翌日。
みんなで、ブルーアイランドの冒険者ギルドへ向かう。
魔剣のことを話しておくためだ。
魔剣については根拠がない。
バラまかれているというのも、今のところ、ただの推測だ。
ただ、その推測が当たっていたら?
その場合は大変なことになる。
気がついたら手遅れ、ということもありえる。
だから、今のうちに話をしておくことにした。
魔剣が流通しているという証拠はないのだけど、でも、剣聖の言葉ならある程度は耳を傾けてくれるだろう。
「あ、スティアートさん!」
「こんにちは、ファーナさん」
今日も忙しそうにしていたファーナさんだけど、僕に気がつくと、にっこりと笑い駆け寄ってきた。
ちょっとスノウに似ているような気がする。
「おっす」
「リコリスさんも、こんにちは。えっと……?」
ファーナさんの視線がソフィア達に向いた。
「はじめまして。私は、ソフィア・アスカルトです」
「アイシャ……です」
「オンッ!」
それぞれ順番に挨拶をする。
今さらだけど、スノウも中に入れてよかったのかな?
動物禁止とか、そういうルールがあったりしないかな?
そんな不安を抱くのだけど、特になにも言われないので問題ないのだろう。
それよりも、ファーナさんの興味はソフィアにあるようだった。
「アスカルト……それじゃあ、もしかしてあなたが剣聖なんですか?」
「はい」
「あぁ、良かった。スティアートさん、ありがとうございます」
僕がソフィアを連れてきたと思っているみたいだ。
似たようなものだけど、でも、そこまで感謝しなくても、とは思う。
「ぜひ、ギルドマスターがお話をしたいと……今、お時間よろしいでしょうか?」
「それは構いませんが、私だけですか?」
「いえ。もちろん、スティアートさんとリコリスさんも一緒に! ただ、アイシャちゃんとワンちゃんは……」
ファーナさんは、少し困った顔に。
アイシャ達を邪魔者扱いしているわけじゃなくて、子供に聞かせる話ではないと思っているのだろう。
「リコリス、アイシャとスノウを見ていてくれるかな?」
「えー、なんであたしがそんなことしないといけないの。ハイパーミラクル妖精リコリスちゃんは、雑用係じゃないんですけどー」
「おいしいクッキーとジュースを出してもらうようにお願いするから」
「あたしに任せなさい!」
リコリスは、いつでもどんな時でもリコリスだった。
その後、僕とソフィアは、二階にあるギルドマスターの部屋へ。
中はそこそこ広く、来客用のスペースも完備されていた。
「すみません、おまたせいたしました」
五分ほど待ったところで、スーツ姿の女性が現れた。
メガネをかけていることもあり、とても知的な印象だ。
「私が、ブルーアイランドのギルドマスター、シェリーナです」
「あ……フェイト・スティアートです」
「ソフィア・アスカルトです」
「名前で呼んでも?」
「はい」
「では……フェイトさん、ソフィアさん。よろしくお願いします」
握手を交わす。
少し驚いた。
冒険者をまとめる存在だから、男性を想像していたのだけど、まさか女性だったなんて。
しかも、知的な感じで、武に特化している感じはしない。
「……フェイト、あまりじろじろと見ては失礼ですよ」
ソフィアに小声で注意されてしまう。
「……まさか、シェリーナさんに見惚れたとか」
「……な、ないから」
「……ソウデスカ」
しまった、ソフィアがあらぬ誤解を。
頬を膨らませて、子供のように拗ねてしまう。
後で謝っておかないと。
「わざわざ足を運んでいただき、感謝します」
「いえ、なんてことはありません。それよりもフェイトから聞いたのですが、今、ブルーアイランドでは事件が多発していると?」
「はい。数日前から急激な増加傾向にあり、騎士団からの応援要請が回ってくるほどです」
「そんなに人手が足りなくなるくらい、事件が起きているんだ……」
これ……もしかしたら、事態は考えている以上に深刻なのかもしれない。
騎士団は秩序を司り、冒険者は街の人々に寄り添う。
互いにプライドを持ち、己の領域に踏み込まれることを嫌う。
有事の際はそうも言っていられないため、互いに協力をするのだけど……
今がその非常事態に当たるのだろうか?
それくらいの規模の事件に発展しつつあるのだろうか?
「お二人の活動拠点がブルーアイランドでないことは承知しています。その上で、どうか力を貸してくれないでしょうか?」
「はい、それはもちろん」
「よかった……では、さっそくで申しわけないのですが、力を貸していただきたく」
「あ、待ってください。その前に、話しておきたいことがあります」
「話しておきたいこと、ですか?」
「はい。実は……」
ソフィアが魔剣の話を切り出そうとした時、
「た、大変です! 浜辺で多数の暴徒が出ました!」
顔を青くしたファーナさんが、そんな報告をしてきた。
みんなで、ブルーアイランドの冒険者ギルドへ向かう。
魔剣のことを話しておくためだ。
魔剣については根拠がない。
バラまかれているというのも、今のところ、ただの推測だ。
ただ、その推測が当たっていたら?
