翌日。
事前に話して決めた通り、僕はリコリスと一緒にブルーアイランドの冒険者ギルドを尋ねた。
冒険者は、なんでも屋のようなものだ。
人々の生活に深く関わり、なくてはならないものになっている。
この国だけじゃなくて、ほとんどの国で冒険者制度が採用されている。
だから、ギルドがない街はないと言ってもいい。
ブルーアイランドにも、当たり前のように冒険者ギルドがあるのだけど……
「なんだろう?」
ギルドに入ってみると、やけに慌ただしかった。
職員らしき男女が忙しそうに走り回り……
冒険者らしき人々も、険しい顔であちらこちらを移動している。
「なーんか、きな臭い雰囲気ね」
「きな臭い、というか……ピリピリしている感じだね。事件でもあったのかな?」
忙しそうにしているところ、声をかけるのはちょっとためらわれる。
「えっと……」
「ねーねー、ちょっといい?」
怯む僕と違い、リコリスはガンガン前に行く。
こういうところは、素直にすごいと思う。
「あ、はい。なんでしょうか?」
僕達に気がついて、女性のギルド職員が足を止めた。
「この街での冒険者登録でしょうか? でしたら、あちらのカウンターで……」
「あ、ううん。それもあるんだけど、それだけじゃないというか……」
「なんかやたら忙しそうなんだけど、どうかしたの? 事件? 事故? それとも、このセクシー美少女アイドルリコリスちゃんがやってきて、慌てているの?」
「それは……」
リコリスのボケは無視されて、ギルド職員は難しい顔に。
それから、なにかに気がついた様子で、ハッとした顔に。
「あの……もしかして、剣聖のパートナーの方ですか?」
「え? あ、うん。そうだけど……でも、なんでそのことを?」
まだ、この街では冒険者登録はしていないんだけど……
「剣聖にもなれば、とても注目されますからね。自然と情報が入ってきますし……ちょっとやり方は悪いのですが、こちらも軽く探りを入れます」
「なるほど」
有名税みたいなものかな?
探りを入れられることも、まあ、仕方ないのかなと思う。
僕も、こんな風になれるのかな?
なれるようにがんばりたい。
「僕は、フェイト・スティア―トです」
「あたしは、ハイパーミラクルワンダフルダブルスカイ……」
「妖精のリコリスです」
「あたしの超かっこいい自己紹介!?」
かっこいいと思っていたんだ、それ。
「私は、ブルーアイランドの冒険者ギルドの職員、ファーナといいます。よろしくお願いいたします」
ファーナさんは、ペコリと丁寧に頭を下げた。
慌ててこちらもお辞儀をする。
「スティアートさんは……」
「あ、フェイトでいいですよ」
「わかりました。フェイトさんは、どのような用事で当ギルドへ?」
「今、獣人について調べてて、それでなにか情報ないかな……って思ってやってきたんだけど……」
軽く周囲を見る。
「なんだか、すごく慌ただしいけど、なにか事件でも?」
「……はい」
ファーナさんは、その場で説明をしてくれる。
人払いをしないということは、ここにいる誰もが知っているようなことなのだろう。
「実は……暴行、強盗、殺人事件が多発していまして」
意外な話だ。
ブルーアイランドは観光地だから、そういう事件が起きないように、厳しい取り締まりがされていると思ったのだけど。
「治安が悪化しているんですか?」
「はい。それも、急激に……」
「急激に? どういう意味ですか?」
「そのままの意味です。この一週間で、事件が十倍に増加しました」
「十倍!?」
例えば、隣国が崩壊したとする。
その場合、難民や元騎士などが一気に押し寄せてきて、治安が悪化してしまうことがある。
でも、それでも十倍はありえない。
多く見ても三倍くらいだ。
「どういうことなんですか?」
「わかりません……本当に前触れもなく、いきなり犯罪件数が増えているんです」
「そんなこと……」
ありえるのだろうか?
でも、実際に起きている。
だから、ファーナさんも困惑して、慌てているのだろう。
「今、ギルドは対応に追われていまして……ちらっ」
手伝ってくれませんか?
