないけど……たくさんの人がおかしくなって、負の感情があふれたせいじゃないかな? 神獣って、人の影響を受けやすいのかも。だから、街がおかしくなって神獣もおかしくなった」
「一応、話の筋は通っていますね」
スノウは街の守護者。
アイシャが困っていたから、助けるために出てきた。
でも、街の人々がおかしくなったたまえ、その影響を受けて暴走してしまった。
なるほど、と納得することはできる。
できるのだけど……
「結局、全部、推論でしかないんだよね」
それでもって、神獣がどういう存在なのかとか、肝心なところはなにもわからないままだ。
「これからどうすればいいのか……やれやれ、頭が痛いですね」
「悲観的になることはないんじゃないかな?」
「え?」
「わからないことは多いけど……でも、大事なところだけわかっていれば、それでいいと思うんだ」
「それは?」
「スノウも大事な家族、っていうことだよ」
神獣だろうがなんだろうが、スノウはもう家族の一員だ。
今更、どうこうと対応を変えることはない。
それはソフィアも同意見らしく、優しく笑う。
「そうですね」
「君ら、お似合いだよ。まったく」
僕達を見て、ライラさんはやれやれと苦笑するのだった。
スノウは元に戻り……
暴徒も数を減らして、ほぼ全て拘束された。
こうして事件は解決したのだけど、被害は大きい。
たくさんの人が傷ついて、たくさんの建物が壊れた。
死者も少なくない。
どうして、レナはこんな惨劇を引き起こしたのか?
スノウを暴走させて、新しい魔剣を作るとか言っていたけど……
そのために街を犠牲にしていいなんてこと、絶対にない。
今度会った時は……
「なにをするつもりなのか、真意を確かめないと」
レナを放っておくことはできない。
黎明の同盟を放っておくことはできない。
いつか……
そんな覚悟を決めるのだった。
――――――――――
それはそうと。
街の復興が一段落したところで、スノウのことが問題になった。
多くの人がスノウが暴走するところを目撃している。
その獣はなんなんだ?
また暴走するのではないか?
処分した方がいいのでは?
そんな意見が多発したものの……
ソフィアが全て黙らせた。
スノウは自分達が管理する。
もしも同じことが起きた場合、その責任は、剣聖である自分が全て負う。
そこまで言うのならと、街の人達は納得してくれた。
ありがたい。
そうして……
色々とあったものの、再び穏やかな日常が戻ってきた。
戻ってきたのだけど……
「お手」
「ワンッ」
「おかわり」
「ワンッ」
「お座り」
「オン!」
ライラさんの家の庭で、アイシャはスノウと遊んでいた。
今は躾をしているらしく、成功する度に褒めて、犬用のお菓子をあげていた。
ほんわりとする光景に和みつつ、本の山に埋もれて、たくさんの資料とにらめっこをするライラさんに視線を戻す。
「結局、アイシャは巫女っていうことでいいんですか?」
「んー、断言はできないけどね。私も、巫女についてそれほど詳しいわけじゃないし。ただ、状況を聞く限り、巫女と考えるのが自然かな?」
「だよね……」
膨大な魔力を持っていて……
それだけじゃなくて、不思議な力で暴走したスノウを元に戻してみせた。
あんなこと、普通の人にできるわけがない。
ライラさんの言う、巫女という特別な存在と考えるのが正しいだろう。
「アイシャちゃんのことが気になるなら、私が身体調査を……」
「ふふ、斬られたいんですか?」
ソフィアがにっこりと笑いつつ、剣の柄に手を伸ばした。
「ごめんなさい冗談です」
絶対本気だった。
……と思うのだけど、話がこじれるだけなので、口にはしないでおいた。
「それで、スノウのことなんだけど……スノウは神獣なのかな?」
女神さまの使い。
世界の裁定者。
救世主。
色々な言葉が使われているものの、正しい情報は見つからない。
伝説の存在とされていて、知っている人も少なく、文献もほとんど残ってなくて……
そのせいで、なにが正しいのか間違っているのか、わからないんだよね。
「たぶん、神獣で間違いないと思うよ」
「でも、どうして神獣がこんなところに……」
「んー、これは私の想像なんだけど」
そう前置きして、ライラさんは話を続ける。
「スノウくんは、この街の守り神とか、そういう存在だったんじゃないかな? あるいは、その後継者。子供なのは、そういうことだね」
「守り神がそこらを歩いているものなの?」
「うーん、それはなんとも。ただ、巫女を助けるために出てきたのかも」
「そういえば、スノウが初めて姿を見せたのは、アイシャちゃんが迷子になった時ですね」
アイシャを助けるためだとしたら、納得できる話だ。
それほどまでに、巫女は神獣に愛されているのだろう。
「暴走したのは?」
「それも証拠はないけど……たくさんの人がおかしくなって、負の感情があふれたせいじゃないかな? 神獣って、人の影響を受けやすいのかも。だから、街がおかしくなって神獣もおかしくなった」
「一応、話の筋は通っていますね」
スノウは街の守護者。
アイシャが困っていたから、助けるために出てきた。
でも、街の人々がおかしくなったたまえ、その影響を受けて暴走してしまった。
なるほど、と納得することはできる。
できるのだけど……
「結局、全部、推論でしかないんだよね」
それでもって、神獣がどういう存在なのかとか、肝心なところはなにもわからないままだ。
「これからどうすればいいのか……やれやれ、頭が痛いですね」
「悲観的になることはないんじゃないかな?」
「え?」
「わからないことは多いけど……でも、大事なところだけわかっていれば、それでいいと思うんだ」
「それは?」
「スノウも大事な家族、っていうことだよ」
神獣だろうがなんだろうが、スノウはもう家族の一員だ。
今更、どうこうと対応を変えることはない。
それはソフィアも同意見らしく、優しく笑う。
「そうですね」
「君ら、お似合いだよ。まったく」
僕達を見て、ライラさんはやれやれと苦笑するのだった。