その場合は大変なことになる。
気がついたら手遅れ、ということもありえる。
だから、今のうちに話をしておくことにした。
魔剣が流通しているという証拠はないのだけど、でも、剣聖の言葉ならある程度は耳を傾けてくれるだろう。
「あ、スティアートさん!」
「こんにちは、ファーナさん」
今日も忙しそうにしていたファーナさんだけど、僕に気がつくと、にっこりと笑い駆け寄ってきた。
ちょっとスノウに似ているような気がする。
「おっす」
「リコリスさんも、こんにちは。えっと……?」
ファーナさんの視線がソフィア達に向いた。
「はじめまして。私は、ソフィア・アスカルトです」
「アイシャ……です」
「オンッ!」
それぞれ順番に挨拶をする。
今さらだけど、スノウも中に入れてよかったのかな?
動物禁止とか、そういうルールがあったりしないかな?
そんな不安を抱くのだけど、特になにも言われないので問題ないのだろう。
それよりも、ファーナさんの興味はソフィアにあるようだった。
「アスカルト……それじゃあ、もしかしてあなたが剣聖なんですか?」
「はい」
「あぁ、良かった。スティアートさん、ありがとうございます」
僕がソフィアを連れてきたと思っているみたいだ。
似たようなものだけど、でも、そこまで感謝しなくても、とは思う。
「ぜひ、ギルドマスターがお話をしたいと……今、お時間よろしいでしょうか?」
「それは構いませんが、私だけですか?」
「いえ。もちろん、スティアートさんとリコリスさんも一緒に! ただ、アイシャちゃんとワンちゃんは……」
ファーナさんは、少し困った顔に。
アイシャ達を邪魔者扱いしているわけじゃなくて、子供に聞かせる話ではないと思っているのだろう。
「リコリス、アイシャとスノウを見ていてくれるかな?」
「えー、なんであたしがそんなことしないといけないの。ハイパーミラクル妖精リコリスちゃんは、雑用係じゃないんですけどー」
「おいしいクッキーとジュースを出してもらうようにお願いするから」
「あたしに任せなさい!」
リコリスは、いつでもどんな時でもリコリスだった。
その後、僕とソフィアは、二階にあるギルドマスターの部屋へ。
中はそこそこ広く、来客用のスペースも完備されていた。
「すみません、おまたせいたしました」
五分ほど待ったところで、スーツ姿の女性が現れた。
メガネをかけていることもあり、とても知的な印象だ。
「私が、ブルーアイランドのギルドマスター、シェリーナです」
「あ……フェイト・スティアートです」
「ソフィア・アスカルトです」
「名前で呼んでも?」
「はい」
「では……フェイトさん、ソフィアさん。よろしくお願いします」
握手を交わす。
少し驚いた。
冒険者をまとめる存在だから、男性を想像していたのだけど、まさか女性だったなんて。
しかも、知的な感じで、武に特化している感じはしない。
「……フェイト、あまりじろじろと見ては失礼ですよ」
ソフィアに小声で注意されてしまう。
「……まさか、シェリーナさんに見惚れたとか」
「……な、ないから」
「……ソウデスカ」
しまった、ソフィアがあらぬ誤解を。
頬を膨らませて、子供のように拗ねてしまう。
後で謝っておかないと。
「わざわざ足を運んでいただき、感謝します」
「いえ、なんてことはありません。それよりもフェイトから聞いたのですが、今、ブルーアイランドでは事件が多発していると?」
「はい。数日前から急激な増加傾向にあり、騎士団からの応援要請が回ってくるほどです」
「そんなに人手が足りなくなるくらい、事件が起きているんだ……」
これ……もしかしたら、事態は考えている以上に深刻なのかもしれない。
騎士団は秩序を司り、冒険者は街の人々に寄り添う。
互いにプライドを持ち、己の領域に踏み込まれることを嫌う。
有事の際はそうも言っていられないため、互いに協力をするのだけど……
今がその非常事態に当たるのだろうか?
それくらいの規模の事件に発展しつつあるのだろうか?
「お二人の活動拠点がブルーアイランドでないことは承知しています。その上で、どうか力を貸してくれないでしょうか?」
「はい、それはもちろん」
「よかった……では、さっそくで申しわけないのですが、力を貸していただきたく」
「あ、待ってください。その前に、話しておきたいことがあります」
「話しておきたいこと、ですか?」
「はい。実は……」
ソフィアが魔剣の話を切り出そうとした時、
「た、大変です! 浜辺で多数の暴徒が出ました!」
顔を青くしたファーナさんが、そんな報告をしてきた。