そんな感じで、ファーナさんがこちらを見た。
ちょっとあざとい。
「う、うーん……」
こんな事件が起きているのなら、協力したいと思う。
ただ、ファーナさんが求めているのは、ソフィアの力だろう。
僕が協力をすれば、ソフィアもセットになると思っているはず。
でも……
そんな状況でアイシャを一人にするわけにはいかない。
安全を考えるなら、ソフィアに一緒にいてもらうのが一番だ。
そうなると彼女は動けないわけで……
「ちょっと、戻って相談してみますね」
今は、そう返すのが精一杯だった。
事前に話して決めた通り、僕はリコリスと一緒にブルーアイランドの冒険者ギルドを尋ねた。
冒険者は、なんでも屋のようなものだ。
人々の生活に深く関わり、なくてはならないものになっている。
この国だけじゃなくて、ほとんどの国で冒険者制度が採用されている。
だから、ギルドがない街はないと言ってもいい。
ブルーアイランドにも、当たり前のように冒険者ギルドがあるのだけど……
「なんだろう?」
ギルドに入ってみると、やけに慌ただしかった。
職員らしき男女が忙しそうに走り回り……
冒険者らしき人々も、険しい顔であちらこちらを移動している。
「なーんか、きな臭い雰囲気ね」
「きな臭い、というか……ピリピリしている感じだね。事件でもあったのかな?」
忙しそうにしているところ、声をかけるのはちょっとためらわれる。
「えっと……」
「ねーねー、ちょっといい?」
怯む僕と違い、リコリスはガンガン前に行く。
こういうところは、素直にすごいと思う。
「あ、はい。なんでしょうか?」
僕達に気がついて、女性のギルド職員が足を止めた。
「この街での冒険者登録でしょうか? でしたら、あちらのカウンターで……」
「あ、ううん。それもあるんだけど、それだけじゃないというか……」
「なんかやたら忙しそうなんだけど、どうかしたの? 事件? 事故? それとも、このセクシー美少女アイドルリコリスちゃんがやってきて、慌てているの?」
「それは……」
リコリスのボケは無視されて、ギルド職員は難しい顔に。
それから、なにかに気がついた様子で、ハッとした顔に。
「あの……もしかして、剣聖のパートナーの方ですか?」
「え? あ、うん。そうだけど……でも、なんでそのことを?」
まだ、この街では冒険者登録はしていないんだけど……
「剣聖にもなれば、とても注目されますからね。自然と情報が入ってきますし……ちょっとやり方は悪いのですが、こちらも軽く探りを入れます」
「なるほど」
有名税みたいなものかな?
探りを入れられることも、まあ、仕方ないのかなと思う。
僕も、こんな風になれるのかな?
なれるようにがんばりたい。
「僕は、フェイト・スティア―トです」
「あたしは、ハイパーミラクルワンダフルダブルスカイ……」
「妖精のリコリスです」
「あたしの超かっこいい自己紹介!?」
かっこいいと思っていたんだ、それ。
「私は、ブルーアイランドの冒険者ギルドの職員、ファーナといいます。よろしくお願いいたします」
ファーナさんは、ペコリと丁寧に頭を下げた。
慌ててこちらもお辞儀をする。
「スティアートさんは……」
「あ、フェイトでいいですよ」
「わかりました。フェイトさんは、どのような用事で当ギルドへ?」
「今、獣人について調べてて、それでなにか情報ないかな……って思ってやってきたんだけど……」
軽く周囲を見る。
「なんだか、すごく慌ただしいけど、なにか事件でも?」
「……はい」
ファーナさんは、その場で説明をしてくれる。
人払いをしないということは、ここにいる誰もが知っているようなことなのだろう。
「実は……暴行、強盗、殺人事件が多発していまして」
意外な話だ。
ブルーアイランドは観光地だから、そういう事件が起きないように、厳しい取り締まりがされていると思ったのだけど。
「治安が悪化しているんですか?」
「はい。それも、急激に……」
「急激に? どういう意味ですか?」
「そのままの意味です。この一週間で、事件が十倍に増加しました」
「十倍!?」
例えば、隣国が崩壊したとする。
その場合、難民や元騎士などが一気に押し寄せてきて、治安が悪化してしまうことがある。
でも、それでも十倍はありえない。
多く見ても三倍くらいだ。
「どういうことなんですか?」
「わかりません……本当に前触れもなく、いきなり犯罪件数が増えているんです」
「そんなこと……」
ありえるのだろうか?
でも、実際に起きている。
だから、ファーナさんも困惑して、慌てているのだろう。
「今、ギルドは対応に追われていまして……ちらっ」
手伝ってくれませんか?
そんな感じで、ファーナさんがこちらを見た。
ちょっとあざとい。
「う、うーん……」
こんな事件が起きているのなら、協力したいと思う。
ただ、ファーナさんが求めているのは、ソフィアの力だろう。
僕が協力をすれば、ソフィアもセットになると思っているはず。
でも……
そんな状況でアイシャを一人にするわけにはいかない。
安全を考えるなら、ソフィアに一緒にいてもらうのが一番だ。
そうなると彼女は動けないわけで……
「ちょっと、戻って相談してみますね」
今は、そう返すのが精一杯だった。